秘密の副業(仮)

状態
完結
文字数
23,311
投稿数
43
他の形式
Plain Text
RDF
455恋愛小説家#CVT26461
「おつかれさまー。」
「ねー、今日これから飲み会があるのよ、あなた来ない?」
金曜日の5時過ぎ、ロッカールームでにぎやかな声がする。
「あの・・・ごめんなさい、わたし・・・」
「あ、いいよ、いいよの(笑)、無理しなくってもー・・・(大笑)」
「すみません・・・」
「ねーどうして、あの子なんかに声かけるのよー?(笑)」
「うちの部署の男は誰もあの子なんてあいてにしないよ(笑)」
「うちの部署にはおじさんと、冴えない子しかいないけどね(笑)」
「一応、社交辞令よ。数合わせ。(笑)」
ふふふふふ・・・笑いがこぼれる・・・
そんな声が聞こえても美幸は気にせず・・・
「お先に失礼します・・・」
うつむいてロッカールームから出て行く・・・

「私だって・・・でも、明日もアルバイトあるし・・・」
独り言を言いながら会社を出て行く・・・しかし暗い顔をしているわけではない。
457恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
女の名前は松浦アヤ子。高校を卒業し、今の会社に入社して3年目の21歳。今は彼氏も居ないようだ。
会社内での評価は可もなく、不可もなく言われたことをそつなくこなしている。
ぱっと見た目はすらっとした長身ではあるが、化粧もほとんどしていないし、眼鏡と色気のない服装の所為で会社内の脂ぎった中年男性にも、同年代の男性にも構ってもらえず、一人だけ仲のよい友達がいる以外他の女性ともあまり親しくはしていないようだ。
・・・
「あー、松浦さん?(笑)眼鏡をはずしてさ・・・スタイルはいいんだけどねー(笑)ちょっと化粧してさー、それなりの服装だったらな・・・」
「もうすこし、笑ってくれるといい子なんだけどな・・・」
そんな話をよく耳にしたが、アヤ子は、私は私とでも言いたいのか、自分のスタイルを変えることはなかった。同期入社で別の部署にいる、唯一仲の良い美貴子に同じことを言われても、うん とか そうね とかそういう返事しかしなかった・・・
458恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
アヤ子は会社に内緒でアルバイトをしている。会社どころか、今唯一の友達の美貴子にも内緒にしている。
「そうだよ!明日も正義のための戦わなくっちゃ・・・(笑)」
アヤ子のアルバイトは、週末・祝日にデパートの屋上などで時々見ることがある、キャラクターショーに出ているのだ。そう、いわゆる着ぐるみの中身だ(笑)
アヤ子のすらっとした体躯は、元々中学・高校時代途中までバレーボールの選手だったからである、当然運動神経はいいほうであるが、それすら今の会社では隠しているようだった
「明日私はピンクサファイヤだもん・・・ちびっこ憧れのヒロインだから・・・がんばらなくっちゃ。」
アヤ子がこのアルバイトを辞めなかったのは子供が好きだというのもあるが、皆からちやほやされるのがたまらなく好きだったからだ。普通に考えれば、美貴子が言うように女っぽくすればもっと簡単にちやほやされるかもしれないけれど。
459恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
パシャ、パシャ・・・
(あと少しで今日も終わりだ・・・)
アヤ子こと、ピンクサファイヤを含むヒーロー達はショーの後のお楽しみである写真撮影会をこなしていた。
(あ・・・また大きなお友達がいる(笑)あの、大きなお友達にもサービスしないとね・・・(笑))
アヤ子が気になった大きなお友達=大人 に向かってポーズをする。その方を向きながら手も振ってみた。
(ふふふふふ)
(カメラが邪魔して顔がよく見えないけど・・・結構かっこいい人かもしれない・・・)
行列が短くなる・・・先ほどアヤ子が気にしていた大きなお友達はまだその場を去らない。むしろ徐々に近づいているようだった。
子供達と握手をしながら、写真を撮りながら時が過ぎるのを待った。
もうその列が終わりになるころ、先ほど気になっていた大きなお友達がアヤ子の前に立っていた。
460恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
『わ・・・』
アヤ子は不意に声を上げてしまった。
「ふふふ。」
大きなお友達は含み笑いをしながら、右手を出した。
『あ・・・』
「声を出しちゃだめだろ?(笑)」
アヤ子は男にそうたしなめられ、手で頭を掻くポーズをしたあと、照れながら両手で握手をした。
その大きなお友達の手を強く握り・・・顔を見た・・・。
(大きなお友達っぽくないなー・・・かっこいいし^_^;・・・こういうカッコいい人が私の彼氏だったらな・・・)
その大きなお友達が手を離そうとしても、アヤ子は手を握ったままだった・・・
『あ・・・』
「あはははは」
『・・・』
「気をつけないとね(笑)」
そう言いながら手を解くと、アヤ子の肩をポンポンと2度叩いて、その大きなお友達は満足そうにステージから遠ざかって行った。
その後も残った子供達とその保護者と写真を撮り、握手をして時間は過ぎていった・・・
461恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
週末が過ぎるとアヤ子はまた冴えないOLになっていた。
この間の大きなお友達・・・気になるな・・・そんなことを思いながら過ごしていた。
木曜日の昼休み・・・アヤ子は仲のいい美貴子に呼び出された・・・。
「ね、アヤ子。明日合コンあるのよ、行かない?合コンって言っても2対2なんだけどね(笑)」
「え・・・」
「行かないの?!行こうよ!たまには私にも付き合いなよー!」
「う・・・うん・・ ^_^;」
「じゃあ決まりね!明日私があんたをいい女にしてあげるから!それなりの服着てきなさいよ!」
金曜日・・・定時間後のトイレ・・・
「はい、眼鏡はずして!」
「え・・」
「もー!コンタクト持ってるでしょ?!私知ってるんだよ・・・そのほうが色っぽくなるんだから・・・ね、信じて私に任せなよ・・・」
アヤ子は美貴子に言われるままにメイクされた・・・
(え?・・・これが私?)
「やりすぎちゃったかな?(笑)」
「・・・」
「あのさ・・・私より綺麗になっちゃうのっておかしくない?(笑)」
「美貴子・・これ私なの?」
「もー、あんただよー!(笑)アヤ子!(笑)ア・ヤ・コ!(笑)」
「・・・・」
「自信持ちなよ!もー(笑)今日もところは、悔しいけれど私はあんたに負けちゃったかもねー。(笑)」
「そ、そんな・・・^_^;」
「いいのよ、アヤ子がいい女っていうのを知らない馬鹿がこの会社には多いのよ!でも!言っておくよ!今日あんたに彼氏ができたら私のおかげなんだからね!わかった!?わかるわよね!!(大笑)」
美貴子に手を引かれて会社を出た二人は駅前の居酒屋に向かった。
「あんたは普通にしていればいいんだからね・・・」
こくっ とうなずくしかないアヤ子。
「なによー、今からそんなにしおらしくしちゃって(笑)今日うちの会社の人間は居ないわよ、あんたは普通にしてればいいのよ、普通に、ね!・・・(笑)」
462恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
「あの・・・」
店員にいろいろ告げる美貴子・・・そつなく店員はこちらですと美貴子とアヤ子を招く・・・
「いよいよよ、あんた合コン始めてだっけ?(笑)もーもっと楽しまないとー(笑)」
美貴子にウインクされてもアヤ子はどうしていいのかわからなかった
・・・・・・・・
「遅れてごめんなさーい。」
アヤ子は美貴子が努めて明るく言っているのが分かった。
「あ、おー!美貴子!!久しぶりだな!」
「・・・・」
部屋にいた2人の男のうち一人が声を上げた。もう一人は黙ったまま頭を下げた。
「康介、久しぶりね!」
「・・・・」
「あ、こっちは私の友達のアヤ子。いい子でしょ?あ、康介!私よりいいって思ったでしょ?」
「ん?あー、そうだなー・・・うむ!美貴子よりいい女だな!・・・な、敦也!わはははは!」
席が和む・・・、美貴子を知る男とその友達をアヤ子が知るわけもなく、ただ頷き、美貴子の隣に座るしかなかった・・・
アヤ子は恥ずかしいと思いながら顔を上げると・・・そこには先週末にピンクサファイアのマスク越しに見た顔があった・・・
「あ・・あの・・・・」
「は、はい?・・・」
「い、いえ・・・別に・・・」

