抱きしめられたい気持ち(仮)

状態
未完結
文字数
2,660
投稿数
6
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Plain Text
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991名無しさん@着ぐるみすと
沙織はアルバイトに行くため、自転車をこいで駅へ向かっていた。
その道中、学生のときに想いを寄せていた彼に偶然出会った。
不景気でなかなか定職に就けず、自分と同じアルバイト生活だという。
もう少し話をしたかったが、アルバイトの時間が迫っていたので、慌ててその場を後にした、連絡先も交換できずに。
この話はこの二人の出会いから始まる。
昼前に沙織はバイト先に着いた。
まだ、暑さの残る秋ぐち、これから沙織のもっと暑いバイトが始まる。
それは着ぐるみイベント、そしてそれは巨大ヒーローもの。
もともとは、ヒロイン役でそれほど出番もなかったのだが、今年の異常な暑さでヒーロー役の男性がダウンしてしまってからは、状況が変わってしまった。
他のスタッフは太っていて怪獣担当ばかりで、細いのが沙織しかいなかったためにこうなってしまった。
そのため毎日あの大変な着ぐるみのスーツを着ることに。
それは、ウエットスーツの素材でできていて、沙織の頭の先から足の先まですべて覆ってしまう。
ピッタリしていて、着るのも脱ぐのも難しい。
それも沙織の身体に合わせた特注だからである。
始めダウンした男性のものを使用する予定だったが、身長は近いものの沙織が細いためブカブカだった。
代わりの男性の募集もしたが、なかなか長続きするものはいなかった。
そのため、沙織がヒーローとヒロインの両方をすることに。
とはいっても、主にヒーローだったが・・・。
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今日もヒーローのスーツを着る、中は水着を着ている。
大量の汗で濡れるためTシャツだと動きにくくなってくるのだ。
それとヒーローなので胸があってはおかしい。
そのためパットの入っている水着ではなく、競泳水着を着用している。
ヒーロースーツに片足ずつ通して着ていく、腰辺りまで着たときには、かなりの汗と体力を消耗している。
そしてここからがもっと大変である。
腕を通すのにも苦労し、そして最後に頭の部分。
視界は小さな穴、呼吸は口の部分がスリット状になっていて外の空気を吸うように呼吸する。
そのため、うまく口を合わせないと呼吸困難に陥る。
そして、最後に背中のファスナーを閉めてもらうが、一度閉められると自分では開けることができない。
それにピッタリに造られているので、身体全体締め付けられていく。
でも、沙織はその感覚が嫌いではなかった。
それにヒーロースーツの厚みこそあるものの外から触れられている感じも敏感に伝わってくる、沙織は自分の感じ易い部分を触って、密かに楽しんでいた。
ただ、身体は細いが胸が豊かな沙織にとっては、胸が潰された状態が続くのはつらかった。
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そんなヒーローを続けていたある日、事件が起こった。
怪獣と闘っていて倒されたときにファスナーが壊れてしまったのだ。
1日2回公演の1回目のステージで。
そのため、沙織は2回目の公演までヒーロースーツの中に閉じ込められたまま、次の公演時間を待つことに。
窮屈なスーツに閉じ込められ泣きそうになりながらも我慢した。
スタッフも必死に暑くならないように外から冷やしてくれていた。
2回目の公演も無事に終えて、ファスナーを壊して、ようやく解放された沙織は長い間風呂に入ったようにのぼせ、手の平はふやけていた。
しかし、次回からヒーロースーツが使えないため、しばらくバイトも休みになった。
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それから、数日後連絡が入った。
行ってみると、新しいヒーロースーツがそこに、がしかしサイズが大きいような。
そして社員さんから、新しくヒーローの着ぐるみを担当になるバイトを紹介された。
それは沙織が想いを寄せていた彼、慎也だった。
沙織も驚いたが、慎也の方はもっと驚いているようだった。
沙織は学生時代、体操をしていたが、人前に出ると緊張して結果を残せていなかった。
それに教室でもおとなしく、どちらかといえば目立たない存在だった。
そんな沙織がこのバイトを選んだのは、顔を見られなければ、周りを気にせず、緊張もしないのではないかと思ったからである。
あの閉じ込め事件前から、沙織への負担が大きすぎるということで、面接が行われ、準備はされていたのだ。
それで閉じ込め事件から比較的早くスーツができ仕事が再開となったのだ。
沙織は顔が見えなくても慎也と一緒にできるのは嬉しい反面、慎也といることで緊張するのではと、不安だった。
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沙織は慎也の試着を手伝うことに。
出来立てのヒーロースーツを着るのを横でヒロインのスーツを着ながら、時に手伝いながら教えた。
背も高く、たくましい体型の慎也はヒーロースーツを着るとすごく格好よく、抱き着きたくなった。
みとれていると、慎也がマスクの中で何かいっている。
よく聞こえないので近づき聞いてみると「君も着てみて」と。
沙織は腰くらいまでしか着ていなかった。
彼のお願いなので、今度は逆に手伝ってもらいながらヒロインスーツを着る。
休みの間に少し太ったかもしれない、以前よりピッタリしている。
胸もはちきれそうである。
無理やりといった感じで、ヒロインスーツに身体を押し込みファスナーをあげてもらう。
以前よりも少し窮屈さを感じながらも、その窮屈さを楽しむ沙織だった。
自分だけの世界に浸っている沙織に、声にならない声で慎也がなにかいっている。
二人ともマスクを被ってしまうと、相手の声はほとんど聞こえない。
こんなときは自分のマスクを相手のマスクに接触させると、振動で相手の声が伝わる。
慎也は「すごく格好いいよ」いってくれた。
慎也に褒められて照れている沙織に慎也は突然抱き着いた。
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沙織はビックリして、動くことができなかった。
慎也の温もりが伝わってくる。
そして、ドキドキも。
いや、自分のドキドキか、突然のことで頭が混乱している。
抱き合っていた時間は実際には10秒もなかっただろう、しかしすごく長く慎也を感じることができて幸せな時間だった。
そのあと、お互いのファスナーを下ろし脱ぎはじめた、しかし沙織は動揺してなにを話していいかわからなかった。
脱ぎ終わってから簡単な洗い方を説明する。
放っておくと次に使うとき、とんでもないことになっている。
沙織は慎也を意識するあまり、面と向かって説明できなかった。
顔が紅潮しているような気がして。
そして抱き着かれた時のことを思い出しては一人でドキドキしていた。
なぜなら、沙織はこうゆうシチュエーションで好きな人に抱きしめられたいと思っていたので。
他人からすれば変に思われるかもしれないが。
面と向かうとすぐに緊張してしまう沙織にとってはこれが理想だったのだ。
それが思わぬところで叶った、沙織はうれしくてたまらなかった。