妻はスーツアクトレス(仮)

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未完結
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787名無しさん@着ぐるみすと
私は名古屋市郊外の、赤い電車の走る街に住む33歳のサラリーマン。同い年の妻と4歳の娘の3人家族で、アパート暮らしのごく平均的なサラリーマン一家だ。
娘が小学校に入学前にマイホームをと考え、最近出来た隣町のハウジングセンターに一家で出かけた。
何件か見学し中央広場のベンチで缶コーヒーを飲みながら、パンフレットを広げ妻とあれこれ相談していた。
広場の一角では午後に開催される子供達に人気の「煌き戦隊ダイヤマンショー」の準備が進められ、二十歳前後の男女が観覧席となるブルーシートを広げたり、音響装置のテストに追われていた。
私は横目で見ながら、「女性が多いと言う事は、戦闘員役も女の子か?」などと想像しながら妻には悟られないよう、一番可愛い娘の戦闘員姿を想像していた。
すると、セッティングの指示を出していた私より少し年配の責任者らしき男性が、先ほどから妻の方を気にしているのに気がついた。と同時にこちらにやって来て妻に向かい「失礼ですが、もしかして山本さん?」と声をかけてきた。
山本とは妻の旧姓だ。もしかして知り合い?。怪訝そうな私を無視し妻は「え、チーフ?」と懐かしそうな声をあげた。
男性は改まって名刺を出してきた。そこには、イベント会社の名前と営業部長の肩書きが書かれていた。
帰りの車内、娘は後部座席のチャイルドシートの中で眠っている。妻は、今日のいきさつを話し始めた。
それは、思いもよらない話しだった。
「実は、私高校生の時から短大卒業するまでさっきのイベント会社で、キャラクターショーのアルバイトをしていたの。太陽女神サンセーラーズが大人気で、サンセーラーをよくやっていたの。」
と衝撃的な話だった。
続く。
790名無しさん@着ぐるみすと
妻とは高校の同級生だ。学生時代はお互い別のクラスだったが、卒業後の同窓会で再会し交際をはじめた。
妻は高校ではダンス部だったが、身長が150センチと小柄なせいかステージの隅で踊っていた記憶しかない。
そんな妻が、実はサンセーラーをやっていたとは。
実は、妻にはもちろん内緒だが、私は高校生の頃から着ぐるみファンで、特にサンセーラーショーは全員がゼンタイ姿の女性で、よく撮影に出かけていた。撮影した写真は、実家の押入れにしまってあるが、もしかしたらゼンタイ姿でマスクの下の素顔は妻かもしれないと考えると、ハンドルを持つ手は汗びっしょりとなっていた。
そんな私に気が付かず、助手席の妻はアルバイトをしていた当時の話をはじめた。それは、まさに着ぐるみファン垂涎の衝撃的内容で、私は妻の話を聞きながら真直ぐ前を向いて運転するのがやっとだった。
続く。
792名無しさん@着ぐるみすと
「ハウジングセンターで声を掛けてきた佐々木さんは、当時イベント会社ではみんなからチーフと呼ばれていて、クライアントとの交渉からイベント当日のドライバーまで何でも仕切っていたの。ちょっと頭が薄くなっていたけど、昔を思い出して懐かしくなっちゃった。」
妻はそんな事を話し、当時の思い出話をはじめた。
「あなたはキャラクターショーをあまり知らないと思うけど、着ぐるみ着てステージに立つと私は注目の的だったのよ。ダンス部では目立たない存在だったけど、それはもうすごかったんだから。」と妻は興奮気味に話を続けた。
「全身タイツって知ってる?そう、モジモジ君みたいな衣装。当時私がやっていたサンセーラーは、肌色の全身タイツを着てその上にミニのワンピースでマスクを被っていたの。全身タイツって体の線がそのままだから、ちょっと恥ずかしいのね。」
私は思わず「全身タイツ?もちろん知っているさ。」と応えたくなる気持ちを押さえながら、真直ぐ前を見て運転するのがやっとだった。
続く。
793名無しさん@着ぐるみすと
