続・とある物産店(理沙すとーりー)

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67続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
着ぐるみに入ることに魅せられた理沙は、
家に帰れば崇に着ぐるみを着せてもらうのだが、
仕事でもっと色々な着ぐるみを着てみたいと思うようになっていた。
そんなとき、仕事帰りにアルバイト募集の貼り紙が目に入った。
週2~3回勤務で、着ぐるみに興味のある方とある、
そこは地方の物産店。
さっそく、翌日に電話をすると人手が足りていないので履歴書を
持って面接に来てくださいとのことだった。
お店に行くと、入口付近に恐竜の置物があった。
理沙はその恐竜の口を軽く突いて店に入っていった。
面接は店長の里香、見た目はきつそうに見える。
里香は履歴書にさっと目を通してから、「あなた身長は?」と聞いてきた。
私が「168cmくらいです」と答えると、
店長は続けて「着ぐるみを着た経験はある」と聞いてきた。
私は「少しだけあります」と答えると店長は少し難しい顔をしていたが、
すぐになにか思いついたのか、「いいわ 採用。これからよろしくね」と笑いかけてくれた。
そしてすぐに従業員の直樹と美優を紹介してくれた。
それから最近急に1人辞めたことや交代で着ぐるみを担当して
もらうということを教えてくれた。
私が帰ろうとしたとき、女性と店の出入口ですれ違った。
彼女も面接希望者なのか、
先ほどまで私が面接していた部屋へ店長と入っていくのが見えた。
私とすれ違いに入っていったのは桜井瞳、年齢は29歳。以前、ゲームセンターで働いていたが辞めてなぜか物産店にパートとして入ってきた。翌週から2人の研修が始まった。
78とある物産店(番外 直樹編) ◆DIF7VGYZpU
直樹はゲームが好きで、ゲームのイベントがあるといつも足を運んでいたが、
恵美が仕事を辞めてからは店が忙しいわ店長は機嫌が悪いわで休みが欲しいと言い出せず。今週、ようやく新しいバイトも決まり店長も落ち着いてきて休みがもらえた。
イベントは土日はキャンペンガールもいて賑やかだが、今日は平日金曜の夕方前
ということもあり客もまだ少なくブースを見てまわるにはちょうどよかった。
最近進出してきた新しいゲーム会社に興味があり、ブースへ行くと誰もおらず、
ただ黒く光沢のあるマネキンがあるだけだった。
そのマネキンはキャンペンガールのような衣裳を纏っていた。
平日なので手抜きなのかと思いながら商品デモ画面を見ていた。
ギシギシと軋むような音をさせながら直樹に近づいている黒い影があった。
直樹はそれには気付かず商品に夢中になっていた。
突然後ろから「いかがですか?」と声を掛けられた。
振り返るとそこには先程のマネキンが立っていた。
そう、マネキンに見えたが、中には人がそれも女の子が入っていたのだ。
気になる商品について説明をしてもらったが、マネキンの女の子が気になって仕方がない。説明してくれているが頭に入ってこない。
彼女の方が気になり近すぎるくらいの距離で彼女のことをみていた。
すると、黒いマネキンの子は自分が見られていることに気が付き
「直樹くん、説明しているんだから、ちゃんと聞いてよね。」と少し怒り気味に言われた。ずっと見ていたことよりも自分の名前を呼ばれたことにかなり驚いた。
黒いマネキンの女の子は恵美だった。
79とある物産店(番外 直樹編) ◆DIF7VGYZpU
ゲームのことはそっちのけで、物産店のこと、店長のことを話した。
恵美は急に辞めてしい、迷惑をかけたことを反省しているようだった。
そして、もうすぐ休憩で代わりの女の子(高見真由)が来るのでそれまで説明を受け、
そのあとバックヤードでゆっくり話そうということになった。
しばらくして、代わりの女の子が来たが恵美と体型が変わらず分身のようだった。
恵美について、バックヤードへ。
バックヤードでは仕事帰りでイベントへ来る人が多く、
それの対応をするため大学生のアルバイトらしき女の子が、
ゲームのキャラクターの着ぐるみに入ったり、
キャンペンガールの衣裳を纏ったりと慌しく準備をしていた。
その準備の光景を見ていたいと思いながらも直樹は恵美の後ろを付いていく。
中には着ぐるみを着せるのがもったいないくらい可愛い女の子もいる。