陽気にはしゃぐ美貴子と康介と呼ばれる男は酔いつつ昔話に華を咲かせているようだった。
アヤ子と、その敦也と呼ばれている連れの男とほとんど話す事もなくお互いの顔を時々見合うくらいだった・・
463恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
「あーん???・・・なんだなんだ?お前らはお見合いでもやってるのか?(笑)」
「そうよー何してんのよー、アヤ子ー(笑)」
「そうだそうだ!敦也!わはははははは!」
すでに出来上がってる美貴子と康介の波状攻撃にアヤ子も敦也も何も言えなかった。
「敦也さんていうんだ・・・」
小さく声を出すと、すぐさま敦也も・・
「そうです。」
といって微笑んだ。
(先週握手したんだよ!なんて言えないよね ^_^;・・・)
そういいながら俯いてしまった。
その後も自分達の話で盛り上がっている美貴子と康介も、アヤ子と敦也に気がつき・・・
「おーおーおーおー!」
「アヤ子!ねー彼のこと気に入った?(笑)いいじゃない!いいの!それでいいのよ!(笑)」
「・・・・・」
「おー、わりぃ。わりぃ(笑)俺らが邪魔なんだよな!結構結構!わはははは!じゃあ出るか!」
464恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
そう言いながら康介は勝手に店の支払いを済ませ、外に出た。
「いいのよ(笑)この男にはこうさせておけばいいの(笑)」
アヤ子の耳元で美貴子がそう言った。
「後は、ね。うふ、あんたが上手くやればいいの(笑)」
「・・・」
「じゃあ、えーっと敦也さんでしたっけ?アヤ子をよろしくね!(笑)」
「おー!敦也!お前は幸せ者だな、そんないい女が出来てな!!わははははは!」
そういいながら、美貴子と康介は手を組んで行ってしまった・・・。

敦也とアヤ子はどうするか決めることができず、その場に立ち尽くしていた。
「あの・・・アヤ子さん・・・もしよかったら・・・また会えますか?」
どの位お互いを見つめていたか忘れてしまっていた頃敦也はそう切り出した。
「は・・はい。」
アヤ子にはそう言うしかできなかった。
「あ、あのさ・・・こ、これ、俺の携帯の番号と、メールアドレス。アヤ子さんのも教えてよ。」
敦也は酒に酔ったのとは違う、真っ赤な顔をしながら小さくそう言った。
アヤ子はうなずきながら電話番号とメールアドレスを教えて、その日は分かれた。
465恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
退屈な平日のOL生活を終え・・・
土曜日早朝・・・スポーツバックに大きめのタオルとTシャツ2枚とスパッツと、肌色の布の塊2つを入れ、アヤ子は家を出て行った。髪の毛をまとめており、ぱっと見た目には確かにこれからスポーツをしに行くような、上下ジャージのラフな格好だった。もちろん、化粧などしていない。いつものアヤ子と違うのは眼鏡をしていない事くらいだろうか・・・アヤ子は普段は電車とバスで会社に通っているのだが、今日はアヤ子の愛車の軽自動車に乗って出かけるようだ。
アヤ子が出かけるのはバレーボールをする体育館ではなく、例のアルバイトであった。アヤ子は家族にも内緒にしているようだ。別に内緒にする意味はないのだが、なかなか言い出せないでいたのでそのままにしているようだ。
「さてと・・・事務所によって、ブツを取っていかないとね」
土曜日の早朝で道の混雑はなかった。自宅から車で30分ほどで目指す事務所に到着した。
アヤ子は車を路肩に止めて、雑居ビルの中に入っていった。
SITARABA ACTION TEAM と書かれたドアを開ける。すでに、男女数名が事務所いた。時折笑い声が混じっているが、慌ただしく何かの準備をしているようだった。
「おはようございます。」
「うーっす」
「あ、おはよー。」
アヤ子は事務所内の人に挨拶をし、その中の責任者らしき男に声をかけた。
466恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
「おはようございます。」
「あ、アヤ子ちゃんおはよう。今日のアヤ子ちゃんは・・・○○町のスーパーだったね、一人だけど大丈夫かな?(笑)」
「はい。」
「そうだよね、もうアヤ子ちゃんもベテランだし(笑)それに、ショーじゃないからなー(笑)」
「えー、アヤ子さんグリだけなんですか?いいなー、結構早く撤収できるんじゃないんですかー?」
「ずりー!アヤ子はそれで今週練習に来なかったんだな!(笑)」
「そんな、グリだけじゃないよ・・・ひとりだし・・・ 明日も一人だし・・・^_^;」
「いーなー、ねー(笑)」
「はい、これ。」
「はい。」
アヤ子は責任者の男から、キューティーローズと書かれた麻の大きな袋を渡された。
「もう、古いブツで申し訳ないけど、キューティーローズは人気があるから我慢してよ・・・^_^;」
「いえ・・・」
「一応、タイツも入れてあるけど・・・」
「マイタイツ持って来ました。でも2日やらないといけないから、お借りするかもしれません。」
「OK」
「じゃあそろそろ行きます。」
「クライアントには今出たって電話しておくよ、向こうについたら、担当の○田さんに話して。あ、後今日はここに戻らなくてもいいよ。ブツ持って帰って家で管理してね。明日は直行でいいから(笑)」
「はい。」
「じゃあ、明日ね。」
「はい・・・ちょっと早いかもしれないですけど・・・行ってきます。」
「行ってらっしゃい、頑張ってくださいね。」
467恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
「そんなにあわてたってバイト代変わらないぞ!!(大笑)」
仲間とそんなことを言い合いながら事務所をでた。アヤ子はいつも仲間とのショーが多いのだが、今日・明日は一人で仕事をこなさねばならなかった。本当は時間もあったので、仲間ともっと話をしていたかったのだが、いつもより早めに事務所を出た。
「よし。」
アヤ子は渡された麻の大きな袋を助手席に載せ、愛車に乗り込んで○○町のスーパーを目指して出かけた。
スーパー□□□には、思った以上に早く着いてしまい、アヤ子は駐車場の隅に車を止め、時間を潰した。□□□はスーパーといっても、2階建ての作りで、ちょっとしたデパートのような感じである。ほどなくして従業員が出勤してきた。アヤ子は時間を見ながら出て行くのを計っているようだった。
「よし、いこっか!」
一人つぶやいた後、アヤ子は麻の袋とスポーツバックを持って車をでた。