私は興奮する気持ちを抑えるのに必死だった。「ちょっと咽が渇いたからお茶でも買って来る。」そう言ってコンビニの駐車場に車を停め私は店内に入っていった。少し前かがみの姿勢で・・・。
妻の分のお茶も買い、コンビニの駐車場に停めた車内で妻の話は続いた。
「全身タイツって意外と暑いのね。見た目薄そうだけど。さっきも言ったけど、(全身タイツは)体の線が出るから下着には気をつかったの。私ダンスやってたから、ダンス用のファンデーション付けて全身タイツ着たの。体操部の娘(こ)は、レオタード用のファンデーション使ってた。一度新人の娘が全身タイツの下に柄物のTシャツ着て出ようとして、気が付いたら柄がはっきり見えてて慌てて脱がせたの。色々あったな。」
妻の話に、私は興奮気味の心を落ち着かせようと、気付かれないよう一口お茶を飲み込んだ。
「私、高校の時は髪長かったから、頭の上にお団子にしてたけどファスナー上げる時によく挟んじゃって。でも楽しかった。お面被ると真直ぐ見えないし、横にいても気が付かないから、だれもいないと思ってジャンプしたら思いっきりぶつかって・・・。最初の頃は距離感がわからないから大変だったの。でも不思議よね。慣れてくると見えない所も勘でわかるようになるの。エンディングに主題歌にあわせてダンスがあるんだけど、最後に決めのポーズが決まった時はサイコーなんだから。」
妻は、私がキャラクターショーなんか見たことがない素人だと思って話を続けている。「妻よ、本当はものすごく知っているんだ」と叫びたい気持ちを押さえるのに必死だった。
797名無しさん@着ぐるみすと
本心は根掘り葉掘り聞きたい気持ちを押さえ、「そろそろ行こうか。」と私はキーをひねった。
アクセルを踏むと、エンジンの回転数に合わせて私の鼓動も上がるような、そんな興奮を妻に悟られないよう平静を装った。
「他にはどんなのやったの?」私は尋ねてみた。すると妻は、「私はメルヘンが殆んどだったから。あっそうそう、少女まんがみたいのをメルヘンって言うんだけど。でも何回かは戦隊シリーズもやったのよ。警戒戦隊パトレンジャーのパトピンクとか。私アクション下手だから、何か中途半端だって言われて、先輩が遠慮なくマジで蹴り入れろって言うから本気で回し蹴りしたら、戦闘員のあそこに当っちゃって・・・・・。」
妻は急に思い出したように笑い出した。「控えのテントに戻って謝ったけど、2回目のステージで急に後ろから抱き付いてきたかと思ったらオッパイ揉まれて。仕返しされたの。でも戦隊モノはそれっきり。」
私は、パトピンク姿で愛撫される妻を想像して思わずアクセルを踏み込んでしまった。
続く。
801名無しさん@着ぐるみすと
「危ないじゃない、急に加速して。子供が目覚ましちゃうじゃないの。もしかして、さっきの話で嫉妬してるの?」
妻はくすくす笑いながら話を続けた。
「戦隊モノはもう少し身長がないとダメね。見栄えよくないもん。あっそうそう、私実は桃尻ユリカと舞台で一緒だった事もあるのよ」
「えっ、桃尻ユリカと共演したの?」「一緒だったと言っても、映画の舞台挨拶で横に立っていただけ。桃尻ユリカが主演した宇宙教室007って覚えてる?」
「少しだけ覚えてる。たしか、宇宙船の中の小学校の話でユリカが先生役だったよね。」
「そう、その小学校にN87星雲から転校してきた宇宙少年が主人公でね、その主人公の少年宇宙人役で出たの。そのときの着ぐるみはウルトラマンみたいなゴムのウエットスーツで、大変だったんだから。」
「大変って?」私は、もちろんその主人公の宇宙少年がどんな着ぐるみだったか知っている。たしか、小学生の設定だったから、小柄なスーツアクトレスが中に入っていて、かなり話題となっていた。まさか、妻があの着ぐるみまで着ていたとは。
「あの着ぐるみはとにかく息が出来ないの。マスクの口の部分に切り込みがあって、そこからしか息が出来ないの。」妻は少し興奮気味に話を続けた。と、いきなりチューするみたいな形に口をすぼめた。
「いきなり何のまね?」私は妻に聞いた。
