巨大昆虫観察2

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19巨大昆虫観察2 ◆EKwHaA83h2
蜂の巣のような六角形をした穴が壁一面にいくつも並び、
その穴の一つ一つが薄い膜で、覆われている。
その膜の中を覗くと、生物らしきものが動いているのがわかる。

ここは巨大昆虫観察の続編のセットの中。
1匹の黒いカマキリのような昆虫が、
穴の中を覗きながら、移動している。
そして、ある穴で立ち止まると、
フック状になった腕で膜を破り、
中の生物を引き出す。
穴の中にいた生物は、粘液と共に
黒いカマキリの足元へ。
ピクピクと粘液で覆われた状態で動いている。
よく見ると、壁の前にはよく似た生物が数匹、
地面に転がっている。
しかし、どう見ても虫の息という感じで、
すでに動いていないのもいる。
そんなことはお構いなしに、
黒いカマキリは次の穴へ行き作業を繰り返している。
しかし、ある穴で膜を破るまでは同じだったが、
引き出し方が少し丁寧な生物がいた。
中から出てきたのは、きれいなオレンジ色をしたサナギ。
黒いカマキリはサナギに付いている粘液を、
自分の長い舌で、舐めるようにふき取っている。
そして、粘液を舐めてふき取っていると、
全く動いていなかったサナギが、躰を盛んにくねらせて動き出した。
まるで、くすぐったいと言わんばかりに。
それを見た黒いカマキリは、作業に戻っていった。
また、別の穴の膜を破り中の生物を取り出す。
今回も少し丁寧に取り出したように見える。
中から出てきたのは、ピンク色のビニールのような
ものに包まれた紫色の生物。その紫色の生物は、人のように見える。
それも、裸の女性。その生物は、自らビニールのような膜を破り、
這い出てきた。全身が紫色に見えるのは、
薄い透けたものを身に纏っているからだった。
身に纏っているものを除けば、人間の女性そのものである。
20巨大昆虫観察2 ◆EKwHaA83h2
その生物は黒いカマキリを見ると、
走って体当たりして、黒いカマキリを倒し、
馬乗りになり、頭をもぎ取ってしまった。
黒いカマキリからは、
黒い血のようなものが吹き上がる。
その血しぶきの向こう側でゆっくりと、
全身紫色のラバースーツに身を包んだ
崎田桃子が立ちあがったところでカットの声。
先ほどまで、ピクピクしながら地面に倒れていた
昆虫たちも起き上がる。
そこへスタッフが慌しく駆け寄り、
彼女たちの背中のチャックを開けていく。
そう、昆虫に入っていたのは、
黒いカマキリを除いて、すべて女の子だった。
昆虫から顔を出した女の子たちに、
恒例のメイキング映像のため、
スタッフがインタビューしていく。
最後の方に引き出された女の子のインタビューでは、
着ぐるみを着て上向き穴に入り、
ローションを大量に流し込まれた穴でひたすら
自分の番を待っていました。
途中からすごく暑くなってきたので、
早く私のところへ来てという思いでいっぱいでした。
膜が破られローションと共に自分も外へ出られたときは、
ホッとしたが、今度は撮られているので、
自分なりに表現できたか、わかりませんが
がんばりましたと、顔中汗だくだが笑顔で話している。
36巨大昆虫観察2 ◆EKwHaA83h2
前回の作品は、放送中は人気がなかったが、
DVDの発売以降、人気に火がつき、
続編を望む声が多く、今回の撮影に至る。
続編を望む声の中には、女性の声も多く、
監督が冗談で、一般の方から着ぐるみで
出演の募集をしてみたところ、応募が殺到した。
その中で監督は、特に身長の小さい女の子を採用した。
その理由は、今のシーン。
黒いカマキリが穴から昆虫を取り出すところ。
あまり、大きな人では引き出すことができない。
なかなか小柄な人ばかりを集めるのが難しかったので、
今のシーンは無しにしようかと思っていたところに、
出演希望が多く、監督の理想が叶った。
一般の女の子たちの撮影はここで終わり、
そしてもう一人、黒いカマキリに入っていた男性も。
この男性は雅司。
巨大昆虫観察の大ファンで、偶然にも夢を叶えた男。
香織の旦那である。
今回の作品での香織が必要ということで、
監督から直々にオファーがあった。
香織は結婚して、仕事も辞めていたので、
オファーを受けないつもりだったが、
巨大昆虫観察ファンの雅司に相談したところ、
ぜひ、やってほしいと言われてしまった。
監督には出演をすることを伝え、
旦那が作品のファンであるので、
撮影を見学させてほしい旨を伝えたところ、
オープニングで殺されてしまう役であるが、
出演が決まった。
37巨大昆虫観察2 ◆EKwHaA83h2