アヤ子は社員が入っていく通用口に入って行き、受付で用件を伝えた。
「あの・・・SATから来た、松浦です。○田さんはお見えになられますか?」
「あ・・・少々お待ちください。」
アヤ子は電話での連絡の間、所在なさげに立って待っているしかなかった。
「今、こちらに来ますので、少々お待ちください。」
「はい。」
「おはようございます、ずいぶん早いですね(笑)」
「道がすいてたんで・・・^_^;」
「今日、明日とお世話になります、○田です、よろしくお願いします。」
「あ、SATの松浦です、よろしくお願いします。」
○田は、30代前半の普通のサラリーマンだった。
468恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
アヤ子は○田のことはなんとも思っていないようだ。○田も事務的に処理しているようだった。
「じゃあ、ここでは何なんで、控え室に行きましょう。(笑)」
「はい。」
2人は通路を通り、会議室と書かれた部屋に入った。
「今日・明日とここを使ってください。」
「はい。」
「あ、もう少ししたら今日あなたに付く女性社員を呼んできますので、打ち合わせはその時にしましょう。それまで、休んでいてください。」
「ありがとうございます。」
「あ、それがキューティーローズの衣装なんですね?(笑)仕事が終わったら一緒に写真撮ってくださいよ、うちの娘がファンなんですよ(笑)」
「は、はい? ^_^;」
「じゃあ、私はこれで・・・」
そういうと○田は会議室を出て行った。
「ふー。」
アヤ子は荷物を机の上において、椅子に座ってため息をついた。
「今日もがんばらないと!うん(笑)」
469恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
「さってと・・・準備しようかな・・・」
アヤ子はテーブルの上に麻袋から衣装類を取り出した。
「お面と、衣装、タイツは・・・やっぱり自分のを着ようかな・・・ ^_^;・・・後は、手袋とチョーカーと、ブーツと、リボン・・・忘れ物なしっと。」
荷物の確認を終えたアヤ子は、会議室の隅で軽く体をほぐしていた。
それから、数分経った時誰かが会議室をノックした。
「はい。」
「失礼します。はじめまして、私今日・明日とキューティーローズの担当させて頂く浜崎といいます。」
「あ、SATの松浦です、よろしくお願いします。」
アヤ子は体操を止め、浜崎と名乗る女性と挨拶をした。浜崎はアヤ子と同じくらいの年齢に見えた。
浜崎は、テーブルに広げてあるキューティーローズの衣装類に興味があるようであったが、事務的に話を進めた。
「あの・・・松浦さん?でしたっけ・・・^_^; あの今日のスケジュールなんですが・・・」
「はい。あ、言いにくければアヤ子でいいですよ ^_^;・・・あの、○田さんは?」
「あ、○田は私の上司ですが、他にも担当を持っていますから・・・今はちょっと・・・」
「・・・ ^_^;」
「あの、開店早々で申し訳ないのですが、10時から15分ほど店の入り口で、お客様と接して頂きます。その後、11時から店内のイベントスペースで、写真撮影会となります。30分を予定しております。その後は13時30分、15時と残り2回の社員撮影会を行います。」
「はぁ・・・」
470恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
「それで、本日は終了です。今日は写真撮影会だけですが、明日はゲーム大会を行う予定です。明日は、別の事務所から司会と音響関係の方2名が合流します。基本的にはこんな感じですが、何か質問はありますか?」
「・・・今日・明日ともここを使わせていただいていくということでよろしいですか?」
「はい。」
「ほかには?」
「今日は・・・浜崎さんがすべて仕切るんですか?」
「仕切るって(笑)まぁ私がするのは、あなたを会場まで導くのと、お客さんの処理ですか?(笑)基本的には○田が仕切ります(笑)」
浜崎は事務的にそういった後はじめて笑った。
「あと、30分ほどで、開店ですが・・・そろそろ準備よろしいですか?」
「あ、はい・・・」
「もしお手伝いすることがあれば言ってください。一人で着替えることは出来るんですか?」
「できますけど・・・」
「あ、私が居たら着替えにくいですよね(笑)」
「・・・」
「じゃあ、外で待っています。」
「着替えにくくはないですけど・・・そうですね、このタイツ着るまで外で待っていただけますか?着替え終わったらお呼びします。」
「わかりました。私結構興味あるんですよ、どうやって着るのかとか(笑)」
そういうと、浜崎は会議室の外に出て行った。
471恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
「じゃあ・・・」
アヤ子はそうつぶやいた後、着ていたジャージ上下を脱ぎ、スパッツとノースリーブのTシャツに着替えた。
アヤ子は自分のスポーツバックから肌色の布の塊を2つ出した。先ほど事務所から渡された麻袋にもタイツが入っていたが、アヤ子は自分専用のタイツを持ってきていたのだった。
そのきちんと畳まれた布の塊の一つを手に取り、広げるようにして、右足・左足の順で足を入れた。下半身というか、足の部分のタイツであった。
キューティーローズというキャラクターは可愛らしい女の子がモデルのヒロインであり、セーラー服のような衣装とブーツ・手袋以外は素肌が出ている設定のため、このようなタイツを付けることになっているのだ。
モンぺというか、ジャージというかそのタイツをはき終えた美幸はもう一つの塊を広げ、着ようとしていた。そのもう一つのタイツは、長袖のレオタードに頭をすっぽり覆うフードがついているといった形をしていた。背中のファスナーをあけ、やはり右足・左足と足を入れ、体にタイツを這わせ、右手・左手を入れた。
お尻の上にあるファスナーを背中の辺りまであげてからアヤ子は外に居る浜崎を呼んだ。
ガチャ・・・
「あ、あの・・・」
アヤ子は会議室から顔だけだし、浜崎を呼んだ。
「あ、はいはい。」
小走りで浜崎は会議室に入り鍵を掛けた。
「わ!なんか裸みたいですね(笑)」
472恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
「・・・^_^;」
アヤ子は照れ笑いをするしかなかった
「へー、ワンピースではないのですね・・・」
浜崎は着ぐるみの構造?に興味があるようで、タイツ姿のアヤ子をじろじろ見ている。
「あ、あんまりじろじろ見ないでください・・・^_^;」
「すみません・・・私着ぐるみさんの着替えを見るのって初めてなもので・・・^_^;」
「あの・・・後ろのファスナー上げて頂けますか?」
アヤ子は髪の毛を押さえながらフードの部分に顔を入れながらそう言った。
「上まで閉めちゃってもいいですか?閉めますよ・・・」
チーーーーーーーーーーー
「このタイツだけだとなんだかおかしいですね、モジモジ君みたい(笑)結構生地厚いですね。やっぱり熱くなるのかな?」
「恥ずかしいですよ・・・こんな姿絶対に見せたくないんですけど・・・もうお面被っちゃおうかしら ^_^; 熱くなりますよ・・・慣れてますけど ^_^;」
アヤ子は手首と顔以外は全身肌色のタイツに包まれていた。浜崎が言うようにまさに、肌色のモジモジ君状態である。恥ずかしいからか、急いで衣装を取り出し付け出した。衣装は背中にファスナーが付いているレオタードに丈の短いスカートが付いていて首周りにはセーラー服と同じような大きな襟が付いている。その襟のホックを外し、ファスナーを下ろし、足を順番に入れ、両手を同じように順番にいれた。ファスナーを閉めようとした時、浜崎が声を掛けてきた。
「あ、
私閉めますよ ^_^;」
473恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
「すみません・・・あの、ファスナーの上に小さな爪が付いていますよね・・・それもお願いします。」
「はーい、何でこんなのが付いているのですか?」
「うーん・・・^_^; 私もよく分からないけれど、ファスナーが開いてしまうのを防ぐ為なのかな?あ、それからそこの大きなリボンを腰の所のホックに付けてください。」
パチン、パチン。浜崎はアヤ子に言われた通りリボンを付けた。
「後は、ブーツと手袋とお面で完成ですね(笑)あの・・・手袋を付けてみてもいいですか・・・?」
アヤ子がブーツを履こうとしている時浜崎がそう質問してきた。
「あ・・・いいですよ(笑)」
「やったー!」
アヤ子は椅子に腰を掛け、ブーツを片足ずつ履いている時、浜崎は手袋を付け喜んでいた。
「へー、このブーツって中が上履きみたいになっているんですね。」
「そうなんですよ。こうやって、中を出した状態で履かないとかかとがつぶれちゃうんです。」
ブーツを履き終えたアヤ子はチョーカーを手に取り首に巻いた。あとは、お面と手袋だけだ。
「お面被りたいな・・・」
「ごめんなさい、お面はちょっと・・・^_^;」
「やっぱりダメですよね・・・へーここから外を見ているんだ・・・」
浜崎は手にとってじっくり見たいようだったが、そこまではしなかった。顔をお面に近づけ見ている。
「お面結構きついですよ・・・お化粧とか付いてしまうかもしれないし・・・臭いますよ(笑)後でよければ・・・考えておきますね(笑)」
「本当ですか?やったー(笑)あの・・・持ってみてもいいですか?」
「はい(笑)」
474恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
「へー、中はこんな風になっているんだ・・・やっぱり・・・少し臭いですね ^_^;」
アヤ子は苦笑いをしながら、バッグから綿の手袋を取り出した。
「じゃあ・・・お面をかしてください。」
「もう、被ってしまうのですか?まだ10分くらいありますけど・・・それに、手袋が先じゃないのですか?」
「手袋は最後なんです。それに、今浜崎さんが付けてるし(笑)」
アヤ子にそういわれた浜崎は慌てて手袋を外した。
「あ、すみません、すぐとります ^_^;」
「手袋が一番後なのは、ここのあご紐がマジックテープで出来てるんです。手袋したままではマジックテープで手袋の指先とかが痛んでしまうんです。だから最後なんですよ。」
「へー。」
バリバリ・・・アヤ子はマジックテープのあご紐を外し、そのあご紐を両手で持つと、ささっとお面を被ってしまった。あご紐を締めてから浜崎にこう言った。
『あの・・・お面の中に髪の毛・・・後ろの毛が入り込んでいたら引っ張り出して直してください。』
「わー、やっぱり声ってこもるのですね(笑)はい、わかりました」
浜崎はアヤ子の背後に回り、髪の毛をチェックした。
「けっこう入り込んでいますねこれじゃあいけないですよね(笑)引っ張っても大丈夫ですか?」
『大丈夫ですよ、お願いします』
浜崎が後ろ髪を直している間、アヤ子は綿の手袋をつけ、タイツの袖の先についているゴムを中指にいれていた。
475恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
「はい、直しました。あれ?手袋の上に手袋するのですか?」
(浜崎さんはいろいろ質問するんだなー ^_^;)
『ええ、あの手袋を直にしてもいいですけど・・・この手袋ってあんまり洗えないんですよ。汗も結構かきますしね・・・。』
「いろいろ大変ですね。」
アヤ子は衣装の手袋を右手・左手の順でつけた。キューティーローズの完成だ。
『完成です。ありがとうございました。あの・・・もうこの姿になったらっていうか・・・あの・・・基本的にお話しませんというか・・・出来ませんので・・・よろしくお願いします。』
アヤ子はそういって、頭を下げた。
「そっかー、着ぐるみさんは喋ってはいけないのですよね、了解です。」
『・・・』
アヤ子は黙って、うんうん とうなずいて見せた。
「あの・・・ポーズしてください(笑)」
アヤ子は頷いて、キューティーローズの決めのポーズをしてみせた。
「かっこいー!すごいすごい!本物だー!」
『・・・』
アヤ子は恥ずかしいなという感じで首を傾げて頭をポリポリとかく仕草をした。
「いやーんかわいいー。あの、あ、握手してください(笑)」
浜崎はそういうと、自分からアヤ子の右手を取りぎゅっと握った。美幸は少し膝を曲げて、そっと左手をそえて浜崎の手を軽く握り返した。
476恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
アヤ子は少し膝を曲げて、そっと左手をそえて浜崎の手を軽く握り返した。
477恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
「わー、かわいいー(笑)凄いですね、えっと・・・松浦さんはもうキューティーローズになりきってるんですね。尊敬しちゃうー(笑)」
そんなことをしていたら時間は開店5分前になろうとしていた。
コンコン、ガチャガチャ・・・会議室のドアがノックされ、ドアを開けるようとする音が聞こえた。
「あ、主任だ・・・今行きます ^_^;」
浜崎はドアのところに行き鍵を開けた。
「すみません、松浦さんが着替え中だったもので、鍵を掛けていました。」
「そう。もう準備はできているのかな?」
そう言いながら○田が会議室に入ってきた。
『・・・』
アヤ子はかわいらしく こんにちは と挨拶する仕草をしてみせた。○田は おっ という顔をした。
「なんで喋らないのかな?」
「松浦さんはもうキューティーローズになりきっているのですよ、主任!(笑)」
「そうか・・・それは失礼しました。あの・・・握手してください ^_^;」
「主任もキューティーローズが好きなんですか?私もさっき握手してもらいました(笑)」
「娘がファンなんだよ・・・後で一緒に写真も撮りたいな(笑)」
アヤ子は頭をポリポリかく仕草をしたあと、先ほどの浜崎と同じように○田とも握手をした。
「なんだか、照れますね ^_^; もう浜崎君からスケジュール等聞いていると思いますが、2日間よろしくお願いします。じゃあそろそろ、時間なので入り口までお願いします。」
「そうですね。じゃあ松浦さんじゃなくて、キューティーローズ ^_^;行きましょうか(笑)」
アヤ子は元気よく2度頷き、○田、浜崎と会議室を出て行った。
485恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
浜崎と○田の後について通路を大きく手を振りながらスキップするアヤ子ローズ。
すれ違う社員が あ という顔をしていた。その度に手を振ったり、立ち止まって握手したりした。

