展示品の秘密(仮)

状態
完結
文字数
1,603
投稿数
5
他の形式
Plain Text
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729名無しさん@着ぐるみすと
すみません。
妄想をたくましくしてたら一本できちゃったんで投稿します。
730名無しさん@着ぐるみすと
「ううっ、きっついなぁ……」
彼女はマスクの中でつぶやいた。
もう何時間も同じ姿勢で座ったままだ。身体をあまり動かさないようにと言われているのだが、ついモゾモゾと身体を動かしてしまう。

彼女が演じているのは豪華な衣装に身を包んだお姫さま。
厚い生地を何重にも重ねた衣装は見た目は華やかで非常に美しいが、重くて暑くて、着ぐるみの衣装としては最悪のものだった。
一方、マスクはキャラショーで使われるようなアニメ風のデザインではなく、色白で細面の小ぶりなマスクで、とても上品な女性の顔立ちをしている。
朝、衣装を身につけ、マスクをかぶって鏡の前に立った時には、その凛とした美しいたたずまいに、彼女は、まるで自分が本当にお姫さまになったような気がしたものだ。

階段状に組み上げられ、赤い毛氈が敷かれた特設ステージの最上段に、彼女はもう一体の着ぐるみと並んで座っている。
彼女はお客さんからは正座をしているように見えるが、実際には衣装で隠れる足元が掘りごたつのように足を下ろせる構造になっており、背もたれもついていて、椅子に腰掛けるような格好で座っている。
だが、それでも長時間座りつづけているのはかなりつらいものだ。

彼女のマスクに開けられた狭い視界からは、すぐ下の段に並んでいる女性キャラの着ぐるみたちの後ろ姿が見える。そこには三体の女性着ぐるみが、これまた見た目は豪華だが重くて暑そうな衣装に身を包んで並んでいる。
さらにその下の段にも、上の三体とは異なる衣装に身を包んだ着ぐるみたちが並んでいるのが見える。
731名無しさん@着ぐるみすと
彼女のすぐ下の段に並んだ三体のうち、真ん中の着ぐるみは座り、両側の着ぐるみは立っている。
立っている着ぐるみも、お客さんからは見えないように下から伸ばした棒で体重を支える仕組みになっているが、それでもずっと立ちっぱなしでいるのはかなりきついはずだ。
三体を後ろからじっと見ていると、お客さんには気づかれない程度に、時々モゾモゾと身体を動かすのがわかる。
三体の中にいる人たちも相当つらい思いをしているのだろう。

彼女は、三体のうちの一体に男性が入っていることを知っていた。朝、着ぐるみに入る前に顔を合わせていたのだ。
でも、いったん着ぐるみに入ってしまうと、どの着ぐるみに男性が入っているのか、外見からは全く分からなかった。
あの男性はどの子に入ってるんだろう? 今、どんな気持ちで女性キャラの着ぐるみの中に入っているんだろう?
そんなことを考えると、彼女は着ぐるみを着てじっと座り続けながらも、少しは気をまぎらわせることができた。

彼女はイベント会場の向かいの柱に掛かっている時計に目を向けた。6時を少し回ったところだ。閉店までまだ2時間近くある。
彼女はマスクの中でゆっくりと深呼吸し、自分が演じるお姫さまの役に再び意識を集中することにした。



ここはあるデパート一階の吹き抜けになったイベントスペース。三月三日のひな祭り特別企画として、等身大ひな飾りの展示が行われている。
イベントスペース中央には巨大なひな壇が設けられていた。そして、お内裏さまにおひなさま、三人官女に五人囃子……。
壇上には豪華な平安風の装束に身を包んだ人形たちがずらりと並び、デパートを訪れた人々の目を楽しませていた。

<終わり>
732729
以上です。
お邪魔しました。
736729
コメントありがとうございます。

>>733
もしもひな人形が着ぐるみだったら……って妄想しただけで
現実性とかはあまり考えませんでした。

>>734
動かない方がひな人形っぽいと思ったんですけど
確かに、動かないとデパート側としては着ぐるみにする意味ありませんね。
座ったままでも、せめて上半身は動かすことにして
「ひな祭り特別企画 動く等身大ひな飾り」にしたら面白そうですね。

>>735
他にも書いている方がいましたか。
どこにあるんでしょうか。
そっちも読んでみたいです。