「こうやって口をすぼめてマスクの口の切り込みに合わせるの。こうしないと息が続かないし、大きく息を吐き出すとマスクの中に息が充満しちゃって苦しいの。わかる?」と私にちょっと自慢げに言った。
そして「あの着ぐるみ着る時って、下に全身タイツ着るのよ。そうしないと汗で着にくいの。」
「そのくらい知っているさ。」と言いかけたが、「へー、そうなんだ。」とわざとそっけない返事で返した。
あの角を曲がると、赤い電車が「パーピーポー」と走り抜ける踏切がある。そこを過ぎると我が家も近い。
私は、もっと妻の話を聞いていたい。でも、家はもうそこだ。どうしよう。
続く。
811名無しさん@着ぐるみすと
道路は買い物帰りの車で渋滞していた。私は妻に「ついでに夕食の買い物でもして行こう。」と言い、右折車線には入らずわざと左折した。
妻は私に「ねー、どこに行くの?」と問い掛けてきたので、「久しぶりにジョスコに。」と答えた。ジョスコなら、ここから15分はかかる。まだ、妻の話が聞ける。
「何か楽しい思い出ばかりだね。」と聞くと妻は、「そうでもないのよ。オ・タ・クって言うか、大きなカメラ持ってストーカーみたいな奴がいたのよ。」と妻はいかにも思い出したくないようなしぐさで答えた。
私は一瞬ドキッとした。でもそうでもないらしい。「ある時なんか、着替えのテントの裏にまわって覗こうとしたり、変なアングルで写真撮ったり。子供たちの前に立ってカメラかまえたりで、サイテー。子供にまじって握手会に、いかにも保護者ですって顔して思いっきり握手したりで。別のチームだけど、ブツが盗まれそうになったりで。チーフの佐々木さんなんか、食事も出来ずにいつも見張りしてたんだから」
と妻は一気にいやな思い出を話した。
続く
813名無しさん@着ぐるみすと
私は妻の気分を変えようと、「何か役得みたいな事はなかったの?」と話を変えた。
すると妻は、「さっき、映画の舞台挨拶で桃尻ユリカといっしょしたって話したでしょ。その時ね、始まる前に彼女の控室に映画館の人と一緒に挨拶に行ったの。もちろん着ぐるみ着てよ。そしたら桃尻ユリカが、どんな人が着ぐるみに入っているの。顔を見せて。って言ったからスタッフさんがファスナー下げてくれたの。そして頭の部分だけ脱いで宜しくおねがいしますってあいさつしたら、桃尻ユリカが、学生さん?って聞くんで高校2年です。って答えたら、暑いけど頑張ってね。って言ってくれたの。芸能人なんて初めて間近で見ていきなり声かけられて、もう感激しちゃった。」と先ほどとは打って変わり、それは楽しそうに話してくれた。
続く
841名無しさん@着ぐるみすと
妻の思い出話は一旦終わった。間もなくジョスコに到着する。今日の夕食は何にしようか?そんなことを考えていると、妻は急に「ねー、今年のゴールデンウイークだけど、どうやって過ごすの?」と聞いてきた。私は、「そうだな、1週間会社が休みになるけど、特に考えてないな。」と答えた。
すると妻は、「だったら、着ぐるみの仕事やっていい?」と言い出した。そう、今日出会った昔妻が学生時代着ぐるみバイトしていたイベント会社の佐々木さんが「間もなく連休だけど、なかなかバイトが集まらなくて・・・」と言っていたのだ。
「行ってもいいけど、10年以上もブランクがあるし大丈夫?」と心配そうに言うと、「どんな仕事か聞いてみる。」と急に張り切り出して妻は答えた。
翌日、私が会社から帰宅すると妻は、「今日電話したら、連休中に隣町のワオンショッピングモールでアニメ祭りがあるんだって。朝10時から夕方7時までだそうよ。ちょうど実家の近所だし、この娘(こ)を実家に預けて行けるからやってもいい?」と何か嬉しそうに聞いてきた。
私は、「しょうがないな。でも、いまさらダンスしたりアクションは無理だろ。条件よく聞いてみたら。」と半ば了承した。
三日後の昼休み、妻から携帯に電話がかかってきた。妻の話では、今イベント会社の事務所に来ていて、担当の佐々木さんとバイトの条件を聞いている最中で、仕事はメルヘン系のキャラクターのグリーティング中心との事だった。
明日から10数年ぶりに妻の着ぐるみバイトが始まる。準備があるそうで、会場に出かけている。そろそろ帰宅する頃だ。
