途切れた夢(仮)

状態
完結
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334HANZOU ◆iKuayxAL9E
ショーチーム事務所

上司「さて、次の演目の美少女戦士の配役候補を募集する~。我こそはって人は立候補するように、以上。」

唐突ではございますが、僕の名前は島田勇次といいます。年は今年で25になります、昔からの夢だったキャラクターショーの現場にやってきてはみたものの・・・現実はそんなに甘く
はないのです・・・。
先輩重視の縦社会・・・器械体操が苦手な僕はいつもチョイ役の戦闘員ばかり・・・シン・・・あーつまり、ヒーローとかヒロイン役のことをこの業界ではシンと呼ぶようです・・・はい。

やはり、こんな仕事についたからにはシンをやってみたいって思うのは当然の目標であり・・・でも・・・今、シンをやっている先輩もきっと同じ境遇で今の状態まで必死に努力して這い上がったんだと
思います。

意外にも、新人でいきなりシンができるときもあるようです・・・技ができる先輩があえて戦闘員になってしっかりやられたらシンに演技が下手でもヒーローが引き立つという現象を狙ったもののようで
かくゆうこの僕も入ってすぐにヒーローができる機会に巡り合えたわけですが・・・お面がはいらなかった・・・なので戦闘員としてなくなく出撃となりました。

さて、ショーには男の子むけと女の子むけのものがありまして、ところによってはメルヘンなどともよばれているらしいです。昨今は長年つづいているアニメのヒロインが女の子人気をわしづかみにしている。
していると聞きます、というか僕自身ももともとアニメが好きな元ヲタなので毎週みているわけです。

え?日曜は仕事じゃないのかって?いや~そうであればいいのですが、なにぶんへたくそなもんでなかなかお仕事がとれないのでございますよ~、そんなわけで日曜の朝からアニメだの特撮だののオンパレードを
6丈1間のせまくきたないアパートで男一人でながめているわけです。

そんなある日、うちの事務所でもその美少女戦士のキャラショーに加わるそうで・・・ああ・・一度でいいから、生でそんなの見てみたい・・・テレビでしか見れないあの娘たちが目の前にいるなんて想像しただけでも・・・おっと
この先は秘密です。

事務所によばれて、倉庫にいくとあの美少女戦士の抜け殻が4つおいてあるではありませんか・・・・もうその時点で僕のあそこはテントをはってしまいました・・・ああ・・言い忘れておりましたが僕は着ぐるみフェチでもあって
こういうものには目がないのでございます。

これを誰かが着てでてきたらマジでやばい状態になりますよ~、一人で興奮していると、誰かが僕に声をかけてきました。

安田先輩「よお、なにしてんだ島田?お前、これやりたいとか思ってんの?」

島田「いや~僕なんかが・・・めっそうもないですよ・・・。」

安田先輩「だよな~お前、動けねーもんな、ははは、あーでも、お前でもできるのがあるぞ。」

島田「は?」

安田先輩「あれだ。」

安田先輩の指さす方向には悪の怪人の着ぐるみがあった。

島田「あれですか?」
335名無しさん@着ぐるみすと
安田先輩「そーだよ、幸い誰もやりたがらねーし、どんくせーお前にはぴったりだな。」

島田「は、はぁ・・・。」

皮肉と嫌味たっぷりのこの人は事務所の先輩、口はああだけど彼のレッドは身長も高くアクションのきれも抜群の事務所の期待の星である。そんな彼は少々天狗な部分があるのですが、実力の縦社会のため彼にたてつくものはいません。

間宮先輩「あんな言い方ないよね。」

島田「あ、間宮先輩・・・いいんすよ・・・僕、本当にどんくさいし・・・。」

間宮先輩「あんなのに負けちゃだめよ、できなかったらがんばって見返してやらないと。」

島田「でも・・・。」

間宮先輩「できるって、私は島田くんのこと応援してるよ。」

島田「せ、せんぱーい。」

間宮先輩は女性チームのリーダー、安田先輩は男性チームのリーダーだ、女性チームは今回のような女の子むけアニメのヒロインや戦隊ヒーローのヒロイン役がメインとなる。

間宮先輩「ところで、今日来たってことは島田くんも候補の予定?」

島田「メールきたから、ちょっと興味あって・・・。」

間宮先輩「そっか、女の子ものだし女子チーム主体だけど男子でも例外はあるらしいよ。」

島田「へぇ、そうなんですか。」

間宮先輩「うん、だから島田くんにだってチャンスはあるよ。」

島田「そ、そうですか・・・。」

間宮先輩「うん、だからがんばってね。」

島田「は、はい。」
336HANZOU ◆jEbT2uTnC2
そういうと間宮先輩はかわいく手を振りながら、事務所のほうに行ってしまった。間宮先輩はアクションもダンスも上手い、稽古は男女区別なくやっているので練習中の間宮
先輩のこともよく見ている。間宮先輩は戦隊ヒロインの内臓もよくやっているのだ。

先輩はただ着るだけじゃない、テレビとかよく見てて、ちゃんとテレビのヒロインのように動くので演技も抜群に上手いのだ。

上司に候補の意思を伝えないと参加にはならないのですが・・・これがまた別の意味で緊張するのです・・・しかし、ここまできて引き下がることもできないので思い切って事務所にはいるとそこには候補生がたくさん並んでいた
みんなが一斉に自分のほうを凝視したのは言うまでもなく・・・苦笑いをうかべるものや苦笑するもの安堵の表情をするものなど様々でした。

とりあえず僕は列の最後尾に並んだ、するとしばらくしてもう一人入ってきた、みんなにつられて僕もさっきみんなにされたように誰なのかを確認するため振り向いた、するとそこには同期の金田功(かねだいさお)くんだった。

金田「おー、島田じゃん、お前もやるの?」

島田「そういう金田くんこそ。」

金田「ああ・・まあね・・・最近、仕事なくてさ・・・。」

島田「そうか、金田くんもか・・。でも、金田くんはできるし・・・僕なんか・・・。」

金田「今から弱気なこと言ってたんだよ、そんなんじゃうかんねーぞ。」

島田「そうだね、まだこれからだもんね。」

金田「そうだよ、お互いライバルだから、容赦しねーぞ。」

島田「よろしくね。」

そうこうしている間に自分の番が回ってきた。

上司「次の人。」
337HANZOU ◆7Vumx4mk7A
島田「あ、はい、僕です、島田です。」

上司「おー島田か、お前これやるのか?」

島田「あ、はい。」

上司「そうか~まあ、がんばりなさい。」

島田「はい、ありがとうございます。」

上司「では、明日の3時にもう一度稽古場に来なさい。」

島田「はい、わかりました。」

上司「言っておくが、これはうちでも大プロジェクトだからな、配役試験はぬるくないぞ。」

島田「はい、がんばります。」

上司「うむ。」

手続きを済ませて、その日はそのまま部屋に帰ることになった。部屋に帰ってすぐに美少女戦士のビデオをみたりサイトにあるすでにやっている現場の写真を眺めていた。

島田「とうとううちでもこれやるんだ、稽古はきついかもだけど、とにかくなんかの配役にはつきたいな。」
338HANZOU ◆7Vumx4mk7A
15時 稽古場

上司「さて、今回のショーは昨日も言ったがうちの大プロジェクトだから、気合いいれてほしい。」

すると、一斉に声がする。

他の候補生「はい。」

僕もあわてて声を出しました。

島田「は、は~~い。」

すると周りからクスクス笑い声が聞こえる・・・。

上司「はい、静かに、それではまず最初の課題を出す、ここにいる全員の前でまず一人づつ自己紹介と自分の長所と短所のアピール、特技を披露する。」

島田「ま、まじ・・・?」

いきなり自分がもっとも苦手な試験がでてきてしまった、ただでさえあがり症で人前にでることを極力さけてきたのに・・・え?着ぐるみショーやってんだからできるだろ?いやいや
現ではお面があるからなんとかできたんですよ・・・素のままでやるなんて・・・。