ア『うふふふふ』

アヤ子はすれ違う社員のリアクションが楽しいのか、そのたび毎にお面の中で笑っていた。

○「じゃあ大体15分位ここ辺りでお客様と・・・私は別件がありますので、また11時の写真撮影会のときに・・・浜崎君頼みます。」

入り口の自動ドアの前で○田は浜崎とアヤ子にそう伝えた。

浜「わかりました、よろしくお願いします。」

アヤ子はだまって頷き、○田と浜崎と握手をした。
入り口では、何人かのお客様・・・子供たちがキューティーローズを指差していた。
アヤ子は可愛らしくその人たちに向かって手を振った。
10時・・・開店と同時にお客様が入ってきた。

子「わーキューティーローズだー。」

小さな女の子がキューティーローズをめがけて走ってきた。
アヤ子は膝を付き、両手を広げ女の子が走ってくるのを待ち、優しく両手で女の子をだきしめた。

子「ママ早く早く、キューティーローズだよー。本物のキューティーローズだよー。」

女の子はうれしそうな顔でアヤ子ローズに抱きついたまま母親を呼んだ。

浜(この女の子に独占されちゃったらちょっとマズイかな?)

浜崎はそう考え、女の子とその母親に後で撮影会があるからね・・・と伝えた。
486恋愛小説家 ◆ttKSm1z6
母「すみません、さー亮子ちゃん行きましょう。後で写真撮影があるんだって。あとでキューティーローズと写真とろうね。」
子「やったー。」

母親は頭を下げ、女の子を連れて店の中に入っていった。
アヤ子ローズは両手をいっぱいに伸ばしてその女の子に向かってバイバイと手を振った。
アヤ子ローズはその後も小さな子供を中心に、握手したり、頭を撫でたりした。
小さな子供と接する時は、膝をついて、子供の目線で接していた。そのうち15分経った。

浜「今日11時と15時から2階の催事場でキューティーローズとの写真撮影会があります、ぜひそちらにも足をお運びください・・・」

浜崎はそういうと、アヤ子ローズに向かって左手を出し、腕時計を見せた。
アヤ子は頷き、立ち上がった。

浜「さぁ、戻りましょう・・・・またあとでねー。」

浜崎はそういった後歩き出した。アヤ子も浜崎の後を追う。控え室である会議室に行くには店内を通らなくてはいけないので、途中何度も立ち止まり、子供達と握手した。店内から事務所につながるドアの前でアヤ子ローズは振り向き、誰に向かってというわけではないが、大きく手を振った。その後走りながら浜崎の後を追い控え室に戻った。