それを伝えると、雅司は大喜びして
子供のようにはしゃいでいた。
撮影の帰りも、興奮冷めやらぬといった状態だった。
そんな旦那 雅司の様子を見て、
香織は自分のことのようにうれしく思った。
そして、サナギに入っていたのは、
もちらん織田香代子こと香織である。
今回のサナギは、4本の脚は固定されてはおらず、
肘、膝から下は動かすことができる。
前作のサナギのように、先に自分の身体を
サナギの躰に入れて、頭と腕を入れて被るように着る。
今回のサナギは、最後に尾の部分に上から被ったものを
引っ掛けるので、身体が少し後ろへ引っ張られる。
そして、この着ぐるみは一度着ると、自分一人では、
脱ぐことができない。
また、少し大きめに造ってあり、
香織はサナギに入る前に、サナギの一回り小さい
クッションの入った衣裳を着てからサナギの着ぐるみへ。
おそらく、前と同様に成虫の着ぐるみを着てから、
サナギを着せられるのだろうと容易に想像できた。
今回のサナギの着ぐるみは手も足も使えるのだが、
中にもう一つクッションのような衣裳を着てから入るので、
実際は前のサナギと変わらずほとんど動くことができない。
それどころか立とうとすると後ろへ転んでしまう。
だから、立つ時は常に前傾姿勢をずっと
保っておかないといけないのできつかった。
雅司に穴から引き出されて、舐められるシーンでは、
大きな舌がサナギの中でも着ぐるみが動きやすくするため、
薄くしてある部分に触れて、反応し動いてしまい。
NGを連発して、みんなさんには
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
38巨大昆虫観察2 ◆EKwHaA83h2
特に最後に引き出された崎田さんには、
申し訳なさ過ぎて、着ぐるみのままお詫びに行った。
崎田さんは、「いいですよ」とやさしく返してくれた。
彼女の着ているラバーの衣裳は頭の先が、
尖ったように見えるが、その尖った部分は
大きく開くようになっており、
そこを大きく開きこの衣裳を着る。
ピッタリとしたこの衣裳を全身に纏うと、
顔がストッキングで潰されたようになってしまう。
そんな状態で、ビニールに包まれ狭い穴の中で
ジッと待っていてくれていたと考えると
ますます申し訳なくなった。
申し訳ないのもあったが、この衣裳には目が行く。
ほとんど透けていて、裸同然。
女の私でも思わず、じっくりと見てしまった。
NGが多かったからなのか、ラバーの衣裳の中は
所々汗ばんでいるのがはっきりとわかった。
この崎田桃子さんは、AV女優だとあとで知った。
雅司が台本を見たとき変な反応をしていたのは、
この人のためかということも後でわかった。
それは旦那の部屋を掃除しているとき、
パソコンの間から怪しいDVDが出てきた。
そのDVDの出演が崎田桃子だった。
旦那は崎田桃子ファンでもあったのだ。
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撮影の時、着ぐるみの中からとはいえ、
好きな女優に顔の上に乗られた、あれだけ身体が丸見えの衣裳で。
そんな、雅司はどんな気分だろうと考えていると少し腹が立ってきた。
帰りにえらく興奮していたのは、崎田桃子かと思うと、また腹が立ってきた。
続編は前作の最終形態の蜂が、人間の目を盗み密かに巣を作り、卵を産んでいた。
さすがに、蜂だけでは卵は産めない。
人間の男を針で刺し、人間の女の幻覚を見せて、交尾をしていたのだ。
卵の監視として、先に産んで育てておいたのが、黒いカマキリである。
香織が演じたサナギは昆虫が強く出ている生物、
そして、崎田桃子が演じたパープルワームは、
人間が強く出た生物となる。
パープルワームは人間と交わり、
子孫を増やそうとする本能が備わっている。
また、巨大昆虫を排除しようとする習性も備わっていた。
そのため、目の前にいた黒いカマキリをすぐに殺してしまった。
また、地面に転がっていた昆虫達は
動かなくなっていたので、死んだものと判断したのだった。
パープルワームが次に見つけたターゲットは、
もちろんサナギ、くねくねと動いているが、逃げることはできない。
サナギ自身も今、自分が狙われていることは知らない。
サナギに近づこうと歩き出したとき、
パープルワームの後ろで、人間それも男性の声がした。
その男は、この蜂の巣が作られていた古びた工場の所有者の息子。
彼はしばらく使われていなかった父親の
工場を売却するため、様子を見に来たのだった。
工場の中に人の気配があったので、中に入り声を掛けた。