上司「まず、1番誰かいないか?」

するとしばらく沈黙が続くかと思われたが「はい」と誰か挙手をする。

上司「お、間宮か、やってみろ。」

島田「間宮先輩だ・・・さすがだ・・・。」

間宮先輩「1番、間宮里香、女子チーム所属、芸歴5年、長所は明るく元気なとこ、短所はちょっぴりドジなとこです。」

すると賛美にも似た笑いがおこる、彼女もぺろっと舌をだしておどけてみせる。

間宮先輩「特技はダンスとちょっとアクロバットかな。見てください。」

すると稽古場のすみに走っていったかと思うと、そこから走りこんでロンダートからバク転を3回にスワンをきれいにきめて見せた、一同から拍手が巻き起こる。
339HANZOU ◆7Vumx4mk7A
ペコリと礼をして、また閲覧席に戻って行った。

島田「さすがだ・・・間宮先輩・・・。」

あたふたしている暇はない、間宮先輩の勇気にあとおしされてどんどん順番が進んでいくではないか・・・どうしよう・・・まだ自分の言いたいこともまとまってないし・・・僕に特技なんかあったかな・・・。

金田「17番、金田功、男子チーム所属、芸歴は・・・オカマをちょっとだけ。」

するとまたどっと笑いが起こる。

間宮先輩「いいわよ~その調子。」

金田「あざっす、で、長所はちょっとかっこいいとこかな、短所は無鉄砲なとこです。特技は~ああ、空手やってるのでそれ見せます。」

すると、金田はいっきに雰囲気を変えて、演武を披露する、この業界は空手経験者もおおいのにそれでもやる金田の度胸はすごい。

一通り終わってお辞儀をして金田も、こっちに戻ってくる。

金田「ふう~、マジ緊張したわ。」

島田「金田くんすごいよ・・・。」

金田「なにいってんだ、こんなのまだ最初じゃん、ここで躓いてたら先に進めないだろ。」

島田「そうだけど・・・僕にはとても・・・。」

金田「できるって、気合い入れろよ、昨日がんばるって俺に言ったろ。」

島田「うん。」

金田「お前にはお前のよさがあるんだから、できるさ。」

いよいよ、自分の番が回ってきました・・・緊張は最高潮にたってしいる、心臓はかつてないほどの鼓動を打っている・・・どうしよう~。

上司「はい、次。」

金田「お前だろ、がんばれ。」

島田「えーあの。その・・・。」

全員の視線が自分一人に集中する、わかってはいたのだがもう頭が真っ白になる。
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島田「し、島田勇次っていいます・・・男子チーム所属です・・・芸歴は・・・チョイ短め・・・なんちゃって・・・。」

周りはシーンと静まりかえる。

島田「ちょ、長所は・・・正直なとこで・・・短所は・・・あがり症なとこです・・・。」

上司はふぅ~とため息をつきながら下をむきなにかを書いている、金田は頭を抱えている・・・まずい・・・すべった・・・。

島田「と、と、特技は・・・え~っと・・・あの~、歴代美少女戦士の名前とか言えます。」

空気が重くなるのを素で感じられる・・・あきらかにKYのようだ・・・。

上司「はい、島田くん、もういいですよ、さがってください、次の人。」

しょぼくれて、戻ってくる僕に金田が声をかける

金田「あーちょっちまずくね~か、あれ・・・やばいな・・・。」

島田「あ~もういいんだよ金田くん、ありがとう。」

金田「すまん、力になれなくて。」

島田「いいよ~金田くんがあやまることないし・・・僕がいけないんだ。」

すべての候補生の自己紹介が終わったようだ。

上司「みんな御苦労、結果は後日電話連絡するから、それまで待機していてくれ。」

一同「はい。」
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上司「では、本日はこれで解散、明日の現場ある人はちゃんと準備して帰りなさい。」

帰り途、落ち込む僕に金田はやさしく接してくれた。

金田「な~元気だせって、まだわかんねーだろ。」

島田「わかるよ・・・みんなの空気が・・・。」

金田「空気は空気だ関係ねーよ。」

島田「金田くんはいいよ、きっと受かってる。」

金田「んなのわかんねーし、空手なんてやってるときまじ緊張してたわ。」

島田「すごいな~島田くんは・・・。」

金田「元気だせって、おし、お前が元気なるように夕飯は俺がおごってやる。」

島田「いいよ~悪し。」

金田「いいって、あ~でも、ファミレスで勘弁してくれよな。」

島田「ははは。」

金田「お、笑ったな~、その調子だ。」
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訂正↓から6行目島田「すごいな~島田くんは・・・。」×金田でした。


後日・・・

信じられないことに一次試験合格の電話が僕のところにきたのです・・・絶望的だったのに・・・どこをどうとれば合格なのかわかりませんでした。

とりあえず、金田くんに連絡するため携帯をならしてみることにしました。

島田「もしもし、金田くん?」

金田「おう、島田か?なんか用か?」

島田「聞いて、信じられないことに一次試験合格してた。」

金田「おお、マジか、すげーじゃん、おめでとう。」

島田「ありがと、金田くんは?」

金田「ああ、俺もまあ、まぐれで合格みたいだ。」

島田「よかったね、おめでとう、これで二人揃って二次試験だね。」

金田「そうだな、がんばろうな。」

島田「うん、じゃあ、また稽古場でね。」

金田「おう、じゃあな。」

といって、電話を切る。正直まだ現実が受け入れられないでいる自分がいたまだ心臓が速く鼓動している。

島田「よし、よし、よし~やった~。」
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稽古場

上司「さて、ここにいる諸君は幸運と実力で一次試験を突破した者だけだ、今日は二次試験を行う、みな心してかかりなさい。」

一同「はい。」

島田「いよいよ二次試験だね・・・。」

金田「そうだな・・・こんどはどんなのだろう・・・。」

上司「さて、二次試験だが筆記試験となる。」

島田「え?筆記試験?」

上司「うむ、これも大事な選考の材料となるのでがんばってほしい。」

金田「マジかよ・・・。」

上司「今日は特別に廃校の教室を借りてあるから、そこで筆記試験を行う、いまから場所の書いたプリントを渡すので17時までに全員そこに集合、遅れたら即不合格とする。」

学校の住所が書いたプリントを渡される。

上司「以上、質問は?」

候補生「これの点数次第が多い人が合格ですか?」

上司「それもある。」

島田「他にもあるのか・・・。」
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上司「では、解散。」

金田「やばい、けっこう面倒なとこだわここ・・・急がないと間に合わないぞ。」

島田「うん、急ごう。」

さっそく僕と金田くんは最寄りの駅にダッシュした、他の候補生もあとを追うようにやってくる。

学校がある町まで電車で行き、駅からは徒歩なりなんなりで学校に行かなければいけない、時間はどんどん進んでいく。

金田「時間ね~急ぐぞ、島田。」

島田「うん、でもタクシーのほうがいいじゃない?」

金田「ばか、そんなんじゃいけねーよ。」

島田「どうして?」

金田「ここは俺昔いたとこでさ、この学校は俺の母校なんだわ・・・。」

島田「そうなんだ・・・でもどうしてタクシーだめなの?」

金田「タクつかわなくても、俺が近道知ってるし、そっちのほうが早い。」

島田「なるほど。」

金田「感心してないで、いくぞ。」

島田「うん。」
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まったく知らない土地で方向音痴の僕が地図だけわたされてもきっと迷って時間内にたどり着けなかっただろう、こういうとき友達の存在は本当にありがたいと感じる。