浜「お疲れ様でした・・・暑くないですか?」

アヤ子は浜崎の問いかけに 大丈夫 と手で合図をし、手袋を取りにかかった。
外の手袋、内の手袋をとった後なれた手つきでお面をとった。

ア「ふー(笑)」

ほんの15分だけだったが、アヤ子の額には汗がうっすらと浮かんでいた。
アヤ子はタイツの丸く顔だけ出ている部分をぐっと頭の後ろにもって行き、頭全体をタイツからだし、バッグからタオルを取出し汗を拭いた。

ア「ショーの時みたいに動いてないからそれほど暑くはないですよ。それにたった15分だし(笑)・・・ただ・・・このお面って結構息がこもるのよね(笑)」
487恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
浜 「次まで時間がありますが、衣装は脱ぐのですか?」
ア 「次は11時ですよね・・・30分くらいしか時間がないだろうからこのままでいいですよ(笑)」
浜 「ショーの時なんかも着たまま休憩したりするのですか?」
ア 「そんなことないですよ・・・衣装もブーツも脱ぎますよ。ショーの時は間が長いですからね。でも・・・こういうタイツを着るタイプの場合はタイツだけ着たままの方が多いかな?」
浜 「これまで、どんなのやってきたのですか?」
ア 「戦隊とかわかりますか?あのピンクとかがが多いですね。後は・・・ヒーローマンレディとか・・・怪獣もやったことあります。」
浜 「えー怪獣ですか?!女の人が怪獣?!」
ア 「その時人手不足で・・・私体が大きいほうなので・・・無理やり ^_^;」
浜 「怪獣ってどうなのですか?」
ア (浜崎さんって質問魔ね ^_^;)
ア 「そうですね・・・一番の印象は・・・臭い!(笑)重い!前が見えない!かな? ^_^;怪獣は悪者だから、子供たちに嫌われるし ^_^;もうやりたくないですね(笑)」
浜 「ショーって大変ですよね・・・飛んだりはねたり、怪我なんてしないのですか?」
ア 「前がよく見えなくて、転んだりしましたね・・・怪獣の時自分の尻尾を踏んでしまって倒れたてしまいました。だから足とかあざだらけだった時もあるんですよ(笑)」
浜 「へー。」
ア 「衣装が変に見えたらいけないのでサポーターとか出来ないんですよ。だから・・・古いストッキングを膝とか肘に巻いたりしました。気休めですけどね(笑)」
浜 「へーーー。このお仕事を始めたきっかけは何ですか?」
488恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
ア 「うーん・・・友達に誘われたからです。あんまりやる気なかったけど・・・やるうちに結構楽しくなって・・・後子供達と遊ぶのが好きだし(笑)実は私これはアルバイトなんですよ ^_^; 普段は普通の会社に通っています。会社にも内緒なんですよ(笑)」
浜 「えー!そうなのですか?それじゃあお休みないですね(笑)」
ア 「止めないでくれって言われています・・・^_^; あんまり女の人でこういうことやる人って少ないみたいなんです。」
浜 「えー?じゃあ男の人がキューティーローズとかやることもあるのかな?」
ア 「うちのチームではないですけど・・・あるみたいですね(笑)」
浜 「えー?!」
ア 「私も女だと思われたこと少ないですよ ^_^; 胸も小さいし・・・背も高いほうだから・・・」
浜 「そうなんだ・・・大変ですね。お面被るのってどういう気分なんですか?」
ア 「そうですねー・・・お面被ったら・・・もう自分じゃないですね。そのキャラクターになってしまいますね、衣装着てお面被ったらもう自分じゃないですよ(笑)子供さん達はヒーローに会いに来ている訳ですからね・・・なりきるしかないですよ。素を出してはいけないんですよ。昔慣れてない頃は恥ずかしくて上手く出来なかったですけど ^_^;」
浜 「じゃあ私なんか出来ないなー ^_^;」
ア 「正直な事を言えば、暑いのが嫌ですよね。管理状態の悪いのが回ってくると臭いし(笑)まーそんな事は言えないですけど(笑)」
浜 「こんな事言ったら失礼かな? ^_^; 今は普通の松浦さんですけど・・・いったんお面被ったらまったく違う人になっちゃいますよね、それが凄いなーって思いました。」
489恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
ア 「・・・^_^;」

アヤ子と浜崎は時間が来るまで話をして時間をつぶした。もっとも話というよりは浜崎が一方的に質問し、それにアヤ子が答えるという方が正しいのかもしれない。

ア (浜崎さんキューティーローズになりたいのかな?後で着せてあげようかな?)

会議室に掛けられた時計を確認し、アy子は立ち上がりながらこういった。

ア 「もうそろそろ準備しないと・・・時間ですよね(笑)」

アヤ子は先ほどまで被っていたタイツのフードを被り、お面を被った。

ア 『また、後ろ髪なおしてください、お願いします。』
浜 「はい・・・あ、今喋りましたねー(笑)だめですよ、キューティーローズ!(笑)」
ア 『気をつけます(笑)』

アヤ子は髪の毛を直してもらっている間に手袋をつけた。

浜 「はい、これで大丈夫ですよローズちゃん(笑)」

アヤ子は浜崎の方に振り返り、両手でスカートの端をつまみあげ、足を交差させて、かわいらしくお辞儀してみせた。
490恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
浜 「いやーん!今すこし、パンツ見えましたよ(笑)」

浜崎の言葉に両手で頬を押さえ、俯きながら顔を2・3度振って見せた。

浜 「かわいいですよ、松浦さん(笑)」

アヤ子は頬にやっていた手を離し、右手でグーをつくって浜崎を叩く素振りをした。

浜 「あー、ごめんなさい。キューティーローズ可愛いです ^_^;」

アヤ子はうんうんと満足そうに頷いて浜崎の手を取った。

浜 「でも、ほんとに凄いなー。」

それを聞いたアヤ子ローズはまた右手でグーを作り、口元ではーと息を吹きかけるポーズをした。

浜 「ごめんごめん(笑)」
アヤ子はお面の中で笑いをかみ殺しながら うんうん と頷いた。

ア (浜崎さんかわいい(笑))
浜 「じゃあ行きましょう。主任はもう向こうに行っているはずですよ。」

アヤ子は浜崎をからかうように目いっぱい可愛く頷いてみせた。
浜崎とキューティーローズことアヤ子は会議室を出た。写真撮影会は2階の催事場で行われるので、2人は商品を運ぶえエレベーターで2階にあがった。エレベーターからおりた2人は催事場に向かって歩き出した。店内に入るドアの前でアヤ子は浜崎の手を握った。浜崎はびっくりした。店内を歩いている時も2人は手をつないで並んで歩いた。催事場には既に何人かのお客様がキューティーローズが来るのを待っていた。アヤ子ローズと浜崎を見つけた子供が わー と歓声をあげた。
それを聞いたアヤ子ローズは浜崎の手を離し、会場まで走って行ってしまった。

浜 「もー、すごいなー、松浦さん・・・ ^_^;」

会場には○田が待機しており、首にはポラロイドのカメラを下げていた。カメラを持ってこなかったお客さんの為に用意したらしい。ちなみに・・・1枚500円ということだった。
浜崎はアヤ子ローズの後を追い小走りで○田のところにいった。
浜崎は○田の支持を受け、キューティーローズの隣でお客さんを整列させた。
アヤ子ローズは順番にお客様と写真を取っていった。思っていたほどお客様の集まりが悪く、時間がかなり余ってしまった。

浜 「まいったな・・・」

キューティーローズも時間を持て余しているようで、髪の毛をいじったりしていた。
491恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
浜 「お客さん少なかったですね・・・」
○ 「こまったな・・・ 」