恵美は自分のブースの控えエリアに着くとファスナーを開けた。
ようやく直樹が知っている恵美の顔が出てきた。
物産店を辞めてから、仕事のことを彼氏の健二に相談したところ自分の
仕事の手伝いをしてほしいとのことだった。
健二はこのゲーム会社の社長だった。
小さな会社の社長なので、社長自ら各地のイベントに赴き、説明もしているとのこと。
イベント用に女の子を雇うと費用がかかる、時には準備できないこともある。
その点、彼女の恵美ならば間違いなくやってもらえる。
しかも一緒に旅行気分も味わえる。恵美と久しぶりに会い、会話が弾んでいたが外がえらくざわめいているので時計を見ると1時間以上経っている。
80とある物産店(番外 直樹編) ◆DIF7VGYZpU
今日はゲームもさることながら最近気になっている番組のイベントも目的の1つだった。そのイベントは「巨大昆虫観察2」のDVDの発売記念イベント。
イベントには女優の崎田桃子とスーツアクトレスとして名前は知っているが
顔は公開されていない織田香代子の出演が決まっていた。
直樹も続編からファンになり、初回作品のDVDも買い揃えたほどであった。
そして、もしかすると織田さんの素顔が見られるかもしれないという期待もあった。
バックヤードまで入れているのに話をしていてすっかり忘れていた。
イベント会場に戻る途中に昆虫の着ぐるみに今から入ろうとしている女の子を見つけた。その近くには崎田桃子の姿もあり、巨大昆虫観察だと確信した。
しかし、着ぐるみに入ろうとしている女の子は全身タイツを着ていて向こうを向いている。心の中でこっちを向けと念じる。
すでに下半身は着ぐるみを着ている、その女の子はなにかの拍子にこちらを向いた、
一瞬喜んだが顔まで全身タイツに覆われていて見ることができなかった。                            
イベントを見るために会場に戻ったが人がいっぱいでほとんど見ることができなかった。
イベントの終了を狙ってみようと思い恵美に無理を言ってバックヤードへ入れてもらったが、すでに昆虫の着ぐるみは壁にかけられて、女の子の姿はなかった。
恵美に偶然再会して、すごいチャンスがあったのに顔を見ることができなくて
がっかりしながら、会場を出た。
82とある物産店(番外 直樹編) ◆DIF7VGYZpU
すごく期待していただけにショックは大きかった、
外のベンチでうな垂れるようにして座っていると、
隣に座った人が心配して声を掛けてくれた。
直樹は体調が悪いわけではないことを伝えた。
そして、巨大昆虫観察の大ファンで健気に着ぐるみの中で演じている女性に惹かれ、
一度でいいから顔が見てみたかったことを話した。
その話を聞いた彼女は、「そういう人多いみたいですね」と微笑んで、
「実はうちの主人もなんですよ。
だから着ぐるみの中の人のことを教えてあげたら喜んで涙目になったんですよ」
と笑顔で話した。
この人は巨大昆虫観察の関係者なのかと思い直樹は顔を上げた。
彼女は満面の笑顔で「着ぐるみの中はこんな顔」といって、直樹を見ていた。
急なことで直樹は固まってしまった。
彼女は「じゃね、がんばるからこれからも応援してね。」と言ってそのまま帰ってしまった。直樹はしばらくそのまま固まっていた、かわいかった織田香代子の余韻に浸りながら。
83続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
私は直樹さんに、桜井さんは美優さんについて。
桜井さんは自分で仕事をしているそうで、ゲームセンターで社員として
働いていたが副職が忙しくなり両立が難しくなったので辞めたとのこと。
2週間ほどで私たちの研修が終わり、仕事にも慣れ始め、
一緒に仕事をする機会も増えていろいろな話をした。
正社員を辞める原因になった副職について聞いてみた。
桜井さんは裁縫が得意で、自分で作った衣装などを時々出品していた。
あるときその衣装がなかなかの高額で落札された。
落札者が小さな会社の社長で、イベントなどがあるときに
衣装作製を依頼されるようになった。
その仕事は始め少なかったので仕事をやりながらできたのだが、
そのうち忙しくなり両立が出来なくなってしまい仕事を辞めることに。
どれくらいの収入があるのか気になったが聞くことはできなかった。
ある日、店内で怪しい行動をとっている女子高生3人を桜井さんが見つけた。
どうも万引きをしようとしている様子。