金田くんの誘導のおかげで一番に目的地の学校に着いた僕たちは上司に報告した。

島田「島田勇次つきました。」

金田「金田功つきました。」

上司「おお、速いじゃないか、お前たちが一番だ。」

島田「本当ですか?」

上司「うむ。」

島田「やったね、金田くんのおかげだよ、ありがとう。」

金田「いいよ、まだ試験じゃねーし。」

しばらくて、続々と他の候補生も学校にやってくる、そして17時になった。

上司「よーし、ここまで、点呼するから一人づつ声をだして返事しなさい。」

上司は名簿から一人づつ名前を呼ぶ、中には返事がない人もいるきっと間に合わなかったのだろう。

上司「島田勇次。」

島田「あ。はい、島田勇次います。」

上司「うむ、金田功。」

金田「はい、金田功おります。」
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上司「うむ、金田功。」

金田「はい、金田功おります。」

全員の点呼を終える上司は名簿を眺めて

上司「残念ながら、3名脱落した、これは迅速かつ的確に目的地までいく行動力のテストだ、筆記試験はない到着が合格だ、おめでとう。」

島田「は・・・ご、合格・・・・。」

上司「そうだ。」

島田「やった、やったよ、金田くんのおかげだ、ありがとう。」

金田「やったな、俺は当然のことをしてまでで、地元だったのは運がよかっただけさ。」

島田「ううん、金田くんがいなかったら絶対合格なんてできなかったし、本当にありがとう。」

上司「では、本日はこれで解散、試験はあと1つだ気を抜くな。」

一同「はい。」

上司「三次試験は来週土曜日、15時に稽古場にて発表する、1分でも遅れたら即不合格だ。」

一同「はい。」

島田「帰ろうか金田くん。」

金田「ん?ああ・・すまんけど今日は一人で帰ってくれ。」

島田「え?」

金田「偶然だけど、地元に帰ったし、しばらく帰ってないんだわ・・・だから・・・。」

僕はおのずと金田くんの気持ちを察した

島田「あ・・・うん、わかった、じゃあ、先に帰るね、今日は本当にありがとう。」

金田「いいって、気をつけて帰れよ、あ、夜は暗いから近道は通るなよ。」

島田「わかったよ、ありがとう。」

そういって、金田くんと別れ駅に戻ろうとしたが道がまったくわからないので、ちょっと痛いけどタクシーで駅までいった。
347HANZOU ◆7Vumx4mk7A
土曜日 15時前

10分前には僕は稽古場に着いた、金田くんはすでにもう来ているようだ、稽古場のすみでストレッチ運動をしている金田くんを見つけると駆け寄っていった。

島田「おはよう金田くん、こないだはありがとう。」

金田「ん?島田か、ああ、おはよう、いいっていったろ。」

島田「今日は最終試験だね、緊張するよ。」

金田「そうだな~でも、じたばたしても仕方ないしさ。」

島田「そうだね、でも、どうしてストレッチなんかしてるの?」

金田「ああ・・・まあ、いつものことだし。」

そんなことを話しているうちに15時になった、上司がリストを持ってやってきた。

上司「集合。」

全員が上司を囲んで座る。

上司「本日は最終試験である、これに合格すればキャストメンバーとして登録されることになる、現段階で20名候補生がいるが・・・残れるは10名だ、すなわちここにいる半分は残念なことになる。いいか余計な感情は捨てろライバルだとお思え
これは単なるキャスト試験ではない、お前たちの今後にも大きくかかわることになるかもしれんからな。」

一同にざわめきが起こる。当然である自分の将来がかかっているなどといわれては・・・。

上司「最終試験はショーに直結したものである、いまから全員に実際にショーで使われる完パケのセリフがはいったCDを渡す、3時間でその中から自分ができる役を選定して3時間後に全員の前で演技を披露する。これが最終試験だ。」

もっとも難しいと思われる演技試験が最後の試験となってしましった、実際たった3時間で、どれをやるかなど決めるだけでも大変、キャラクターがわかっているのは主人公の4人の少女だけあとはセリフからどんなキャタクターなのをかを想像しなければならないのだ
当然メルヘンは中にダンスが含まれるのでダンスのスキルも問われてくる非常に厳しい試験である。
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もっとも難しいと思われる演技試験が最後の試験となってしましった、実際たった3時間で、どれをやるかなど決めるだけでも大変、キャラクターがわかっているのは主人公の4人の少女だけあとはセリフからどんなキャタクターなのをかを想像しなければならないのだ
当然メルヘンは中にダンスが含まれるのでダンスのスキルも問われてくる非常に厳しい試験である。

島田「やばーーー。」

金田「これ・・・マジか・・・。」

全員に動揺が走る。

上司「今からにCDを10枚渡す、プレイヤーは10台用意した、イヤホンは20、2人ひと組で聞きなさい。」

とりあえず、僕は金田くんとペアを組むことにした。

島田「金田くん、一緒にやろうよ?」

金田「あ、ああ、そうだな。」

イヤホンとプレイヤーをとってきて、CDをセットする。

60分のショーなので聞く時間が60分で実質2時間で仕上げなければならないのだ。

主人公の4人の少女の性格はわかる、見方の存在、敵の特徴をすばやく読み取らなければならない、そもそもどんな役をやるのかで実際にキャストになったときこのときの演技が反映されるのであろうか・・・これはあくまでも選考試験であり実際にキャストになっても同じ役をやりたい人間がいたときに
どちらが適任かを判断するのは演出家や監督などである可能性も高い、よってここであえて難しい主人公を選ぶよりも敵怪人やその他あまり活躍しないキャラを選んで無難に切り抜けるほうが賢い選択なのであろうか・・・いや・・・あちらはそれも
読んで選考基準にしている可能性も捨てきれない、難しいキャラはさけて無難にいこうとする者がでるのはきっと予想されているかもしれない・・・配点されていると考えたら当然、難しい主人公などが高得点なのは必然的である。

金田「おい、島田?おい?」
349HANZOU ◆7Vumx4mk7A
はっと我に帰る

島田「あ・・・金田くん。」

金田「あ、金田くん、じゃねーよ、時間ねーんだぞ、ぼっとしてたらあっという間だ。」

島田「そっか、ごめん、なかなか迷ってて。」

金田「俺はもう決めた。」

島田「え?どれ?」

金田「青い女の子。」

島田「ええ~金田くん女の子に?」

金田「いいだろ・・・別に・・・俺・・・こういう子タイプなんだわ・・・。」

島田「はぁ・・・。」

金田「そういうお前は決めたのかよ?」

島田「いや・・・それがまだ・・・。」

金田「速くきめねーと時間ねーぞ、俺先に練習してっから。」

といって金田くんはメモしたものをもって稽古場のすみでイメージトレーニングに入った。
350HANZOU ◆7Vumx4mk7A
島田「といってもな~、どうすれば・・・本当は僕も女の子してみたいけど・・・ダンスもアクションも苦手だしな~どうしよう~やっぱり怪人にしようかな・・・。」