あっ、帰って来た。帰ると妻は少し興奮して明日からのイベントの事を喋りだした。
「仕事はね、今人気の美少女変身ブリンスフォーで、交代で着ぐるみ着て会場内で子供達とゲームしたり記念写真撮ったりするの。久しぶりに全身タイツ着てマスク着けたんだけど、昔みたいにマスクもすっぽり被るんじゃなくて、お面みたいにちょこっと付けるだけで楽なの。」
と今日の様子を話してくれた。
844名無しさん@着ぐるみすと
いよいよ今日から妻の仕事が始まる。私は会社があるので、いつもの時間に出勤した。間もなく10時だ。妻の10数年ぶりの着ぐるみバイトか始まる。
バイトの終了は午後7時だ。実家によって預けてある娘を連れてくるので、帰りは8時頃になる。私は早めに帰宅して妻の帰りを待った。
予想通り8時過ぎに妻は帰宅した。今日の様子を話したそうだったが、食事を先にして娘を寝かした後、じっくり妻の話を聞いた。
「一緒にバイトする娘(こ)は、20歳位の学生さんなの。事務所の佐々木さんが気をきかせて、保育士さんの勉強してる学生さんを集めてくれたんで、子供の相手は問題ないの。着ぐるみの仕事はみんなはじめてらしいいんだけど、みんな学校の実習で保育園に行った時、着ぐるみ着てお遊戯した事があるんだって。でも、全身タイツは初めてみたいで、昨日のリハーサルの時に、下着の線が出ないようなの着てくるように言っといて正解。」
と興奮して一気にしゃべりだした。
「みんな全身タイツ着るとスタイルがいいのね。私なんか比べ物にならないんだから。若いっていいな。でも、経験者は私しかいないから、色々と動作や着ぐるみ着て気をつける事教えたり、私が先生なの。」と少し調子にのって喋る妻に、
「あまりうるさい事言って、うるさいおばさんって言われないようにね。」と私が言うと「オバサンって失礼ね」と少しむくれて妻は言った。
翌日は大きな紙袋を持って妻は帰ってきた。「何か買ったの?」と聞くと妻は、「これね、みんなの全身タイツ。家(うち)に乾燥機があるから、みんなの分私がまとめて洗って持ってくの。」と妻は紙袋を指差した。
私は興奮した。全身タイツが、しかも20歳の女の子が着たタイツが・・・・しかも洗濯前だ。私の頭の中は妄想に支配された。
妻は、「私、今日汗かいたから先にお風呂入っていい?。出たら洗濯するから。」そう言って、妻は洗濯機に持って来た全身タイツを放り込んで、お風呂の支度をはじめた。
浴室では、妻が入浴をはじめた。私は興奮を抑えて、ゆっくり入浴するよう言って洗濯機に近づいていった。蓋を開けると、中からかすかに汗の臭いと化粧品の臭いが感じられた。私は丸められ洗濯機の中に置かれた数着の全身タイツを手に取り広げた。
それはフード付きの全身タイツで、背中にファスナーがあり顔の部分が丸く開いていた。妻の入浴はまだ続いている。アニメソングを口ずさみながら、何だか楽しそうだ。
私はその中で一番大きなサイズの全身タイツを手に取った。と同時に、一気に着ていたシャツとトランクスを私は脱ぎ捨てた。そして、すばやく足に通すと一気に腕を通し、フードを頭に被った。ファスナーを上げようとしたが、うまく手が届かない。仕方なく背中が開いている状態で我慢した。
続く。
845名無しさん@着ぐるみすと
洗面所の鏡に、自分の姿を映し出した。背中を見ると、もう少しでファスナーに手が届きそうだったが、無理は禁物とファスナーを上げるのは止めた。
以前、ネット通販で買ったゼンタイ比べて生地の感じが違っていた。あまりテカリもヌメリもなく、自然の肌に近い感じの生地だ。縫製(つくり)もしっかりしている。ファスナーも目立たないようなコンシルタイプだった。
やはり本物は違う。これをさっきまで20歳の娘(こ)が着ていたと思うと、下半身が熱くエネルギッシュになって来るのを感じた。
「そろそろ出るねー。と浴室から妻の声が聞こえた。私ははやる気持ちを抑えつつ、平静を装いながら「じゃー僕も入るから、蓋しなくていいよ。」と答えながら、慎重に着ていた全身タイツを脱ぎ洗濯機に入れ、自分の下着を着て台所に向かった。