○田と浜崎はこれからどうしようか決めかねているようだった。○田はキューティーローズに近づいていった。

○ 「まだ早いですが、切り上げましょうか?」
浜 『・・・いいですけど・・・それでは申し訳ないので・・・お店をぐるっと回ってもいいですか?』
○ 「じゃあお願いしようかな。では浜崎君に伝えてきます。お手数を掛けますがよろしくお願いします。」

○田は浜崎のもとに行き用件を伝えた。

浜 「大丈夫ですか?」
アヤ子ローズは 大丈夫だよ と右手でOKマークを作って頷く。

浜 「では、15分くらいお店の中を回って会議室に戻りましょう。」

アヤ子ローズは頷き、浜崎と手をつないで店内を回り始めた。所々で子供達や、店員たちと握手をしたり、アヤ子が気になった商品を手に取り眺めたり、誰が見ているわけでもないのに浜崎に これ買って! という仕草をしてみたりした。
その度に浜崎は恥ずかしがっているようだった。あっという間に2階を一回りした後、アヤ子はエレベーターに向かおうとする浜崎を止めた。下にも行こう とゼスチャーで合図した。

浜 「そっかー・・・じゃあ下に降りますか(笑)」
492恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
うれしそうに2度頷き2人はまた手をつないでエスカレーターで1階に降りた。食品売り場はそれなりの人で賑わっていた。浜崎は、混乱を避けるため、会議室に直行します とアヤ子に耳打ちしていた。アヤ子ローズはエスカレーターを降りたところで子供たちに取り囲まれた。
アヤ子ローズは一人一人と握手して対応した。

子 「おい!なんでしゃべらないんだよー!」

アヤ子ローズは小学生くらいの男の子達囲まれ、そういわれて困ったな・・・という仕草をしてみせた。

子 「このなかの人男の人かな?」
子 「広治君、スカートめっくちゃえよー(笑)」

男の子の中の一人がそういった瞬間、キューティーローズのスカートがめくられた。
アヤ子ローズはスカートを抑え恥ずかしいという仕草をした後、浜崎に抱きつき泣く素振りをした。
浜 「あ、こら!なにするのよ・・・キューティーローズ泣いちゃったじゃない!あやまりなさい。」

浜崎はその男の子たちをしかった。男の子たちは渋々 ごめんなさい と 頭を下げた。
その間、アヤ子ローズは浜崎にもたれかかり、肩を上下に動かながら泣く真似をしていた。

浜 「さぁ、もう泣かないで・・・行きましょう。」

浜崎はそういうとキューティーローズの手をとり歩き出した。
先ほどの男の子たちはキューティーローズ達の後を追うように付いてきている。
アヤ子ローズはその間も途中で立ち止まり、お客さんと握手をしていた。
さっきの男の子たちが後を着いてきているのはわかっていた。
事務所につながるドアの前でアヤ子ローズは立ち止まってその男の子達にむかって振り向き、キューティーローズの決めポーズをしてみせた。ドアの向こうに行く前に あっかんべー という仕草までしてみせた。
会議室に向かう通路でアヤ子ローズはこう浜崎にいった。

ア 『すみません、先ほど葉ありがとうございました。浜崎さんもアドリブうまいですね、MCできるかも(笑)』
浜 「あー、しゃべっちゃだめでしょー!(笑)」

アヤ子ローズは、しまった! という感じで両手で口に手を当てて、2回頭を下げた。

浜「うふふふ。かわいなー、キューティーローズ(笑)」
513恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
会議室に戻ったアヤ子ローズは先ほどと同じように手袋を取り、お面を脱いだ。

ア 「あの・・・背中のファスナーをお願いします、タイツの方もお願いします。」
浜 「はいはい。今度は次まで時間があるので全部脱ぐのですか?」

アヤ子は衣装を脱ぎ、ブーツも脱いだ。タオルで汗を拭う。
タイツは着たままだが、腕を出し袖の部分を腰に巻きつけた。
その上から朝着ていたジャージの上下を着た。

浜 「さっきは凄かったですね。私、松浦さんが本当に泣いているのかと思いました。」
ア 「ああいう男の子って多いんですよね。でもこれって本当のパンティーじゃないし・・・
怒って素を出してはいけないので・・・ああいう風にしたんです・・・
浜崎さんにも迷惑掛けちゃいましたね ^_^;」
浜 「迷惑だなんて・・・あ、お弁当持ってきますね(笑)」

浜崎はそういうと会議室を出て行った。しばらくして幕の内弁当とお茶をもって帰ってきた。

浜 「お弁当ここに置きます。えっと次は15時からですから・・・14時半頃に私戻ってきます。えっとお手洗いはここを出て左に行った突き当りです。私は松浦さんとここに居たいのですが、他の業務もありますので・・・それではまた後で。」

浜崎はそういうと会議室を出て行った。一人になったアヤ子はお弁当を食べ、時間まですることがないのでうとうと寝てしまった。アヤ子が目を覚ました時、壁の時計は2時になろうとしていた。
アヤ子はトイレに行き、店内に出た。1階・2階をグルッと回って会議室に戻った。
会議室には浜崎が待っていた。

浜 「どこに行っていたのですか?」
ア 「すみません、お店を一回りして来ました。お面被っていると周りがあまり見えないから・・・本当は朝一番に確認しなければいけないのだけどね(笑)」
浜 「そうですか。そろそろいいですか?」
514恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
アヤ子は頷き、ジャージを脱いだ。腰に巻いていたタイツの袖をほどき、手を入れた。
浜崎もすぐにアヤ子の背後に回りファスナーを上げた。
アヤ子はテキパキと衣装を着てブーツを履いた。
ふー と大きく息をついた後、うん と呟いてお面を手に取り被った。

浜 「あー、もう被っちゃうんだ(笑)」

浜崎はお面の中に入り込んだ髪の毛を直す。アヤ子はその間に手袋を付ける。先ほどの流れと同じであっという間に着替えてしまった。
浜 「まだ時間ありますよ・・・。」

アヤ子は大丈夫と胸をポンポンと叩いた。

浜 「じゃあ・・・あの・・・先ほどみたいに泣いてみてもらえませんか?」
ア (えー ^_^; 私はおもちゃじゃないの!)

アヤ子は少し考えていきなり床にペタンと座り込み、両目を両手で隠し、子供が泣くような格好をして、顔を横に振って見せた。時々、肩を上下に動かしている。

浜 「すごいすごい!・・・あの・・・今度は怒ってください(笑)」
ア (もー!)

アヤ子はすくっと立ち上がり、浜崎を指差し、腕を組んでプイと横を向いた。

浜 「わー怒ってる怒ってる(笑)」

アヤ子は手を大きく振りながら足をジタバタさせた。

浜 「さ、そろそろ時間です、行きましょう(笑)」

アヤ子は先ほどと同じ仕草をして、腕を組み顔をプイと横にした。
515恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
浜 「あ・・・あの遅れてしまうので・・・行きましょう ^_^;」

アヤ子ローズは浜崎のほうを向いたが、すぐにまた横を向いてしまった。
焦る浜崎の顔を見て、アヤ子は小さな声で笑った。
その直後、アヤ子ローズは浜崎のほうを向き、抱きついた。

浜 「いじめないでくださいよ ^_^; 本当に怒ってしまったと思ったじゃないですか (>_<)」

アヤ子ローズは、浜崎から離れ、指を差しながら、キューティーローズの 害虫なんてお仕置きよー という決めのポーズをした。
浜崎は ごめんなさい、と頭を下げた。
アヤ子ローズは浜崎の手をとり、頭をなでた。浜崎の手を引き早く行こうと促した。