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その声に反応してパープルワームが、その男の方に向きを変えて歩き出した。
男もパープルワームに向かって歩き出した。
勝手に工場内に侵入したことを文句言うために。
しかし、お互いの距離が近づき、男は動揺し始める。
それは裸の女性が向かって、きているからだった。
男は目の前にいるパープルワームに
目のやり場に困りながらも文句を言い続けたが、通じない。
それでも文句を言い続けていると、パープルワームは男に抱きついてき、
そして、男の顔を自分の大きな胸にうずめた。
そして、抱きついた腕全体から、ラップのようなものがでて二人を包んでいく。
男は必死に離れようとするが、離れられずどんどん包まれ、
姿が見えなくなってしまった。
パープルワームが繭を作っている間に、サナギはモゾモゾ移動している。
本能的に、この場所に居続けるのは危険だと感じたのだ。
工場を出たところで、前作の子供達に見つかる。
子供達は大人に見つかるとサナギを取りあげられると
わかっていたので、サナギを袋に入れて家の倉庫に持ち帰った。
その頃、パープルワームは工場の現所有者の男の
栄養をすべて奪い繭のなかで成長し始めていた。
成長し繭から出たものは変体しており、全身が紫色をしている。
下半身は濃い紫色をしており、太ももの外側、ふくらはぎの内側は
筋肉がむき出した繊維のように見える。
その部分は薄い紫色と白くなっている。
他にも胴体部分の脇腹、腕も脚のように筋肉繊維がむき出したように見える。
腹筋は割れており、乳房は大きくきれいな形をしている。
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顔は人間のような顔立ちであるが、
目はなく、鼻も口も穴は開いていない。髪は紫色のロングヘアー。
このパープルワームが変体したものは、パープルドールと呼ばれた。
パープルドールのベースは、崎田桃子の体型に
合わせて石膏で型取りしたものに、
ゴムの素材を流し込み造ってある。
ゴム素材は、少し厚めに造ってあるところと
着易く動き易いように薄く造ってあるところがある。
背中部分の上のほうから、頭の後ろ部分までが
開けられるようになっていて、そこから入る。
手も足も頭もすべて一体になっているが、
この素材はある程度で伸びるので、
崎田桃子もそれほど苦労せずに着ることができた。
ただ、着る時はお尻が入りにくく、飛び跳ねると
インナーにピッタリした紫色のラバー衣裳
をつけていたが豊満な胸が揺れる。
その豊満な胸をパープルドールに押し込む。
後ろのチャックを閉めて、髪をつければ完成である。
胸もピッタリしているので、胸は少し跳ねただけでも大きく揺れる。
衣装合わせで跳んでもらった時、パープルドールは恥ずかしそうに
胸に腕を抱えるように隠したのが、すごくエロさを感じた。
パープルワームから変体の際、繭を作り
その中で成長して出てくるのだが、
その繭を風船のような素材で造ったのだが、撮影中トラブルが発生。
中で手足を伸ばして破って出てくる予定だったが、
桃子がいくら手足を伸ばしても虚しく伸びるだけで破れることはなかった。
それどころかどこかに穴があき繭を膨らませていた空気がどんどん抜けて萎んでいく。
繭に閉じ込められたパープルドールの形が、クッキリと浮き出てきたが、撮影は続く。
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繭の中は空気がなくなり苦しくなってきたのかしきりに
繭を破ろうとするが、全く破れない。
その必死にもがいている姿は、着ぐるみを着ていても色っぽく見えた。
桃子の着ぐるみを着たときのインタビューでは、
ラバーの衣裳はピッタリして締め付け感がよく興奮してくるが、
長時間の撮影となるとかなり汗をかくので、
後半は気持ち悪かったですと笑いながら答えているのが印象的だった。
パープルドールは身体のラインがハッキリと出すぎるので、
スタジオ撮影はよかったのですが、
屋外ロケへ行く時は恥ずかしかったですとコメントしていた。
一方、サナギから成虫として、出てきたのは蜘蛛をモチーフとし、
人と蜘蛛が融合したものになっていた。胴体と頭はつながっており、
女性のような胸の膨らみがあり、腰のところはしっかりとくびれている。
頭部には複数の目があり、腕や脚の部分は太く先が尖っている。
まず、この着ぐるみを見たとき思ったのは、手の先が尖っているので、
自分一人ではなにもできないと。次に脚も尖っているので、
爪先立ちで演じなければならないのではないかと不安に感じた。
いつものように全身タイツに着替え、着ぐるみに入る。