僕はもともとアクションもダンスも得意なほうではない・・・それなのになぜこんな仕事をしているのかというと着ぐるみがみたいしやりかったからであるが、この仕事、単に着ぐるみ好きが興味半分で続けれるほど甘い世界ではないのだ、僕はそれを身をもって体感していた。

僕のいくじなし・・・ここまできてこんな臆病でどおする・・・でも・・・怪人だって立派な役だし、悪あっての正義でもある、一緒に舞台でがんばれるなら怪人でもいいじゃないかと勝手に理由をつけて怪人のセリフをもう一度聞きなおして動きを想像する、しかも今回はどのキャストにも一様のダンスがあるではないか、これは常日頃ダンスにな力をいれていないとできない
フリとかどうするんだ・・・のこり2時間・・・まずダンスのふりつけを考える・・・曲からアップダウンを考えてひょろひょろ踊ってみる、それを見ていた他の候補生からくすくす笑い声が聞こえるがいまはそんなこと言っていられない状況である。

ダンスを1時間徹底的に練習して、のこり1時間でアクションをつける。

金田「お、やってんな、なにするんだ?」

島田「怪人やろうと思ってる。」

金田「怪人か・・・きっとライバル多いぞ。」

そうか・・・言われてみればそうかもしれない・・・僕と同じ考えでやる男性候補生もきっといる、逆にいえば金田くんの選んだ青の子は少ないかもしれない・・・しまった~でも、もう時すでに遅し・・・あと1時間じゃどうにもならない現実があるので、とにかくこの怪人を練習することにした。

とうとう1時間経ってしまったまだ完全には呑み込めてないままの本番となる。

島田「どう金田くんのほうは?」

金田「ああ・・まあ・・なんとかな・・・人の心配より自分の心配しろよ。」

島田「う・・・うん、そうだね。」
351HANZOU ◆7Vumx4mk7A
上司「時間だ、練習終り、機材を所定の位置にもどしてCDを返してくれ。」

ぞろぞろと移動が始まる。

上司「3時間という短い時間で仕上げることは実際の現場で振付をすばやく身につけ舞台に反映させる適応能力を育てるためのものでもある。さて一人づつ名前とやりたいキャラクターを名乗ってから、実際のこの声に合わせて演技をみんなの前で披露すること。」

全員、動揺が走る・・・。

上司「では、一番、誰かいるか?」

するとすかさず間宮先輩が手を挙げる

上司「お、やはり一番は間宮か、やって見せてくれ。」

間宮先輩「はい、一番、間宮里香、役は怪人です。」

全員がどぎもを抜かれた・・・いままでヒロインだけのかわいい間宮先輩がまさか僕と同じ怪人を選んでくるなんてまったく予想もつかないからだ。

上司「お、めずらしいな間宮が怪人なんて。」

間宮先輩「いけませんか?」

上司「いけないくはないが・・・まあいい、やってみなさい。」

間宮先輩「はい、BGMお願いします。」
352HANZOU ◆7Vumx4mk7A
ショーの序盤から怪人は頻繁にでてくる、かわいい間宮先輩が顔面をかえ、普段のイメージからかけはなれたとても彼女とは思えない演技で全員がその迫真の演技から目をそむけようとはしなかった。ダンスも実にうまくかつ悪びれた様子で踊りくるう様は怪人そのものである。

さすがに30分のを20人でやると長時間になるので一人10分か15分程度で終了となる。

上司「よし、それまでお疲れさん。」

間宮先輩「ありがとうございます。」

間宮先輩は僕のほうにやってきた

間宮先輩「ここ、空いてる?」

島田「え?あ・・・はい。」

間宮先輩はおもむろに僕の隣に腰掛ける

間宮先輩「私が怪人って予想してなかったって感じね。」

島田「え・・・ええ・・・正直びっくりしました、てっきりヒロインだとばかり思ってたので。」

間宮先輩「私さ、もっともーっと役者として引き出し増やしたいのよ、いつかここ辞めて素顔でできる舞台女優になるのが夢でね、そのためにはさ、いーっつも同じ役だと引き出しなんかそんなに増えないし、たまにはこういうのもやることで自分の役者としてのスキルを伸ばしたいと思ってるの。」

島田「そ、そうだったんですか。」

間宮先輩「ところで島田くんはなにするつもり?」
353HANZOU ◆7Vumx4mk7A
島田「え?あ・・・その・・・。」

金田「こいつも怪人だそうですよ。」

島田「え?あ・・・。」

間宮先輩「え~そうなんだ~島田くんも怪人か~ライバルだな~。」

島田「間宮先輩とライバルなんて・・・とんでもないです・・・。」

間宮先輩「だって同じキャラでしょ、意外だったとは思うけど、がんばってね。」

島田「は・・・はあぁ・・・。」

間宮先輩「どうした~元気ないぞ~、自分を信じてがんばれ。」

島田「はい。」

そういうと間宮先輩は控室のほうに帰って行ってしまった。よりにもよって間宮先輩と同じキャラ選んじゃったんだ僕・・・どうしよう~。

金田「まあ、同じこと考えてるやつはお前だけじゃねーよ、見てみな、けっこう怪人多いぞ。」

と、金田くんから言われて見てみると3人1人は怪人である、さすがに女性は間宮先輩をのぞいては全員、ヒロインをやっているようだ。男性は僕と金田くんとあと3人いるのだが、残り3人とも怪人である。

金田「俺のは大穴だったみたいだな、そのぶんプレッシャーでかい。」

とうとう金田くんの出番になった、緊張した面持ちで舞台にあがる金田くん。

金田「金田功、青の子やります。」
354HANZOU ◆7Vumx4mk7A
すると、どよめきが起こる、なんせ男子ではじめて女性ヒロインをやろうというのであるから当然である。

金田くんはダンスも演技も全力で10分間をのりきった、女性らしいというのは少しかけてはいるが彼の勇気には本当にすばらしい、終わったあとも拍手が起こった。

そして、とうとう自分に順番が回ってきた、一次試験のとき動揺に心臓どくどくしている・・・。

金田くんがこっちに戻ってきた

島田「おつかれ金田くん。」

金田「おつかれ・・・マジ緊張したわ・・・。」

島田「全力だしたんだし。」

金田「そうだな、あとは結果まつだけ・・・意外にやったらすぐだし、あの待ってる間の押しつぶされそうな緊張から解放されてせいせいしてるよ。」

島田「なる、僕はもうそろそろだよ。」

金田「そうか、けっこうあっという間だから、がんばれよ。」

上司「次。」

島田「はい。」

急いで舞台に上がる

島田「島田勇次、役は怪人です。」
355HANZOU ◆7Vumx4mk7A
とにかく、3時間でつめたことを10分という短い時間に凝縮してがんばった・・・と思う・・・。

上司「はい、お疲れ様、下がっていいよ。」

島田「はい。ありがとうございます。」

金田「ほい、スポーツ飲料だ、飲めよ。」

島田「ありがと、金田くんの言うとおりあっという間だったよ。」

金田「だろ、まあ、あとはなるようになるさ・・・。」

全員の演技が終わるころにはもう22時を過ぎていた。

上司「はい、これで最終審査は終わり、結果は後日、全員に電話連絡するから、明日の現場の人は準備して帰るように、以上、解散。」
364HANZOU ◆0iyM/DjmvY
3ヶ月後・・・