私はすぐに店長に知らせ、全員で彼女たちを見張る。
案の定、商品をかばんに入れ走って店を出ようとしたが、
入口で店長と恐竜に入った直樹さんが行く手を阻んだ。
3人はいろいろと言い訳をしたが、防犯カメラに彼女たちの動かぬ証拠が写っている。
彼女たちは観念したが、警察だけはやめて下さいと懇願する。
高校3年の彼女たちはすでに大学への推薦が決まっており、
警察沙汰になると推薦が取り消されてしまうということだった。
店長はしばらく考えていたが、交換条件を提示。
それは4月まで物産店でバイトをすること。
そして始めの1ヶ月はただ働きという条件もつけて。
84続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
店長の出した条件はそれほど悪くないと思ったが、
彼女たちはなにか言いにくそうにしているので、
店長が問いただすと、校則でアルバイトが禁止だということだった。
店長はニコリとして、バレなきゃいいんでしょ?だったら着ぐるみにはいってと。
確かにそれならば先生や友達にばれることはない、彼女たちも納得した。
次の日曜からバイトに来ることになった彼女たちの名前は青木綾香、有野有香、石脇彩乃。彼女たちは基本的にはバラバラに入ることはなく3人一緒の日に働くことになった。
着ぐるみの着方や着せる手伝いは私と桜井さんの仕事。
先輩方は着ぐるみに入る機会が減るので喜んでいたが、私としてはかなり残念だった。
それでも店長の方針なので仕方がない。
さて、彼女たちは着ぐるみ入ることになったのだが、
ここで問題が彼女たちの入れる着ぐるみが2体しかない。
しばらくは2人が着ぐるみ担当で、1人が倉庫整理ということになった。
この3人組を生かすため、店長は桜井さんに衣装作成を依頼していた。
あまり売れていない黒豆コーヒーを売るのに名案が浮かんだらしい。
そしてできあがったものはラバー素材でできたゼンタイと
同じくラバー素材でできたメイドの衣装。
これならマネキンのようになるので顔はわからないし、
彼女たちのスリムな体型も生かせるだろうと考えたようだ。
初めは倉庫整理担当にマネキンメイドをやってもらう予定だったが、
1人より3人の方が目立つだろうということで、3人分衣装を作ってもらっていた。
夕方の仕事帰りのサラリーマンをターゲットに店の前で3人は試飲を配って
売上げ増を目指してもらうことに。
85続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
私もこのラバー素材というのは初めてだった。
桜井さんは以前同じようなものを作ったことがあり、扱いに慣れていた。
彼女たちには本当は裸で着てもらうつもりだったようだが、
恥ずかしいということで各自水着を持ってきてもらい下に着てからラバー製の
ゼンタイを着てもらうことになった。
身体にローションを塗りすべりをよくしてから着てもらう。
最後に背中のファスナーを閉めると目の前にはゴムでできたマネキンが3体現れた。
彼女たちももちろん初めての経験、お互いを見てどうしていいか戸惑っているようだ。
桜井さんの指示で彼女たちの身体に光沢剤を塗っていく。
塗るときに触れると彼女たちは触られたことにすごく反応する。
桜井さんがいうには、ラバーを身につけると感覚が敏感になるとのことだった。
そんな過敏な反応をする彼女たちに光沢剤を塗り終わると、
その姿は人ではなくただの物のように見える。
その光沢のあるマネキンたちに今度はメイドの衣装を着せていく。
それぞれに金髪のウイッグを取り付けて完成。
彼女たちはお互いを見たり触れ合ったりしている。そこへ店長が入ってきた。
美優がコーヒーを淹れてくれているから、しっかり宣伝してきてねと。
3人の金髪の黒光りしたマネキンたちがメイド姿で店の外へ出て行く。
外へ出ると通りを歩いている人たちは始め驚いていたが、
イベントかなにかかといった感じで次第に人が集まり始めた。
試飲のコーヒーを配り始めると通行人から次々に手が伸びて
すぐに試飲はなくなってしまった。
彼女たちがコーヒーを配っている姿を写真におさめる人もいた。
試飲がすぐになくなってしまったので準備する間、彼女たちは店内へ戻ってきた。
そのあとについて店内へ入ってくるお客さんはいたが、
黒豆コーヒーどころか店の商品を買っていってくれる人はいなかった。
