秘密の撮影(仮)

状態
未完結
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823名無しさん@着ぐるみすと
待合室。 
体に密着した青い光沢のあるスーツを着込み、長澤奈央は一人部屋の真ん中で待ち時間が空けるのを待っていた。 
深夜まで及んだ撮影に長い待ち時間が生ずるのは珍しい事ではなかったが、 
一人で、それもこんな格好で長い時間を過ごすのは初めてだった。 
この姿ではトイレにも容易にいけない。ご飯も食べられない。待つ他にする事はなかった。 
部屋に備え付けられた鏡に遷った自分を見やる。 
全身にフィットしたスーツが艶かしいボディラインを浮かび上がらせている。
恥ずかしさや、今後への不安や、日常のストレスがそうした隙を生んだのだろう。 
…――――――だから、それは確かに魔が射しただけの事だったはずだった。 
スカートを捲り上げるようにして青い布に包まれた自らの秘部に指を這わせていく。 
「…はぁ、ふぅぅ――…」 
最初は核心を外れた部分をゆっくりと。次第にその円を縮めていき、やがてその細い二本の中指で割れ目を上からなぞって行く。 
「んっ! んっ!! んっっ!!!」 
唇を強く噛んでもれる声を抑えようとする。 
強く擦り付ける太股と太股の間で秘部がうっすらと湿っていくのが分かる。 
なまじ、薄布を隔てている事が逆に奈央の高ぶりを招いた。焦らされている様な感覚に襲われる。 
自然、指に力が入る。
もう、腰が砕けて力が入らない。空いている左手で畳を抑え、身体を支えた。 
勢い、股が開かれる状態となる。忍者の鎖帷子を模した編みタイツに覆われた奈央のすらりと長い脚が露わとなる。
その奥で白いグローブに覆われた奈央の指が、まるで別の生き物の様に次第に速度を増しながら執拗に奈央の股間をしごいた。
824名無しさん@着ぐるみすと
たちまちの内に室内にグチュグチュと卑猥な水音が響き始めた。 
(駄目――!!) 
衣装を汚してしまう。頭では分かっていても鏡の中で両脚を大きく割いた状態で自慰に耽る自分に引きずられ、
悩ましいため息が白い吐息を伴って吐き出された。 
「うぁっ! んぅっ!!!…はぅっ!」」 
長澤の下半身が耐え切れず、くねり始める。勝手に身体が震えて自由にできない。 
ぶるぶると、太腿が筋を立てて震え続ける。額にうっすらと汗が乗り、まだ少女の面影を残すその顔は赤く紅潮している。
空色のパンティはその中心を暗い紺色に染めていた。 
「あ、あ、あ…あゥッ! うぅ…ッう!!」 
奈央はもう自慰に夢中だった。股間に意識が集中し、その他のことなどどうでも良くなっていた。
奈央の腰が浮き、視界が白く覆われはじめる。

「っッッ!!!」 
全身が弓のような美しい曲線を描いて反り返る。 
一瞬の静寂。 
その瞬間、七海の背筋がピンと伸びた。 
「っっっっッッ―――…!!!!」 
仰け反ったまま全身を強張らせ、きつく歯を食いしばる。 
次の瞬間。 
プシャッ!!! プシャァァァァァアアアアアァァァァ――――!!!!!!!! 
最大級の波を向かえ、奈央の顔に悦楽の表情が表れる。 
が、それだけでは終わらない。奈央の意思に反して律動が起こる。 
「あんっ!…あんっ!!……あぁん!!」 
びくッ…びくッ…びくくッッ!! 
『あうッ! うンッ! あぁ・あ・あ・あぁ…』 
どぷり、と 
 新たな愛液が長澤の股間から湧き出て滴り落ちる。
しとどに濡れそぼったそれは藍色のパンティでは、もう抑えきれないほど溢れ出てしまっていた。
プシャッ! プシャッ! プシャッッ!! 

「はぁ…はぁ、はぁ………はぁ――…」 

絶頂を迎え、満足げな表情を浮かべる。 
その一部始終を、黒いカメラに取り付けられたレンズが捕らえていた。
825名無しさん@着ぐるみすと
イベントは滞りなく進み、写真撮影会の前に奈央のシークレットフィルムが上映されることになった。
事前の打ち合わせでは、これは来月発売するイメージDVDの先行公開になる予定だった。 
舞台後ろの巨大スクリーンの『長澤祭り』の文字が消えていき、やがて映像が表示されてゆくのを見るうちに、奈央の顔から血の気が引いていった。 

『あ、あ、あ…あゥッ! うぅ…ッう!!』 

巨大な画面いっぱいに両脚を広げ、股間をまさぐる自分の姿。 
悦楽に酔いしれたその表情は淫女のそれだった。おまけに、着ているのはハリケンブルーのスーツだ。  
会場全体が動揺にざわつき始める。誰もが、目の前で繰り広げられる現実を理解しきれないままスクリーンに釘付けになった。
画像は紛れもなく長澤本人であることに間違いはなかった。 
憶えがなくとも他人には絶対に見られたくない羞恥行為を撮影され、大勢の人間の前でつまびらかにされている。 
それも、ハリケンジャーの衣装を着た自分に欲情したというとんでもないシチュエーションで、だ。
ビデオの中ではハリケンブル―の格好をした長澤が懸命に股間を二本の指でまさぐっている。 