僕はある劇場にいた、あれからどうなったかというと・・・僕は落選した・・・金田くんは補欠合格ということだけ聞いていて、その後彼とは会っていない、連絡しても電話にもでれないようだ。


ある日事務所から連絡が入った、例の美少女戦士の裏方スタッフがたりないので1日限定でスタッフをやってほしいとのことだ。例のショーって金田くんのいるとこだよね・・・金田くんかもあれから全然連絡ないし、と思っていた矢先彼からメールが届く

「スタッフ募集聞いた?せっかくだしやりにきたらどう?もしかしたら俺とも会えるかもしれないし、待ってるぜ。」

いまや、僕と金田くんは天と地の差、あっちは華やかなショーキャスト、僕は仕事もない・・・久しぶりに金田くんとも会いたいけど・・・彼がどんな着ぐるみに入っているのかも教えてはくれなかった、極秘なのであろう・・・お金も仕事もないのでスタッフ募集に応募してみたら運命のいたずらなのかすんなり通った。

手伝い当日、こんな日に限ってひどく頭痛がする、早朝から準備して始発の電車で会場がある町に移動する、付近の人に詳しい場所をきいて会場につく、機材搬入口はたいてい劇場の裏にあるのがセオリーなので裏のほうに回ってみると案の定、でかいトラックが止まっていた。

島田「すみませーん、今日手伝いの島田です。」

男「おお、待ってたよ、1日だけだけど頼むよ一人風邪で倒れちゃってね。」

すると肩にをたたかれたので後ろを振り返るとそこには金田くんが立っていた。3か月前より痩せている、補欠といえど激しい稽古を積んできたせいなのであろう。

金田「よ?ひさしぶりだな島田。」
365HANZOU ◆LI4cqL.zZY
島田「あ、金田くん、久しぶり~ちょっと痩せた?」

金田「ん?ああ・・・稽古激しいからな、見ての通りさ。」

島田「そっか、がんばってるんだね・・・僕はだめだったけど、金田くんがいればなんか嬉しい。」

金田「そうか、おっとそろそろ仕込みの時間だ、お前、今日手伝いなんだろがんばれよ、機材めっちゃ重いから腰痛めるなよ。」

男「おい、ぼやぼやしてないでさっさと手伝え。」

島田「あ、はーい。」

金田「また後でな。」

と言い残すと金田くんは別の入り口から楽屋に入っていってしまった。

手伝いは想像以上にハードなものだった、でかいアンプをたくさん運び、ステージの絨毯を敷き、幕や仕掛けを用意して1時間弱で準備は整った。

終わりかけたとき、金田くんが僕のところにやってきた。

金田「よ、おつかれ、これからリハなんだけどさ、お前、表でてみる気ない?」

島田「表?」

金田「ああ、ロビーで着ぐるみ着てお客さん出迎えんだよ。」

島田「え?僕が?」
366HANZOU ◆MSUJIAEFes
金田「今日、ロビースタッフ足りてないみたいだし、言えばやらせてくれるかも。」

島田「だけど、今日はそんな着替えとかもってきてないよ・・・。」

金田「俺の予備貸してやるよ、お前、着ぐるみしたいんだろ?」

島田「う・・・うん。」

金田「これは成り上がるチャンスだぞ、ロビーの着ぐるみだって立派な仕事なんだよ。」

といって、金田くんは自分の予備のTシャツとスパッツを貸してくれた。

金田「がんばれよ。」

島田「うん、ありがとう。」

ロビーにでるとスタッフ全員があわただしく準備をしていた、会場は10時、開演は11時、今は9時30分を少し回ったところだ。恐る恐るスタッフに声をかけてみることにした。

島田「あのーすみません。」

スタッフ「は?誰、君?今忙しいんだけど。」

島田「すみません、ロビーで着ぐるみできるって聞いてきた者なんですけど・・・。」

スタッフ「ん?ああ・・・手伝いね・・・時間ないからさっそく着替えてよ、部屋あそこね。」

立ち入り禁止の鎖の奥に扉がある、とりあえずそこに向かった。

扉をあけて、おそるおそる中にはいるとすでに数名のスタッフが着替えている状態だった。全員女性で少し緊張する全員の視線は僕に集中しているようだ。

島田「すみませーん、手伝いで着ることになった者です。」

スタッフ「は?あああ・・・一人ちょうど足りてなかったからね、そこにおいてあるけど、君、やったことあるの?」

島田「は?」

スタッフ「ブツ見てみなよ。」
367HANZOU ◆MSUJIAEFes
島田「すみませーん、手伝いで着ることになった者です。」

スタッフ「は?あああ・・・一人ちょうど足りてなかったからね、そこにおいてあるけど、君、やったことあるの?」

島田「は?」

スタッフ「ブツ見てみなよ。」

と言われて、ブツをみるとなんと前年の美少女戦士ではないか。」

島田「こ、これは。」

スタッフ「しかも、男だし・・・、どうする?」

するとドアが相手、女性が入ってくる

女性「すみませーん、遅れました。」

嫌な予感がする・・・。

スタッフ「あ、ミキちゃん、遅いよーあと少し遅かったらこの男性にやってもらうとこだったんだわ、来てくれてよかった、ってことで、あなたはもういいです。」

島田「あ・・・はい・・・すみませんでした・・・失礼します。」

と、こそこそ逃げるように更衣室から退散した・・・くそ~あとちょっとだったのに・・・。
368HANZOU ◆MSUJIAEFes
ロビーの邪魔にならない椅子に座ってただぼーっとロビーを眺める、50分くらいになってさっきの着ぐるみがロビーにでてきたどれもキャピキャピ動いて実にかわいい、本当なら僕もあの中に入っていたかもしれないのに・・・。

手伝いは仕込みとばらしのときだけ、あとはショーは後ろの席ではあるが自由に見てもいいことになっている、ただし楽屋は立ち入り禁止のようだ。

島田「あーあ、とりあえず金田くんに着ぐるみできなかったことをメールしておくか。」

開演時間になりロビーから客はいなくなり、出迎えていた着ぐるみも更衣室に消えていった、僕は劇場の上の入り口から二階席の上のほう、一番とおくて見えにくい場所になるわけだけが仕方ない。

ブザーとともに客席の照明が落ちる、開演前の注意事項のアナウンスが流れて、いよいよ会場である、大きな赤い幕がさらさらと左右に開いていく、最初は悪の怪人がでてきて行動目的なのど説明する、そのあと変身前の少女たちの人間ドラマがあり
20分を経過したところで怪人と対決する、一度は怪人にはねのけられてダウンしてしまう美少女戦士たちだが客席の子供たちの応援で再び立ち上がり一発逆転の必殺技で怪人を倒すのだ。