浜 「もう、松浦さんの意地悪・・・(笑)」

アヤ子はまた浜崎を指差し、右手でグーを作り浜崎を叩く真似をした。

浜 「あっ、ごめんなさい。松浦さんじゃないです。キューティーローズです、ごめんなさい ^_^;」

アヤ子ローズは満足そうに頷き、また浜崎の腕を取った。
会議室を出てアヤ子ローズと浜崎がエレベーターの前に着くとそこには○田がいた。

浜 「ご苦労様です。今度はお客さんがいっぱいいるといいですね。」
○ 「そうだな・・・せっかく松浦さん頑張っているのにね。」

アヤ子ローズは頭をかいて恥ずかしがった。
3人はエレベーターに乗り2階に向かった。
エレベーターを降りた○田は美幸たちより早く会場に行くため、小走りでいった。
アヤ子ローズと浜崎は手をつなぎ大きく手を振りながら歩いて会場に向かった。
午後の撮影会は午前中よりも多くの人で沸いていた。
アヤ子ローズは よし! という感じでポーズをとって撮影会に望んだ。
午前中よりも盛り上がり、撮影会は予定の時間をオーバーしてしまった。
アヤ子にとって撮影会はそんなに苦痛ではなかったようで、もっとやってもいい位だと思っていたようだ。
516恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
そんなことを知らない○田と浜崎は美幸に対し、すみませんでした と何度も言った。
アヤ子ローズはその度に○田と浜崎に手で合図をした。
お客様に惜しまれながら撮影会を終え、3人は並んで会議室に戻った。
その途中エレベーターの中で○田が明日のことについて話し始めた。

○ 「明日は他のイベント事務所から2名来ます。一人は司会者で一人は音響関係の方です。ですからうちの浜崎は明日、松浦さんに付きません。」
アヤ子ローズは、浜崎の手をとり、なんで? と悲しがって見せた。

○ 「仕方ないですよ、明日はちょっと早めにこちらにこれますでしょうか?事前に打ち合わせをしたいですから。」

アヤ子は頷いた。

浜 「喋ってもいいですよ(笑)」

笑いながら3人は会議室に入った。会議室に入ってすぐアヤ子は手袋を外しにかかった。

○ 「あ・・・あの、写真撮らせてください、いいですか?  ^_^;」

アヤ子ローズは外しかけていた手袋を慌てて元に戻し、大きく頷いた。

○ 「あの決めのポーズしてください、害虫なんて・・・っていうやつ ^_^;」

アヤ子ローズは頷いてポーズをして見せた。
ポーズを決めているアヤ子ローズを○田は持っているポラロイドカメラで撮った。

○ 「じゃあ・・・あの・・・^_^; 2人でとってもいいですか?浜崎君頼むよ。」
浜 「はい、主任(・∀・)ニヤニヤ」

カメラを浜崎に渡し、アヤ子ローズの隣に立った。
アヤ子ローズは○田の腕を撮り手を組んだ。○田は顔を赤くして照れた。

浜 「はい、撮りますよ、チーズ(・∀・)ニヤニヤ」
517恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
○ 「もう一枚頼むよ ^_^;」

アヤ子ローズはギュッと○田の腕を自分の体に寄せた。
浜崎はニヤニヤしながらもう一度シャッターをおした。

○「あ、ありがとうございました ^_^;」

アヤ子ローズは○田の手を取り、両手で握手した。

浜 「主任ばっかり!いいなー!」
○ 「この中にまだフイルム入っているから自由にとってもいいよ・・・あ、君とキューティーローズの写真が撮れないか(笑)」

そう言うと、○田は2人を並ばせた。アヤ子ローズと浜崎は手を組んだ。美幸はブイサインを作った。○田がシャッターを押した。

○ 「はい、浜崎君(笑)じゃあ、私はこれで失礼します。松浦さん明日もよろしくお願いします。」

○田はアヤ子のほうを見てそう言った。アヤ子ローズは頭を下げて挨拶した。
○田は浜崎に撮ってもらった写真を大事そうにポケットにしまい会議室を出て行った。

浜 「あ・・・カメラ忘れている ^_^;」
ア 『あの・・・着替えてもいいですか? ^_^;』
浜 「あ、ごめんなさい。いいですよ、いいですよ。お疲れ様でした。」
ア 『ファスナーお願いします。タイツのほうも下ろしてください。』

アヤ子はそう言いながら手袋を外した。
アヤ子はお面を脱ぎ、衣装を脱いだ。ブーツも脱ぎタイツも脱いだ。
浜崎がいたが、汗をかいたTシャツを脱ぎ、持ってきた新しいTシャツに着替えた。

浜 「明日も松浦さんと一緒にお仕事したいです(笑)」
518恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
アヤ子は脱いだタイツを畳む手を止めた。

ア 「そうかー・・・浜崎さんは今日だけだったですよね・・・」
浜 「そうなんですよー ^_^;」
ア 「あのー・・・30分くらい時間ありますか?」
浜 「大丈夫ですけど?なにかあるのですか??」
ア 「あのー・・・キューティーローズになってみます?」
浜 「えー!いいのですかー!?なりたい、なりたいです!!やったー(笑)」
ア 「浜崎さんはキューティーローズの事好きみたいだし・・・よくしてもらったから(笑)」
アヤ子は麻の袋からタイツを取り出し、浜崎に渡しながらこう言った。

ア 「あの・・・まず、これを着てください。あ、これはさっきまで私が着ていたのではないので安心してください ^_^; その前に今来ている服を脱がなければいけないのですが・・・私外に出ていましょうか? ^_^;」
浜 「大丈夫ですよ!女同士じゃあないですか!松浦さんだってさっき、私の目の前で下着になったし(笑)」

浜崎はそう言うと、来ていた地味な色合いのスーツを脱ぎだした。
見ている美幸は、はっ と思い立ったように会議室のドアのところに行き鍵を掛けた。
浜崎はすでに下着姿になっていた。浜崎はタイツを手に取り、ファスナーを下ろしていた。
アヤ子の着ていた2ピースのタイツではなく、足から手までつながっているワンピースタイプのタイツだった。

浜 「これ松浦さんが着ていたタイツと違いますね。」
ア 「そうね、ワンピースですよね。」

浜崎はそのタイツに足を通した。
519恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
浜崎はアヤ子の着替えを見ているので同じようにタイツを着た。
アヤ子にファスナーを閉めてもらうと、キューティーローズの衣装に手をつけた。
衣装を着て、ブーツを履いた。その間、アヤ子はチョーカーを浜崎の首に巻いた。
アヤ子は衣装のファスナーをあげ、爪を止めた。
手袋なしで、お面のないキューティーローズの完成だった。

浜 「結構衣装きついですね ^_^; 私が太いのかな? ^_^;」
ア 「そんなことないですよ。私にもきついですよ(笑) 基本的に体にピッタリするタイプ衣装ですからね(笑)」
浜 「あの・・・この状態で写真撮ってもらえますか? ^_^;」
ア 「はい(笑)」

アヤ子は○田が忘れていったポラロイドカメラで美幸を撮った。浜崎は、はしゃいでいた。

浜「よし!いよいよお面だ!(笑)」
ア 「ごめんなさい、私の汗でちょっと湿っぽいかもしれないけど・・・」

浜崎はお面を手に取った。

浜 「気にしませんよ!よし!」
ア 「じゃあ、ここの顎紐をもって・・・そう(笑)・・・わからないかもしれないから・・・もう一回被ってみますね ^_^;」

アヤ子はそう言うとわざとゆっくりお面を被って見せた。

浜 「なんか変ですよ(笑)」
520恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
アヤ子はお面の中で浜崎に聞こえないように、微か笑った。
浜崎は先ほどアヤ子がやった要領でお面を頭から被ろうとしていた。