彼女たちが奥の部屋へ消えるとその客たちもいなくなってしまった。
87続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
試飲を配り、彼女たちの写真だけ撮られて、店の商品が売れなければ意味がない。
店長はその日、直樹に残業を命じて、店内の什器の配置転換をさせていた。
その翌日には美優と店長が早出するとのことだった。
私が出勤すると店の片隅にテーブルとイスが置かれて、
店の一角がカフェのようになっていた。
女子高生3人組は夕方から出勤してマネキンメイドになる。
おかげで私は昼からは恐竜の着ぐるみに復帰することができた。
彼女たちに着ぐるみの仕事をとられて一時はやめようかとも考えたが辞めなくてよかった。
女子高生3人はマネキンメイドになるのを嫌がりもしないで、
むしろ喜んでやっているように見えた。
今日は1人ずつ交代で試飲を配り、あとの2人はカフェで客の対応を
するスタイルにしたのだが、客が多すぎて行列になってしまった。
おまけに席についたお客さんはなかなか帰らない。
売り上げは少し伸びたが、店長には課題の残る結果となった。
カフェのお客さんはお金を払ってくれているので、邪険に扱うことは出来ない。
翌日からは時間制限を設ける代わりにポイントカードを導入し、
ポイントの貯まったお客さんにはいろいろな特典を用意することにした。
これで売上げもカフェの回転もよくなり、物産店は全て順調にいくようになった。
88続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
私は家に帰ると同棲を始めた崇の食事を作り、彼が帰るまでにシャワーを済ませて、
ピッ○ロの着ぐるみを着て彼の帰りを待つ。
家事の合間に柔軟体操を続けたおかげで、今では着ぐるみのファスナーも
1人で閉められるようになった。
最近の崇は着ぐるみ以外のことにも興味を持ち、それらのことを私の身体で試す。
着ぐるみの上からではあるが、先月は麻縄で亀甲縛りをされたり、
全身をラップでぐるぐる巻きにし、イモムシ状態でベランダに放置された。
酷かったのは、彼が休みの日に朝から着ぐるみを着るように言われた。
そして、また私の全身をラップで巻いていく、さらにその上から黒のビニルテープを巻きつけて、サーフボード用のケースに押し込められた。
このまま放置されるのかと思っていたが、身体が持ち上がる。
しばらく横になった状態で揺れている。どこかへ移動しているようだ。
すると今度は背中あたりに感触があったと思うと立てられた。
どうもエレベータに乗ったようだ。そして再び横向きにされ歩き出す。
しばらくすると、ケースが開けられて新鮮な空気が入ってくるが、臭い。
呼吸できるのは鼻だけなので臭いでここがゴミ置場だとわかった。
今日はゴミの回収日ではないが、ここには子供たちが侵入してよく遊んでいた。
91続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
必死に助けてと叫ぶが、崇はそのまま私を置いていったことが、
ゴミ置場の扉が閉まる音でわかった。
せめて子供が来ないことを祈っていたが、子供たちの声が近づいてくる。
そして、ゴミ置場の扉が開く音がする。
そしてさっそく1人の子供がビニルテープでぐるぐるに巻かれ、
黒いミイラとなった私を見つけて騒ぎだした。
そしてなにやらこそこそ話ながら近づいてくる。
次の瞬間おなかの辺りを棒のようなもので突かれた。
不意をつかれたので大きな声を出しそうになったが何とか堪えた。
でも少し動いてしまったかもしれない。
そのあともなにかを確認しているのか、足や頭へ容赦ない攻撃が続く。
ずっと耐えていたが脇腹を突かれた時、なんともいえない声とともに
イモムシのようにクネクネと動いてしまった。これを見た子供たちは大騒ぎ。
ゴミ置場から大声を出して出て行くのがわかった。
親を連れてこられたら大変な騒ぎになる。
なんとかこの場から移動しなければと、動けないのはわかっているが
必死に動くが全く駄目、虚しく床を擦るだけだった。
こんな危機的状況の中でも、こんな姿を他人に見られたらと思うと興奮してきて、
つくづく自分は変態だなぁと思った。
着ぐるみを着てラップとビニルテープの2重に拘束され、
その上変な興奮と動いたことで全身が暑くなり頭がボーっとしてきた。
どれくらい経ったのかわからないが、気付いたとき遠くから