ショーの中ではダンスもあり、アクション、アクロバットもある主人公の女の子たちも華麗に立ち回り飛んだり跳ねたりして実にかわいらしい動きなのだ。

ショーは1日2回行われる、客の入れ替えのタイミングでまた着ぐるみが出迎える、僕はそれをただ見ていることだけしかできなかった。

缶コーヒーでもと思い売店にいくとそこには間宮先輩が上下スエット姿で買い物をしているではないか、あっちもこっちの気配に気づく。

間宮先輩「あ、島田くんじゃない、久しぶり~。」

島田「お久しぶりです。」

間宮先輩「ちょっと、そこで話そうよ。」

島田「はい。」
369HANZOU ◆MSUJIAEFes
誰もいない奥の椅子に座る、隣には間宮先輩が座る。

間宮先輩「はい、これ私のおごりね。」

と、ジュースを貰う。

島田「あ、ありがとうございます。」

間宮先輩「落ちちゃったんだよね・・・。」

島田「ええ。」

間宮先輩「厳しいようだけど、これがこの世界の現実だし・・・。」

島田「わかってますよ。」

間宮先輩「そっか、今日はショー見に来てくれたの?」

島田「いや、搬入とかの手伝いで今日限定で雇われただけです。」

間宮先輩「そっか、お友達、金田くんだっけ?」

島田「はい。」

間宮先輩「彼、がんばってるよ。」

島田「そうですか。」

間宮先輩「興味ないの?」

島田「そんなことないですけど、ちょっとうらやましいなって思うし、僕も最終試験までいってたのに落ちて・・・なんだか心にポッカリ穴が空いたみたいで・・・。」

間宮先輩「そっか、悔しいのはわかるけどそれは島田くんだけじゃないし、でもさ、お友達の金田くんはいつもなにかあったら島田くんのこと話すよ。」

島田「え?そうなんですか?」
370HANZOU ◆MSUJIAEFes
間宮先輩「興味ないの?」

島田「そんなことないですけど、ちょっとうらやましいなって思うし、僕も最終試験までいってたのに落ちて・・・なんだか心にポッカリ穴が空いたみたいで・・・。」

間宮先輩「そっか、悔しいのはわかるけどそれは島田くんだけじゃないし、でもさ、お友達の金田くんはいつもなにかあったら島田くんのこと話すよ。」

島田「え?そうなんですか?」

間宮先輩「うん、聞いてても面白いしさ二人は友情で結ばれてるんだなって思う、うらやましいな~。」

島田「どうしてそう思うんですか?」

間宮先輩「華やかな仕事ではあるけどさ、ライバルばっかりじゃない、金田くんは役についても常に島田くんのことを考えてるわ。特に女性はそういうのドロドロしててさ、陰口やいじめとか当たり前でね、私もこの仕事ついたときも散々やられてね、何度も辞めようと思ったわ。」

島田「そうなんですか・・・。」

間宮先輩「うん、でもそのときのくやしさがあったからここまでやってこれた自分がいるってわかった、諦めないでやり続けてきたの。」

島田「うーん・・。」

間宮先輩「だから、島田くんもまだこの仕事辞めてないんだったら、諦めないで続けてみてよ。」

島田「は・・・はぁ・・・。」

間宮先輩「きっといいことあるって、あ・・もうリハの時間だ、ごめんね、またね。」

といって間宮先輩は楽屋に帰ってしまった、彼がどんな役で自分の役すら明かすこともないままである。
371HANZOU ◆MSUJIAEFes
島田「諦めないでがんばれ・・・か・・・。」

一人でさめきった缶コーヒーを持って冷たいロビーをいつまでも眺めていた。頭がぼーっとしてきて一瞬意識を失いかけていたのだ・・・。

そこに、ロビースタッフが入ってくる。

スタッフ「ああ・・・いたいた、君さ悪いんだけど急遽、着ぐるみ入ってくれる?」

島田「は?」

スタッフ「遅れてきた子いたでしょ、彼女、風邪押してきたみたいで、さっきぶり返して倒れちゃって、一人病院いったんだよ、さっきはきついこと言ってごめんなさい、でも今はあなたの力が必要だからよかったら力かしてほしいの。」

島田「でも・・・。」

スタッフ「あなた、それでも男なの?やるかやらないかはっきりして。」

ここまで言われて黙っているのもしゃくなので。

島田「やります、やらせてください。」

スタッフ「わかったわ、トイレで動けるの衣装に着替えて、あっちじゃ服脱ぐだけにしてね、女の子だけだから。」

島田「わかりました。」

スタッフ「じゃあ、待ってるから。」

といってスタッフは走り去ってしまった。なにがなんだかわからないけど、これは千載一遇のチャンスなのは間違いないので早速トイレの個室で金田くんから借りたTシャツとスパッツにはきかえてその上から自分のジーンズとトレーナーを着る。

更衣室に入るとさっきのスタッフが待ち構えていた。
372HANZOU ◆MSUJIAEFes
スタッフ「もう時間ないから、さっさと着替えて・・・あ・・・まって、ブラつけて・・・一応女の子だしさ・・・ほら、なに興奮してんのよ・・・普通だったらセクハラだわ。」

僕の股間の息子は無意識にテントを張っていたのだ・・・しまった~恥ずかしいとこを見られてしまった。反射的に両手で股間を覆い隠す。

スタッフ「いいから、とにかく上脱いでよ。」

島田「あ・・・はい。」

Tシャツとスパッツだけになった。

スタッフ「とりあえずさ、前の子がつけてたもんだけど我慢してよ、ブラつけるから後ろむいて。」

と、言われるままに背中を彼女のほうにむけた、大きいブラが自分の胸にまとわりつく後ろホックを閉めてくれる。

スタッフ「これで上はよしと、まあ、そんなに太ってないしいいんじゃないかしら・・・問題は元気なあそこね・・・。」

顔は赤くなりもうどうしようもなくなるが、彼女はそんなの平気な様子である。

スタッフ「仕方ない・・・ガムテ持ってきて。」

と他のスタッフに指示をだすと、ガムテが用意されたと思うと彼女はびりびりっとガムテをのばして強制的に僕の股間あたりにぐるぐる巻きつけはじめた。

島田「うわ・・・なにを?」

スタッフ「こんな元気なものぶらさげて女の子ででるわけないでしょ、ちょっと苦しいかもだけど我慢しなさい。」

とりあえず目立たない程度には隠れたが、血はまだ息子にいっているのでもう苦しいのなんのって・・・。
373HANZOU ◆MSUJIAEFes
スタッフ「ほら、ぼやぼやしてないでこれ着なさい。」

それは肌タイツといういわゆる人形の皮膚にあたるものである、背中のチャックから足を入れて、腰、胸、腕と通していく、前任者の汗もあるせいか湿っていてなかなか入らない。

それでもようやく首までかぶって、後ろのファスナをあげてもらう、この時点でも息子は破裂しそうなくらいであった。

スタッフ「衣装着て、女性サイズだしはいらないとこはちょっとなら調整きくから。」

といわれて紫色のドレスを渡されるバックファスナなので後ろから入るやはり若干ウエストがきついがぎりぎり入った。ファスナをあげてもらい専用のソックスとブーツをはく、ブーツの底にはまだ前任者のぬくもりもあるが汗ものこっていて肌タイツを通して冷たさが全身を駆け巡る。

手袋をつけるまえに中間に軍手をはめる、その上から専用の手袋をはめることになる。

顔はぽっかり穴があいてそこから僕の顔の一部が見えているだけで、あとはまぎれもなくあの美少女キャラクターなのだ・・・息子は興奮状態を維持しつづけている。

スタッフ「いい、出たら入り口に横一列に並ぶ、赤、桃、青、紫の順番よ、子供が入ってきたらちゃんとかがんで手を握ってあげること中腰できついけどこれは常識なの、たった30分だけど子供は夢みにきてるんだからそれを迎える立場としてしっかり仕事すること、大きいお友達もいるけど
彼らは私らみたいな着ぐるみ目当てとアニメ好きがいるわ、彼らにも真摯に対応して下手にあしらうとあとでネットにさらされるかもしれないし、事務所にも影響でちゃうからね。」