浜 「うーーーーーーーーーーーうーーーーん 私頭が大きいのかな ^_^;」

浜崎はアヤ子のように上手く被れない・・・。頭が上手く入らないようでうなっていた。

ア 「あご紐を思いっきり引っ張って(笑)」

ズボという音がして浜崎の頭がお面の中に入った。

浜 『わー、こういう感じなんだー。なんだかすごく声が反響してるー(笑)』
ア 「前見えますか?(笑)」

アヤ子は浜崎の後ろに回り髪の毛を直しながらこう言った。

浜 『見えますけれど・・・こんな少ししか見えないのですね。』

浜崎は指で少しというジェスチャーをしてみせた。

浜 『こんな状態でショーやるなんてすごいなー。』
ア 「浜崎さんだって慣れればできますよ(笑)」
浜 『そうかなー、私うまく歩けるかな?』
ア 「大丈夫ですよ。お面の中臭くないですか?(笑)」
浜 『少し臭いますね(笑)』
ア 「さ、手袋を付けて完成ですよ。^_^;」

浜崎は手袋を探していた。そんな浜崎を見たアヤ子は手袋を取って手に持たせた。
やはりうまく前が見えていないのか手袋を付けるのにとまどっていた。

ア 「はい、完成ですね。かわいいですよ、キューティーローズ(笑)」
浜 『やったー!すごいなー、私キューティーローズになっちゃった(笑)
あの・・・写真撮ってください。』

アヤ子は笑いながらポラロイドで浜崎ローズを撮った。
521恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
浜 『あの・・・ポーズどうやるのでしたっけ?教えてください(笑)』

アヤ子は浜崎の前で、手を振りながらポーズを教えた。
浜崎は美幸に言われたとおりポーズを付けてみた。

ア 「そうそう、上手ですよ。そのままそのまま(笑)」

アヤ子はポーズをつけた浜崎ローズを写真に撮った。

浜 『この部屋は鏡がなかったのよね・・・』

浜崎は残念そうにそう言った。

ア 「トイレには鏡がありましたよね、行って見ます?(笑)」
浜 『いいですか?どんな感じか見てみたいです(笑)』
ア 「でも、喋っちゃだめですよ(笑)」

浜崎ローズは口に手を当てて うんうん とうなずいた。

ア 「そうそうそれでいいんですよ、上手いじゃないですか(笑)さ、行きましょう。」
アヤ子が先にドアのほうに向かって歩き出した。うん とうなずいた浜崎は歩き出した。
視界が狭いから不安なのか浜崎は下を見ながら歩いていた。
ドアを開けたアヤ子は浜崎の手を取り、2人はトイレまで手を繋ぎながら歩いた。
トイレに入った浜崎は鏡の前で声を上げた。

浜 『わー、これが私なんだー、すっごーい 本物のキューティーローズだー(笑)』

浜崎は鏡の前で手を振ったり、顔を動かしたり、髪を整える仕草などをしてひとしきり遊んだ。

ア 「さ、戻りましょうか?」

浜崎ローズはアヤ子のほうを見てうなずいた。
トイレを出て会議室に戻る途中に○田とあった。
○田は美幸とキューティーローズが並んでいるので あれ? というような顔をしていた。
浜崎はかわいらしく顔を傾けながらお辞儀をした後こう言った。
522恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
浜 『うふふふふ、主任!私ですよ(笑)』
○ 「浜崎君か!結構似合うね(笑)
しかし・・・あんまり遊んでいないで早く仕事に戻りなさい(笑)」
ア 「すみません・・・私が・・・^_^;」

アヤ子は頭を下げた。浜崎は頭をかいている。

○ 「いやいや(笑)今日はもうお帰りですか?」
ア 「はい、この後帰ります。」
○ 「そうですか・・・じゃあキューティーローズはもう一度お店に出てもらおうかな(笑)」
浜 『えー!!』
○「冗談だよ(笑)では松浦さんまた明日よろしくお願いします。
浜崎君は早く仕事に戻るように(笑)」

そう言うと○田は歩いていった。

浜 『すぐ戻ります。』
ア 「ごめんなさい、主任さんに怒られちゃいましたね ^_^;」
浜 『大丈夫ですよ。でも早く戻らないと ^_^;』

会議室に戻った浜崎は手袋を取った。あご紐を外し、お面を取りにかかった。

浜 『うーーー』

お面を被る時よりも簡単だったが、浜崎は力を入れていたようだった。ポンとお面が頭から取れた。

浜 「ぷはー(笑)」
ア 「どうでしたか?(笑)」
浜 「やっぱり暑いですね、それに息苦しいかも(笑)自分の息で暑くなるのかしら?
黙っていると息をしている音がお面の中に反響していました。はーはーはーって(笑)」
523恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
アヤ子は浜崎の後ろに回り、衣装とタイツのファスナーを下げ、首に巻いてあったチョーカーを外した。

ア 「慣れないと大変かもしれないですね。でも、ヒーローマンなんてもっと見えないんですよ(笑)」

アヤ子は手袋を綺麗に畳み、チョーカーでくくるようにしてまとめた。

浜 「へー、そうなんですか?」
ア 「はい。それにヒーローマンはウエットスーツなんですよ。
これなんかと比べ物にないくらい熱くなるんですよ、汗なんてすっごくかきますし・・・それに臭いです(笑)」

浜崎はブーツを脱ぎ、衣装を脱ぎ、アヤ子に渡した。

浜 「お面って結構小さいのですね、なかなか被れなかったし(笑)被ったらお面が顔に張り付くみたいだったです。」
ア 「さっき言ったヒーローマンはもっとすごいですよ。一人では脱げないし(笑)」

アヤ子は衣装をたたみながら話した。

浜 「私にはできそうもないです(笑)」
524恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
アヤ子は衣装をたたむ手を止めずに話した。浜崎が着ていたタイツを麻の袋にしまう。
キューティーローズの衣装もたたみ、同じ袋に入れた。どちらもビニールの袋に入れてからしまった。

浜 「ダイエットにいいかもしれませんよね(笑)ショーだったらすごく汗かきそうだし(笑)」
ア 「汗はいっぱいかきますよ。タイツとか中に着ているTシャツとか絞れるくらい汗をかく人もいますよ。でもダイエットにはならないと思いますね。いっぱい汗をかきますから一時的には体重が減るでしょうが、その分水分を補給しないと倒れますからね(笑)」
浜 「そうなんだー、ダイエットできるなら本気でやろうかな?なんて思いましたよ(笑)」

浜崎は着替えが済んで先ほどアヤ子に撮ってもらった写真を見ている。
アヤ子はブーツをビニール袋に入れ、麻の袋にしまった。最後にお面をとり、タオルでなかを拭いた。

浜 「貴重な体験をさせてもらいました。ありがとうございました。この写真大事にします(笑)」
ア 「いえいえ(笑)」

アヤ子はお面をビニール袋にれた後、手を止めてお辞儀した。
お面を麻の袋にしまい、帰る準備ができた。

ア 「それでは、また明日お世話になります。もし明日お時間が取れたら、催事場に来てくださいね(笑)明日はゲームもするって主任さんから聞きましたし(笑)」

アヤ子は浜崎と握手をした。

ア 「では、失礼します。」
浜 「送りますよ(笑)」
ア 「主任さんに怒られませんか?(笑)」
浜 「大丈夫ですよ(笑)」

アヤ子と浜崎は会議室を出た。社員通用口でアヤ子は浜崎と別れた。

ア 「1日目終了!明日もがんばろ!」

アヤ子は車に乗り、駐車場からゆっくりと出て行った。途中浜崎に手を振った。
浜崎はアヤ子が車に乗り、駐車場を出て行くまで見ていた。
525恋愛小説家 ◆1C5DLw4Y
とりあえず、一旦は終了です。
感想をお願いしますm(__)m