子供と母親の声が近づいてきている。
もう駄目だと諦めていたが、少し離れたところで声が聞こえる。
しかし、私は見つかっていないようだ。そのうち母親子供を叱る声がしていたが、
そのうちどんどん遠ざかっていく。
どうなったのかわからないが、なんとかピンチは脱した。
93続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
実は拘束した理沙をゴミ置場において、本当のゴミのようにしてビデオ撮影していたが、子供たちが来たので慌てて近くに隠れて様子を伺っていた。
子供たちにいじられている動画を撮りながら。
そして子供たちが騒ぎながら出て行っているうちにゴミ置場から
出そうとしたが理沙が暴れだしたのでしばらく様子を見ていた。
少しすると急に動かなくなってしまったので、ひとまずゴミ置場から
出して近くにわからないようにして転がして置いたのだった。
騒ぎながら母子がやってきたが見つからない、子供たちは怒られながら帰っていった。
そのあとで、私はイモムシ状態のままサーフボード用のケースに
押し込まれて部屋へと無事に戻ることができた。
部屋に戻りビニルテープとラップは外してもらえたが、
着ぐるみを脱ぐことはさせてもらえなかった。
崇と一緒に着ぐるみのままお風呂に入り、アソコをいじられイッて
しまったあとようやく着ぐるみから出してもらえた。
私がピッ○ロの着ぐるみの姿で悶えているのに崇は興奮している。
着ぐるみを脱がせてもらったあとは綺麗に洗い裏返してベランダに干して置く。
物産店は毎週水曜日が定休日であるが、今朝は高校生3人を
除いてミーティングのため店に集まっていた。
店長の里香は恐竜の着ぐるみとゆるキャラだけでは客が飽きてきているので、
なにか新しいものを追加したいとのことだった。
これも黒豆コーヒーの売上が好調で、もっと注目を集めて客を増したいという考えだった。
97続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
それに伴い追加のアルバイトも募集することに、
候補は桜井さんの知り合いを連れてくることになった、名前は高見真由。
さて、本題であるが季節ごとのイベントに合わせた着ぐるみ
にしようということになったが、店長が難しい顔になっていた。
アイデアとしてはいいが、コストがかかり過ぎるということだった。
私は自分の彼氏 崇が特殊メイクや着ぐるみのようなものを作っていることを説明し、
どれくらいのコストでできるのか確認することでミーティングが終了した。
帰ってからさっそく崇に相談してみた、崇のご機嫌を取るために
ピッ○ロの着ぐるみを着て。
初め崇は悩んでいるようであったが、ニヤリとした表情を見せ、
誰が中に入るのか?今は業者にどれくらいで発注しているのか?
それにどれくらいの予算なのか?を聞いてくるように言われた。
すぐに店長に電話して、崇に電話を代わってもらう。価格は希望通り、
ただ着ぐるみのサイズは私に合わせて造ることになったことを告げられた。
翌日、出勤すると店長はご機嫌でみんなにデザイン考えてきてねと。
お題は2月のイベントで節分とバレンタイン。節分なら鬼、豆まき、恵方巻き。
それぞれのアイデアを持ち帰り、崇に渡す。アイデアは参考に
お任せというのも店長と事前に決めてあったようだ。
1月下旬、崇は大きなダンボールを持って帰ってきた。取り出したのは赤鬼の着ぐるみ。崇が造っただけあり、すごくリアルにできている。顔は怒っているように見え、
口元にはキバがある。腕や足は筋肉隆々で血管が浮き出ている。
98続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
私をベースに造ってあるので胸、そして乳首までしっかりとある。
見ている分にはよかったがピッ○ロの着ぐるみを脱いで赤鬼の着ぐるみに
着替えてみると、胸と乳首が目立ちとても恥ずかしい。
崇からは裸で着るように言われたが、着てみてよくわかった。
下の部分はトイレにいけるように穴が開いていた。
顔はピッ○ロの着ぐるみのように自分の目や口を接着剤でくっつけるので、
まばたきも喋ることも食事もできる。
赤鬼になった私を崇はいろんな角度や離れたり近づいたりして写真を撮っている。
それが終わるといつものように絡み合うのかと思っていたが、