いままで知らなかったが、こちらの関係者もそこまで考えて行動しているには正直驚かされた。

スタッフ「いい、特にあんたよあんた、一人だけ男なんだから、常に女性らしい振る舞いしてよ、前任者が女の子だったし、イメージ壊すような動きしないで、とくに大きいお友達はそういう変化にはかなりうるさいから。」

ドアの向こうで係員が声をかける
374HANZOU ◆MSUJIAEFes
係員「まもなく会場です、着ぐるみさんは準備してください。」

スタッフ「さ、お面かぶって、速く。」

言われるままに、僕は紫の女の子のお面をかぶる、非常にコンパクトな設計になっておりマジテで固定すると顔に密着してしまうほどであった。

そのまま、着ぐるみたちはドアをあけて飛び出していった、あわてて僕もあとを追って走っていく。

指示どおり玄関に横一列に整列している、青の子がかわいくこっちにおいでと手招きしてくれるので隣にならんだ、すでにマスクで息をするのにも非常に困難な状態になっている。

すぐに会場の扉が開放され、待っていたお客さんがどっとロビーに流れ込んでくる、親が入場手続きをすませている間に子供は戦士たちの着ぐるみに夢中である、僕もとにかくしゃがんだり立ったりして握手などをして対応にあたった。

するとしばらくして大きいお友達が2、3人入ってきた、カメラをもってこっちによってくる、しばらく写真撮影などをしてるようだがなにやら集まって話こみだした。

男A「ん~1ステのときと、紫ちゃんが対応違うなり。」

男B「なんか雰囲気変わったような・・・。」

男C「気のせいか背が高いような・・・さっき並んだときは僕より小さかったはず・・・。」

いきなり核心をつかれてしまい、動揺が走る・・・。

デジカメの画像を見返しているのかこっちをチラチラみながらひそひそ話しているようだ・・・。

すると、スカートを誰かが引っ張っていることに気づく、女の子がスカートをくいくい引っ張って自分のほうに感心をもってほしそうだ。

島田心の声(あ・・・いけないいけない・・・あいつらより今はこの子供だちが大事だし)
375HANZOU ◆MSUJIAEFes
男A「やっぱりさっきと入ってる人違うなりね~。」

男B「うんうん、なんかよそよそしいよね~。」

男C「僕の予想だと、1ステ目は確実に女の子だったはず、でもいまはちょっと男くさい・・。」

島田心の声(ぐ・・・するどい・・・)

男B「あれ~なんだか動揺してるように見えるけど・・・まさか、本当に中身男なんじゃないのかな~。」

男C「え~まじで~ありえね~。」

男A「写真とってネットで晒すなりね~。」

すると3人がカメラでばしゃばや僕のほうだけを激写してきた。

島田心の声(うわ~~~やめてくれ~~~)





島田「やめてくれ~~~。」

スタッフ「お~~~い」

島田「は?」
376HANZOU ◆MSUJIAEFes
島田「え?あれ・・・あの男たちは?」

スタッフ「は?男たち?そんなのいるはずないでしょ・・・まったく、あんたここでずっと寝てたみたいだし・・・。」

島田「え?ゆ、夢?」

周りを見渡すと間宮先輩と別れた奥の長椅子のところであった、頭痛と風邪のせいで意識を失いしばらく寝ていたようだ・・・。

スタッフ「あんたさ、ばらし手伝いに来たんでしょ?」

島田「あ・・・い、今何時ですか?」

スタッフ「16時だけど。」

島田「あああ・・・やっべっぇ~~。」

急いで出ようとする。

スタッフ「残念だけど、ばらしとっくに終わってるよ。」

島田「あっちゃー・・・やばい・・・。」

スタッフ「まったく・・・ああ・・・そういえば、キャストの金田って人が島田くんをみたらあとでステージに来てほしいっていってたけど。」

島田「え?金田くんが・・・。」

スタッフ「うん、まだいるかな・・・。」
377HANZOU ◆MSUJIAEFes
僕は荷物を抱えてステージのほうに走っていった、重たいドアをあけ客席に入るとなんと美少女戦士4人がリハーサルをしているようだ。

観客は僕一人、なんかすごい贅沢な感じがする。あの4人の美少女着ぐるみのどれかに金田くんが入っているのであろうか・・・そう考えると羨ましいと思うし、嫉妬心も湧きあがってくる。
僕は戦いに敗れた、彼は自分の実力と運であの地位にのぼりつめた、憧れの美少女の体と顔を手にいれてあの舞台で華麗に踊り戦うことができるのだ。

さっきのこと、夢だったんだ・・・夢の中で僕はやはり潜在的に憧れでもあった美少女戦士になれたんだって・・・無理やり納得させるしかなかった、現実は甘くない。


しばらく客席の目立たないとこで、リハーサルを見物していた。アクションもダンスもうまくそしてかわいい、金田くんはあの中にいるのだろうか・・・、うとうとしかけていたら誰かに肩をゆすられた
寝ぼけ眼で上をみると青の女の子が僕の目の前に立っているではないか。

島田「わ、びっくりした・・・、も、もしかして金田くん?」

青の女の子はこくりと首を縦に振る。

キャラの性格としてはちょっとクールな女の子の設定である、激しいトレーニングのせいかスリムになっている腹まわり、出来上がって間もないであろう新品のマスク、瞳はクリアパーツなのであろうか
そこから中の表情はうかがい知ることはできない。