妻がさっぱりした顔で風呂から出てきた。私が入れ違いに風呂に入ろうとすると、妻が「今からお洗濯するから、あなたのシャツも入れたら?」と言ってきた。
私は、洗濯機に自分の下着と仕事用のシャツを入れ、浴室に向かった。
翌日、昨日妻が持ち帰った全身タイツと一緒に洗ったシャツを着て出勤した。仕事中は、今着ているシャツが女の子の着た全身タイツと一緒に洗った事を思い出すだけで興奮し、仕事も手に付かないくらいだった。
明日からは、会社も連休になる。妻がどんな着ぐるみ姿なのか、明日は娘を連れて出かけようと思った。
続く。
848名無しさん@着ぐるみすと
翌朝、いつものように家族3人で朝食を朝食を食べながら私は妻に、「今日から会社連休だから、お昼食べたら沙耶と一緒に見に行くよ。」と言った。
さすがにまだ幼稚園に通う娘に、美少女変身ブリンスフォーはママが着ぐるみ着て仕事しているとは話していない。娘の沙耶には、ママはお友達からお仕事頼まれたの、としか言っていない。
私は娘に「今日は、パパと一緒にブリンスフォー見に行こうね。」と言って妻を送り出した。
今日のお昼は、娘の沙耶の大好きなピラフを作り(もちろん冷凍をチンしただけだが・・・)、久しぶりに二人で一緒にお昼を食べ、いよいよ妻の着ぐるみ姿拝見と娘を後部座席のチャイルドシートに座らせ出発した。
さすがに連休中で、駐車場はほぼ満車状態だったが何とか屋上駐車場の隅っこに停める事が出来た。
娘を車から降ろして、近くのエレベーターでイベント会場のある2階ジョイフルホールに向かった。
会場のホールは、2階通路から少し奥まったところにある。前に一度グリスチャンロッセンの絵画展に来た事があるが、このようなイベントでは始めてだ。入り口の入場券売り場は親子連れで列が出来ていた。どうやら大盛況のようだ。
私は、妻から無料招待券をもらっていたので、行列に並ぶ事無く娘と一緒に会場に入っていった。
入ると直ぐ、ブリンスファースト(の着ぐるみ)が入場者と握手して出迎えていた。妻の身長は150cmだ。どう見ても身長は160cm位あるから、これは妻ではない。それにしても、妻が言っていたようにお面が小さい。後頭部が丸見えだ。髪を束ねたオダンゴがはっきり見える。
それにしても妻はどこにいるのだろうか?。そう思いながら、名場面のセル画やブリンスフォーが通う高校の模型などの展示を娘の手を引きながらさらに進んで行った。
突然、奥からブリンスフォーのテーマソングと女性の声が聞こえてきた。どうやら、ステージイベントがはじまるみたいだ。私は、娘を抱っこして足早に会場内を進んだ。
角を曲がると、3畳ほどのミニステージがあり、どうやらこれからブリンスフォーとのジャンケン大会が始まるみたいだ。司会のお姉さんは、ブリンスセカンドとジャンケンして勝ったら記念にシールをあげちゃうよと言っていた。
ステージ前にはたくさんの親子連れが既に行列を作っていて、ブリンスセカンドの登場を待ちわびていた。突然、司会のお姉さんの口調が変わり、「みんなでブリンスセカンドを呼ぼう」と会場のチビッコ達に呼びかけはじめた。
娘も司会のお姉さんの呼びかけに合わせて、一生懸命叫んでいた。と、その時ステージ隅のカーテンが開き中からブリンスセカンドがステージ飛び出てきてポーズを決めた。その瞬間、会場のチビッコ達の声援はピークに達した。
私は、ステージが見えにくそうで困っていた娘を抱きかかえステージに目を向けた。娘は一生懸命声援を送っている。と、私はステージを見て驚いた。登場したブリンスセカンドは、身長が150cm位だった。まさか、あれが妻なのだろうか?私は何とか見極めようとしたが、全身タイツを着てマスクを付けている姿からは判断出来なかった。
ジャンケンイベントも終わりに近づき、ようやく娘がジャンケンする順番がやってきた。私もいっしょに付いてステージに上がり、娘と順番を待っていた。いよいよ前の子が終わり、私達の番となった。と、一瞬ではあるがブリンスセカンドの表情が変わったような気がした。もちろん着ぐるみだから、顔の表情が変わる訳はないのだが、私には感じられた。間違いない。これは妻だ。目の前にいる全身タイツを着てマスクを付けて立っているブリンスセカンドは、間違いなく妻だ。私は確信して、着ぐるみの顔をじっと見つめた。それに反応して、かすかにうなずいた。