ただ脱がされてそのまま写真の印刷にかかってしまった。
拍子抜けした私は彼に構ってほしくて、再びピッ○ロの着ぐるみに入る。
さっきまで着て汗をかいていたので、少し気持ち悪かった。
崇の元へ行きアピールする。崇は私の手を掴んで持って帰ってきたダンボールの前に。
そしてダンボールから2つ折りにされた大きな太巻きが出てきた。
海苔のところがマジックテープになっていて、剥がしていくと太巻きは巻く前の状態に。崇に横になるように言われて、私はピッ○ロのまま横になった。
全身をすべて覆うことはなく足だけは出た状態で、崇は私をスマキにしていく。
最後にマジックテープを止めて完成。視界は全くなく息苦しい。
すぐに苦しくなり足をバタバタさせたが出してもらえない。
腕を広げて脱出を試みるが駄目だった。
99続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
苦しくて立っていられなくなり倒れ込むと崇はようやく私を解放してくれた。
崇は「5分ももたないなら駄目だなぁ」といいながら、メモを取っている。
そして「理沙は息を止められる時間は短いの?」と。
そんなことは気にしたこともなかったので、答えられずいると、
崇は怪しい笑みを浮かべながら隣の部屋へ消えていった。
そしてすぐになにかを持って戻ってきた。それは布団圧縮袋だった。
この時、まさか入れられて空気を抜かれるとは夢に思わなかった。
ピッ○ロの着ぐるみのまま布団圧縮袋に入れられて、
掃除機の音とともにどんどん空気がなくなり締め付けられていく。
体育座りをしていたが空気がなくなり頭を押さえつけられた状態になったとき、
ようやく掃除機は止まった。
手を動かそうとするが、ほとんど動かせない。
身体をひねってみるが袋のビニルが身体に張りつき、こちらも動きが封じられている。
すぐに息苦しくなり身体をさらに動かして抵抗するが、
転がり体勢が横になってしまっただけ。顔が暑くなりどんどん苦しくなる。
もう駄目と思い声を振り絞り崇に悲鳴のような声で助けを求めた。
それに驚いたのか崇は慌てて袋を開けてくれた。私は袋から半分出た状態で、
呼吸が落ち着くまで横になっていた。
落ち着いてから崇は私を抱き上げてお風呂へ連れていってくれた。
そして、優しく扱ってくれた。翌朝、仕事へ行く時、店長宛の封筒を渡された。
その封筒を渡した3日後には店長から少し大きめの紙袋を渡された。
100続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
その紙袋を持って帰りに崇渡すと、崇は私に赤鬼に着替えてきてと。
私は言われた通りに着替えて戻ってくると、紙袋に入っていたものが並べられていた。
それは虎柄のロングブーツと同じ虎柄のハイレグ水着のようなワンピースだった。
崇に言われるままそれらを身に着ける。
崇は着せるのを手伝いながら、これは桜井さんが作ったことを教えてくれた。
前回、赤鬼を着たとき着ぐるみの上から採寸したのは、このためだと分かった。
ブーツはピッタリでよかったのだが、ハイレグのワンピースの方は少し小さいのか、
股の辺りが食い込んで少し痛い。それに虎柄で分かりにくいが、
精巧に造った乳首がくっきり浮き出ているのが、すごく恥ずかしかった。
次の日、崇は学校が休みなので一緒に店へ行って店長と
話をすることになっているとのこと。
すでに行く準備を整えていた私に赤鬼の着ぐるみに着替えて、
着ぐるみと虎柄の衣裳を渡された。
そんな格好では出勤できないし、着替えていると遅れてしまうと文句を言ったが、
店長には連絡済みだし、車で送っていくからと丸め込まれてしまった。
釈然としないが仕方なしに着替え始める。
崇に裸で着ないと駄目か確認したが、裸でとの返事。
赤鬼の着ぐるみに着替え虎柄のハイレグワンピースを着るがやはり食い込みがきつい。
虎柄のロングブーツを履いて玄関の姿見鏡を見る。とてもこのまま出かけられない。
膝まであるロングのダウンコートを羽織ったら、ブーツが少し目立つくらいになった。
102続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
しかし、問題は赤鬼の頭。顔は恐いし角は生えている。
とりあえずニット帽を深く被れば車まではなんとか誤魔化せていけると思い、
この格好で家を出た。
幸い近所の人には会わずに車まで行くことができた。