私の予想通り脚は爪先立ちをしなければならなかった。
腕を通すのもスタッフに手伝ってもらい、最後に頭を入れて
背中のファスナーを閉めてもらって完成。頭の部分はそれほど
窮屈ではなく、蜘蛛の複数の眼がすべてサングラスのようになっていて、
視界は良好だった。この視界が良好に造られていた理由は、
尖った手脚を四つん這いになって移動できるようにするためだった。
それを聞かされてやれるか自信がなくなってきた。
パープルドールの撮影をしている間も隣のスタジオで四つん這い歩きの練習をしていた。そのかいあって、本番ではうまく歩くことができた。
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子供達にかくまわれていたサナギは蜘蛛へと変体を遂げるのだが、
今回も蜘蛛の着ぐるみを着て尖った手脚を折りたたみサナギへ入れられる。
毎回のことながら、サナギに入れられてから撮影が始まるまで時間がかかる。
その間、ジッと待機しているのだが、今回はだんだんと息苦しくなってきた。
そして、今回の蜘蛛はスタッフの手を借りず、蜘蛛の尖った手脚を使い
自分でサナギを破って外へ出なければならなかった。撮影が始まり、
折りたたんでいた手脚を伸ばしてサナギを破る。
手と脚は外へ出たが躰部分はサナギが被ったまま取れない。
焦って前肢を動かすが先が尖っていて思うようにいかない。
焦りと息苦しさで汗が吹き出てくるのを感じながら、気を失ったようで、
気が付いたときは着ぐるみを脱がされてソファで横になっていた。
サナギからの脱皮のシーンは撮りなおしになり、私の代わりに桃子が嫌がりもせず、
蜘蛛に入り演じてくれたことをあとで知った。
その後の蜘蛛は私がすべて責任をもって演じた。
蜘蛛は子供達の家の倉庫を拠点に周りの店などを襲い人々を糸で包んで繭に変えていく。そこへパープルドールが現れて、戦いが始まる。
蜘蛛に抱きつかれて身動きが取れない状態のままで、
蜘蛛は自分ごと糸を巻きつけて繭を作る。
その繭はバランスを崩し倒れて転がりだす。転がった先には池があり、
2匹が入った繭が池に落ちる。そして、しばらくは動きながら池に浮いていたが、
次第に沈み池の中へ消えていく。その後、仰向けで浮かんできたのは裸の女性。
浮かんできた女性が、岸へ吸い寄せられるように移動する。
その女性は岸に着くと立ち上がり、蜘蛛が作った繭に触れると繭に
包まれていた人達が繭から出てきた。その出てきた人達の目は紫色をしている。
そして、繭に触れた女性は完全な人間体で目が紫色に光りエンディングとなった。
最後のシーン、パープルドールに蜘蛛が糸を巻きつけていくのは、
私が机に座りパープルドールに4つの脚で抱きつくようにし、
スタッフが私達に糸を巻きつけていく。カメラは机が映らないように撮影していた。
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糸をそのまま全身をぐるぐる巻きにして繭ができるところまでは台本通りだった。
しかし、私が桃子に大丈夫かと聞いたときバランスを崩して倒れ、坂を転がりだした。
慌ててなんとかしようと手足を動かすが、繭の中で身動きが全く取れない状態で、
池へ落ちてしまった。徐々に入ってくる水に2人ともパニックになり激しく動く。
当初、監督は撮影を止めるつもりだったが、一連の流れを見ていて使えると
思いカメラを回し続けたそうだ。さすがに2人が沈み始めたときは焦って、
撮影を止めたらすぐに助けられる体制をとって沈むと同時に助け上げた。
ということだったが、繭の中ではどんどん水が入ってくる恐怖の中、
息を止めてひたすら助けを待った。
その時間は実際には短い時間であったが、私達には物凄く長い時間に感じた。
池から助けあげられ、繭から出されたとき、桃子はずぶ濡れの着ぐるみのまま座り込み、恐怖からか顔を押さえて泣いてしまった。
前作でもあった、監督のトラブルを利用して撮影するやり方は気に入らなかったので、
着ぐるみを着たまま監督に抗議していた。
自分では分からなかったが、かなり怒っていたようで、
着ぐるみの尖った脚でついた地面に複数穴が空いていた。
監督も素直に謝ってくれたのでその場はそれで落ち着いたが、
最終回のメイキングでは、繭から出され顔を押さえて泣いているパープルドール、
監督に詰め寄る蜘蛛がしっかりと撮影されて流された。
私はこれを見たときは呆れてなにも言えなかった。
色々なことがあったが、振り返れば楽しく撮影できたと今は思う。
そして、撮影を通じて仲良くなった崎田桃子とは今も夫には内緒で時々遊びに行っている。

***おしまい***