『ん…はぁ、…ふぅ…はうっ!…あっ…あぁ――…』 

「なに…これ……?」
突然の事態にまだ、思考が追いつかない。
奈央はスクリーン一杯に繰り広げられる自らの痴態をただ、呆然と見つめていた。
『はぁ…はぁ…はぁ……』
頬は紅く高潮し、背中からは湯気が上がっている。
スーツの密閉性の高さが熱を篭らせているのだ。
白く弾む息を吐き出しながら長澤は股間をなぞるのを止め、おもむろにその手を背中へ回し
――忍者刀ハヤテ丸のプロップに手を伸ばすと、その先端を股間へあてがい、執拗にこすり始めだした。
『あ…! あぁっ…っっつ…いっ―…いぃ…あ…あぁ…あああぁ…』
撮影用の小道具を張り型に見立てた自慰行為が流れると、会場に失笑の冷たい笑い声がそこかしこから上がり始めた。
まるで、憑かれた様に画面の長澤は懸命に股間に鞘を押し当てていく。
ずぶっ…じゅぶ…ぬぷっ……
眉間に皺を寄せ、歯を食いしばって玉のような汗をかきながら一心不乱に腰を扇動させていく。
826名無しさん@着ぐるみすと
「こんなの嘘…こんなの嘘だよっ!」
必死に場を取り繕おうとする長澤の叫びが虚しく開場に響き渡る。
もう、誰も長澤の言葉を信じる者はいなかった。
会場の混乱は頂点に達し、奈央の目の前の最前席からも説明を求め、ファンが仕切り線を越えて詰め寄ってきていた。

『発情期の猿みたぁ――――い!』

突然、場に似つかわしくない、どこか幼い印象を与える甲高い声が広い会場に轟いた。
『やっほー! 奈央、楽しんでる? 驚いたでしょ―? 実はこっそり隠し撮りしてたんだ、ごめんね―☆』
画面が切り替わり、一人の若いグラビアアイドルの顔が大写しになる。
「何で…あずちゃんが?」
そこに映って微笑んでいるのは、紛れもない奈央の友人山本梓だった。
笑って手を振っているいる。心底楽しそうに。いつも奈央と談笑している時と変わらない満面の笑みで。
『でも、いきなりこんなの見せられてもわけわかんないでしょ? だから説明してあげる!
えっと…長澤奈央は今日限りで芸能界を引退します!』
突然の発表に会場のファンが再びざわめきだした。
「そ・そんな……!」

『当然だよね―、戦隊もののスーツ着た自分にムラってオナってた所を大公開しちゃったんだもん。
もう、表を歩かんないよ。人生終わり――!! でも、安心して。奈央はわたしがきっちりプロデュースしてあげるから。
題して“海豚をプロデュース大作戦!!” はーーーい、ぱちぱちぱちぱちーーー!』

動悸が止まらない。
悪い夢を見ているようだった。
会場の空気が一変していくのが、今日の舞台の主役は長澤ではないことを如実に伝えていた。
いつしかイベント会場は奈央のためだけに用意された処刑場へと姿を変え、ファンは残酷な公開処刑を楽しむ聴衆へと変貌していった。
彼らが目を皿のようにして一挙一等速を凝視するのは長澤ではない。新鮮な刺激と驚きを与えてくれる画面越しの梓だ。
長澤はどうする事もできずにただ流されるままに梓の言葉を聞いていた。
827名無しさん@着ぐるみすと
『っていうか――、今日のイベント自体がお披露目会、みたいな?
感謝してよね―、東映の衣装汚してオナっちゃう様なド変態をもっかい売り出してやろうなんていう親切な人はいないよ?
でもマニアックだよねー、スーツ着た自分に欲情するなんてさー。わかんないとでも思ってたの?
股間に染みが出来て匂うっつーの! そんなにハリケンブルーのスーツを着るのが好きなら一生着てればいいよ
んで、その格好のまんまお詫び行脚で全国周るの。日本中のファンとちびっ子に謝ろう、オナニー大好きのド変態でごめんなさい、ってさ!
名前は何がいいかなー…うーん…そうだ! 名前はファンから募集しようか。 素敵でしょ? もう嬉しくて股間濡らしてるんじゃないの、奈央?』

部隊袖から特設ステージの中央に、衣装を乗せた台座が運ばれてくる。
四方から当てられる極彩色の照明が光沢のある青い表面に反射してきらきらと光り輝いて見える。
それは、本日の主役である奈央をひときわ輝かせる特殊な衣装であった。
あれを自分が着せられて二度と脱げないようにされてしまう。
ちらりと脳裏を掠めたほんの数分後の、惨めな未来の自分の姿に今から背筋が寒くなった。
828名無しさん@着ぐるみすと
某所に投稿したものです。
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