移動中も周りを驚かせないように、ずっと下を向いていた。
店について崇と共に店に入っていく。
店長に赤鬼の着ぐるみを着た私を引き渡して、納品完了ということらしい。
そのまま2人は店の奥へと消えていった。
私の周りには桜井さんと美優さんがすごくリアルにできてるねぇといって寄ってきて、
私の身体のあちらこちらを触ったり、着心地はどうかなど聞かれたりした。
しばらくして、崇が出てきて「がんばってね」と一言残して帰っていった。
今日から2月、店オリジナルの恵方巻きと煎った黒豆を販売。
あらかじめ吹き込んでおいた販売アナウンスを流しながら、
店の外でセクシーな赤鬼での販売を始めたが、
通りすがりに写メを撮る人はいたが、買ってくれる人はいなかった。
一人で心細く立っていると、店長が足の生えた恵方巻きの着ぐるみを連れて出てきた。
足はよく見ると付根のところまで白いブーツになっている。ヒールも高く足だけに注目するとかなり色っぽい。
店長は桜井さんには苦しくなったら右足で地面を蹴るように言ってあるから、
そうしたら店内へ連れてきてねと。
桜井さんは初め元気よく左右に身体を振ってアピールしていたが、
すぐに苦しそうに前かがみになってしまった。
103続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
しかし、地面を蹴る素振りは見せない。
私もこの恵方巻きを着せられたことがあるので苦しさはよくわかる。
そんな中、動いてがんばっている桜井さんには感心させられた。
1時間も経つとかなり寒くトイレに行きたくなってきた。あと30分で休憩に入れる。
トイレを我慢してがんばっている私を見て泣く子供がいると、こっちまで泣きたくなる。その時、突然恵方巻きの桜井さんが倒れてしまった。慌てて店内へ店長を呼びに行く。
みんなで桜井さんを運んで部屋で横にして休憩させる。
幸いすぐに桜井さんは気がついて、大丈夫とのことだった。
桜井さんが倒れてしまったことで早めの休憩に入れた。
休憩の間は、あとから出勤してきた高見さんと美優さんで代わりを勤めてくれている。
我慢していたトイレに向かう。
ハイレグレオタードを下げて、赤鬼のアソコを大きめに開いて用を足す。
トイレから出てきた私に美優さんから「着ぐるみ脱がなくてもできるの?」と質問。
中は裸だし着ぐるみのアソコの部分だけ開いているのでと説明したあと、
急に恥ずかしくなり休憩室に走って戻った。
昼からは黒豆が少し売れた。
恵方巻きは予約だけなのだが、ぜんぜん駄目だった。
休憩後は桜井さんが倒れてしまったので、ずっと1人で通りを歩く人々の視線に 
晒されながら声を出していたがこの時間は非常に長かった。
夕方になり高校生3人組も来たので、入替わりで私は上がれることになったが、
ここでたいへんなことに気づく。
105続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
着替えるためにロッカーを開けたが、入っているものはロングダウンコートに
ニット帽そしてカバン。
つまり、赤鬼の着ぐるみを着て帰らなければならない状況に。
以前、ピッ○ロの着ぐるみのまま放置されたことがあった。
電車に乗って帰ったが、救いは乗客が少なかったこと。
しかし、今日は違う、夕方のラッシュ時しかも主要な駅で乗り換え
をしなければ帰ることができない
崇に迎えに来てもらえるよう電話したが、出ない。
店長に相談したら、話題になっていいかも!と全く取り合ってもらえない。
仕方なく帰ることにしたが嫌な予感がして仕方がない。
ニット帽を深く被り、ダウンコートのフードも被り顔が分からないようにするが、
異常に顔を隠しているので返って目立つような気もするがそうもいっていられない。
107続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
駅の改札を抜けてホームへ、人がいっぱいいる。
何も悪いことはしていないのだが、こそこそと怪しい動きになってしまう。
そんな私のことを不審に思った人が駅員に通報してしまった。
電車に乗ろうとしていた私の肩を駅員が叩いた。
それに思わず振り向いてしまい顔を見られてしまった。
駅員が驚いているうちに電車に乗ろうとしたが、腕を掴まれ引きずり降ろされる。
そのとき、フードもニット帽も取れてしまい、周りは大騒ぎに。