島田「か、かわいい。」

すると恥ずかしそうに照れているようだ。

島田「いや・・本当にかわいいよ、いいな~。」


しばらく眺めてしまった、しばしの沈黙が続く・・・。
378HANZOU ◆MSUJIAEFes
島田「ひとつ、お願い聞いてもらっていいかな?」

青い子はこくりとうなづいた。

島田「ハグっていうのかな、抱いてみたいんだけど・・・。」

すると、青い子は少し驚いたようなアクションをとったあとに、少し笑ったように見えた、そのあとに両手をだしてどうぞといわんばかりのアクションをとる。

島田「いいの?やった。」

椅子から立ち上がって、青の子に抱きついてみる、もう中身がどうのこのどうでもいいのだ、ただそこに憧れの子がいて、抱きつけた喜びに満ち満ちていた。

しばらく抱き合ったあとに、青の子はついてこいというようなしぐさをとって僕をどこかに誘いだしているようだ、そのまま舞台袖のドアをあけて中に入っていくことになった。

舞台の隅にはなんと、主役の桃色の子と黄色の子のお面と衣装があるではないか。

島田「あ、あれは・・・。」

青の子は静かにというように人差し指を口もとにもってくる。

島田「ご、ごめん、だけど、こんなとこに僕をつれてきてどうするつもり?」

青の子は置き去りにしている着ぐるみを指さしている。
379HANZOU ◆MSUJIAEFes
島田「え?あれがどうしたって?」

青の子は自分と着ぐるみの間を何回も指をうごかしている、もしかしてこれを着てみろということなのか・・・。

島田「も、もしかして、僕にこれ着てみろってこと?」

青の子はうなづく。

島田「だ、だめだよ・・・そんな・・・、もし誰かに見られてた・・・。」

といいつつも、自分の股間は爆発しそうだった、本心では着たい思ってるけど、さすがに・・・。

するといきなり青の子が近寄って自分の下半身に手を触れてきたではないか。

島田「お、だ、なにしてるの・・・。」

どうやら、青の子は僕の本心を見抜いていて、体も反応しているということを実際に触ってわかっているといいたいようだ。

島田「う・・・で、でも・・・。」

青の子は、桃色の子の頭を僕の手に渡した、これをやれというのだろうか。

しかし、もうこんなチャンス2度とないかもしれない・・・見つかったらあとの祭りだ・・・僕はふっきれた。

島田「わかったよ。」
380HANZOU ◆MSUJIAEFes
急いで、着衣を脱いで、トランクスだけになった。

島田「あ・・でもタイツないや・・・。」

青の子はポンと両手をたたき、そこらへんをさぐると肌タイツをもってきた。

まだ、さっきまで使用されていたのか生温かい体温と汗を感じる。

島田「こ、これ着るの?」

青の子はうなづく。

これはさっきまで、この桃色の子に入っていた女性が肌に着用していたものである。

背中のファスナを開いて足から中に入れていく、汗がまだ残っているのでなかなか通らない、やっと全身をタイツに押し込める、サイズは女性のためかなりきつきつである。

後ろのファスナは青の子があげてくれた。

その上から衣装を羽織って、手袋とブーツをはめるブーツにはまだ汗があり湿っている靴下が濡れるのがわかった。

頭以外は桃色の女の子になっている・・・もう下半身の興奮は爆発寸前だった。
381HANZOU ◆MSUJIAEFes
最後に桃色の女の子の頭を自分の頭部にはめることになった、案外コンパクト設計なのか顔に密着しているこのお面もさっきまでアクトレスがかぶって演技をしていたのだ。

留め具をして顔にお面を固定させる、目の部分のクリアパーツは視界もよくこれならアクションもしやすいと感じた。

舞台袖にちょうど鏡がおいてあるのでそこで全身を確認することができた。

鏡にはまさにあのさっきまで舞台でおどっていた桃色の女の子が立っている、自分が右腕を動かせば鏡の中の子も腕を上げる、足をうごかすとあっちも動く、しばらくその姿に
見とれていた。

すると青の子が抱きついてきた、周りからは女の子同士が抱き合っているように見えているのだろうか。

すると、人の声がしてこっちに向かってきているようだ。

間宮先輩と他の女性アクトレスさんのようだ、この状況はかなりまずいどうすべきか・・・。

間宮先輩「あら、どうしてそこに桃色の子がいるの?」

青の子もしまったという感じでいる。

女性「なにしてんの、ちょっと。」

間宮先輩「どういうこと?お面とりなさい。」
382HANZOU ◆MSUJIAEFes
少し後ろにあとづさりしたが、誰かにぶつかって後ろに転んでしまった。

目の前にはあの怖い安田先輩が立っていた。

安田先輩は自分の胸倉を衣装ごともちあげた

安田先輩「おい、なにしてんだこの変態ヤローが、顔みせろや。」

留め具をはずされ強制的にお面が自分の顔からはがされてしまい、間宮先輩、安田先輩の前に自分の顔を晒しだされてしまった。

間宮先輩「し、島田くん?」

安田先輩「おい、島田、てめーなにしてっかわかってんのか、え?」

島田「ご、ごめんなさい。」

安田先輩「ごめんですんだら、警察はいらねーんだよ。」

間宮先輩「どういうこと?」

島田「そ、それは・・・。」

安田先輩「どうもこうもねーよ、ざけんな島田、お前とんでもねーことしてるってわかってんのか?」

間宮先輩「それに、どうやってここまできたの?」
383HANZOU ◆MSUJIAEFes
「待ちなさい」

と、どこからともなく男の声がきこえる。

間宮先輩「あ、鮫島副主任。」

鮫島「安田、いいから島田を降ろせ。」

安田「あ。はい、ほらよ。」

間宮先輩「これは一体どういうことですか鮫島副主任。」

鮫島「島田くんは前々から興味あったのは知ってるんだ、だから金田に頼んでここまで連れてきてもらった。」

安田「そうだったんですが。」

鮫島「ちょっと強引なやり方だったがな。」

間宮先輩「だけど、私の桃色着せるなんて・・・。」

島田「え?これって間宮先輩の・・。」

言われてみると、いつも間宮先輩の髪からただよういいにおいのシャンプーの香りが自分の肌からもほんの少しにおっている。
384HANZOU ◆MSUJIAEFes
間宮先輩「だけど・・・なにも私のを・・・う・・・。」

と、普段強気で明るい間宮先輩の目に涙があふれてくる。

安田先輩「でも、てめーは許せねーな、ふざけんな。」

もう一度、むなぐらをつかまれたかと思うと渾身のパンチが飛んできた。

そのまま数Mほど後ろに飛ばされた、口から血がでてくる・・・痛い・・・。

鮫島「安田・・やめろ。」

安田「間宮を泣かせるこいつはゆるせねー。」

さらに追い打ちをかけようとする安田の背中をもつ間宮

間宮先輩「いいから・・・私が弱かっただけ・・・だから殴ったりしないで。」

安田先輩「で・・・でもよ・・・。」

間宮先輩「いいのよ・・・もう・・・鮫島さんが決めたことなんだし。」
385HANZOU ◆MSUJIAEFes
鮫島「どんな理由であれ暴力はよくないぞ安田、拳は人を守るためのものだ。」

安田先輩「はい・・すみませんでした。」

鮫島「この責任は俺がもつ、とにかくみんな一度楽屋に戻ってくれ、俺は彼らに話がある。」

間宮先輩たちはそのまま、楽屋に帰っていった、その場に残ったのは僕と鮫島さん、そして青い女の子だけだ、気まづい沈黙のあと鮫島がこっちきた。

鮫島「大丈夫か?痛かっただろ。」

ハンカチを僕に渡す、それを借りて血を拭った。

島田「いえ・・・これも自分がいけないんです。」

鮫島「あいつに指示だして、ここまでこさせたのは俺だ、責任は俺がもつ、お前前からこのショーキャストやりたいって金田から聞いてた、俺は今回のショーの舞台監督だ
お前さえよければチョイ役だがやれる枠はあるぞ、どうだやるか?」

島田「え?ほ、本当ですか?」

鮫島「冗談でここまでやらないだろ、お前がここまで案内でもやってきて自分で決めてこの着ぐるみまで着たんだ、そうだろ?」

島田「は・・・はい。」
386HANZOU ◆MSUJIAEFes
鮫島「だめ思うなら、ここまではやらんさ、どっかでブレーキかかってやめている。」
島田「鮫島さん・・・。」
鮫島「さあ、ここで決めろ、やるかやらないか。」
僕は金田のほうを見ようとしたが、鮫島さんが顔を手で押さえつける。
鮫島「誰かに頼るな、お前の意思で決めるんだ。」
島田「やります。」
鮫島「強制じゃないぞ、いっておくが稽古はあまくない、やる気ない思ったら途中でもきるぞ、それでもやるか?」
島田「はい。」
鮫島「よし、その言葉しかと聞いたぞ、男に二言はないな。」
島田「はい。」
鮫島「じゃあ、明日から稽古だ、ああ・・まずその衣装は脱げ、間宮に洗って謝って返しなさい。」
島田「あ・・・はい。」

こうして、僕は念願のショーキャスト(補欠)になれた・・・これからどんな事が待ち受けていようともくじけないでやっていこうと思う。

おしまい
387HANZOU ◆MSUJIAEFes
最後まで読んでいただきありがとうございます。

乱文雑文で読みにくい個所があったことをお詫びもうしあげます。