娘はジャンケンに勝ち、記念のシールをもらって大喜びしている。私は大はしゃぎしている娘を気にしながら、ステージからカーテンの奥に去っていくブリンスセカンドの姿、いや全身タイツを着て変身した妻の後ろ姿を目で追いかけていた。
続く。
853名無しさん@着ぐるみすと
娘は、ジャンケン大会で勝った興奮冷め遣らぬ様子で、会場内を歩きまわっている。私は、会場係員に声を掛けて妻に会いに行きたい気持ちをグッと押さえた。娘はブリンスセカンドの本物に会ったと思い込んでいる。あれはママだよ、とは断じて言ってはならない事だ。
小一時間程会場を歩き回り、娘の沙耶も疲れたみたいだ。そろそろ帰ろう。出口ではブリンスサードがお見送りをしていた。こちらは、身長が155センチ位だ。やはり、先ほどのジャンケン大会で登場したのは妻だと確信した。
その夜、帰宅した妻は玄関で出迎えた私に向かって小声で、「今日来てたでしょ、私の事わかった?」と妻は悪戯っぽく笑って聞いてきた。
私は、「もちろん。セカンドだろ。沙耶ジャンケンで勝ったって大喜びしてたよ。」と私も娘の沙耶に気付かれないよう小声で答えた。
娘の沙耶は、昼間の疲れが出たのか早くに寝てしまった。妻は、いつものように持ち帰ったみんなの全身タイツを洗っている。私は妻に、「お前、なかなか決めのポーズかっこ良かったぞ。それにしてもすごい人気だな。」とあえて無関心を装って聞いた。
そして、「全身タイツって結構体の線がはっきり出るな。それにしても、お前があんなにスタイルいいって、驚いたよ。」と少し妻をほめながら私は言った。
すると妻は、「どう、見直した。20歳の娘(こ)には負けないわよ。」と自身ありげに答えた。そして、「いまに洗濯終わるから、あなたの前で全身タイツ姿披露しちゃうわ。」と驚きの一言を発したのだった。
私は平静を装うのに必死だった。何と大胆な事を言うのか。私の目の前に、妻が全身タイツ着て現れる事になるとは
奥から、ピーピーと乾燥終了を知らせるアラームが聞こえてきた。妻は、「乾燥終わったみたい。今着替えてくるから。」と言うが早いか、立ち上がって奥の部屋に向かって行った。
続く。
856名無しさん@着ぐるみすと
私はそっと寝室に行き、娘が眠っているのを確認してリビングに戻った。奥からは洗いたての全身タイツを乾燥機から取り出して、畳んでいる音がする。
しばらくすると、洗面所から私を呼ぶ妻の声が聞こえた。なんだろう?。私はリビングを出て、洗面所に向かった。「何か用?」私は妻に声をかけながら洗面所の扉を開けた。
その瞬間、私の心臓はまさに飛び出さんばかりの勢いで鼓動をはじめた。私の目の前には、全身タイツを着てこちらを向いて立っている妻がいたのだ。私は、異常に高揚した自分の心を悟られないよう、いかにして高まる胸の鼓動を打ち消そうかと必死に考えていた。
そんな私の気持ちには全く気付かず、妻は「ねー、背中のファスナー上げてよ。」と何とも間延びした声で私に向かって頼んできた。
「ファスナー上げてくれだと・・・」私は妻の言葉に、今度は心臓の鼓動に変わって震えだした右手の指先を左手で押さえながら妻の背中にそっと手をやり、ゆっくりとそして髪を挟まないよう慎重にファスナーを後頭部まで上げた。
妻は私の方を向き「どお?、意外とスタイルいいでしょー・・・」と平然と聞いてきた。私はようやく落ち着き、全身タイツ姿の妻を足元からゆっくり視線を上げていった。
私は気が付いた。全身タイツに下着の線が見えないのだ。そう思った瞬間、妻と目が合った。妻は少し恥らうように小声でささやいた。「下着付けてないの。」
その瞬間、私の欲望を辛うじて繋ぎとめていた鎖が引きちぎれる音を聞いた気がした。気が付くと私は妻を抱きしめていた。そして、すばやく妻の後ろにまわると、私の指は徐々に妻の肩から下がってゆくのだった。
続く。