そのまま私は駅長室に連れて行かれてしまった。
部屋に入るとコートも脱ぐように言われてそれに従う。
凄くリアルな鬼の姿に駅員たちも驚いている。
そして、鬼の着ぐるみも脱ぐように言われたが、中は裸で服も持っていないことを
説明するが、分かってもらえず脱げの一点張り。
そして、どうしてこんな着ぐるみを着て電車に乗ろうとしたのか?何が目的なのかという質問攻めにあった。
泣きながら全てを説明してようやく理解を得たころ、警察官が部屋へ入ってきた。
泣いて下を向いている私の代わりに駅員が警察官に事情を説明してくれた。
これ以上の混乱を避けるため、パトカーで家まで送ってくれることになったのだが、
駅長室を出るともうすでに大騒ぎになっていた。
テレビカメラや取材の報道陣それに野次馬、それらを警察官が先導し掻き分けて
もらいながらなんとかパトカーに辿り着いた。
犯罪を犯していないが、警察に捕まった犯人の気分だった。
いつもなら30分で帰れるのに、パトカーで送ってもらっても2時間もかかってしまった。
家に着いて、玄関でブーツを脱いで赤鬼の着ぐるみのままソファに倒れこむ、
明日は休みだと思ったら気が抜けてそのまま寝てしまった。
108続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
私の名前を呼ぶ声が遠くで聞こえる。
気がついて目を開けると目の前には崇がいた。
崇が話し始める。
「たいへんだったなぁ、テレビのニュースでみたよ。電車に乗る赤鬼がでた」と。
「帰りの駅では大騒ぎだったよ」と崇は続ける。
私はそれを聞いて、また涙が出てきた。
夢であって欲しかったが私が経験したことは現実だったんだと改めて思い知らされた。
これからは教訓として、仕事先には予備の着替えをいくつか入れて置くことを心に決めた。
翌日は休みだったが、昨日迷惑をかけた駅員さんたちに一言謝りたくて出かけた。
駅長室へ行くと「なにか御用ですか?」と優しい対応。
昨日、ご迷惑をかけた赤鬼ですと答えるとすごく驚かれてしまった。
そして、あのあとも無事に帰れたのか心配していてくれたことを聞いた。
驚いたのは中身が、かわいかったからだと帰り際に言ってもらい笑顔で
駅長室を後にした。
もう家から赤鬼を着ていかなくていいように着ぐるみをもってきているので店へと向かう。
店に行くと「昨日はたいへんだったわねぇ」と店長は笑顔だった。
そして今日から恵方巻きを予約された方には、今話題の赤鬼とお好きなポーズで
記念写真を撮れることにしたと、一方的に言われた。
チラシにはテレビにも取り上げられたことに触れ、
スポーツ新聞に載っていた写真付の記事もつけてあった。
「今日と明日、予約してもらったお客さんとの写真撮影は明日残業して対応してね」
と、そして「残業代もいつもより多くつけておくから」と店長は言い残して、
奥の部屋へと消えていった。
その日は着ぐるみを置いてすぐに帰った。
翌日は早めに出勤した、誰もいないうちに裸になり赤鬼の着ぐるみに入る。
準備が出来た頃、店長が出勤してきた。
店長はニヤッと笑いながら「気合い入っているじゃない」といいながら、店内へ。
別に気合いが入っている訳ではない。
ただ、誰にも着替えているところを見られたくなかっただけだ。
それに明日で終わり、たった2日耐えればいいと思っていたが、
その2日が限りなく長い2日になるとはまだこの時は思ってもみなかった。
テレビのニュースにもなったので、一目現物を見ようと多くの人で店の前が
一時通行できなくなることもあったが、それでも時間とともに解消していった。
それだけの人が来たので売上げも信じられないくらいとなった。
そして、怖れていた記念写真が夕方から始まった。
整理券を配ったお客さんを急遽造った撮影用スペースで待つ。
みるみるうちに店の中が長蛇の列になり、さらに店外へ伸びていく。
30秒の制限時間を設けて次々に写真を撮っていく。
どさくさ紛れに身体を触るお客さんもいた、販売のときに声を出していたので、
中身が女性だとばれているからだ。
赤鬼の着ぐるみの上からでも触られると不快に感じ思わず声を出してしまったりもした。
いろんないやらしいポーズをさせられることも。
初めは嫌でたまらなかったが、後半はもう疲れてきてどうでもよくなり、
お客さんのエスカレートした大股を開くようなポーズにも応えるようになっていた。
終わった時ブーツは片方脱げて、虎柄のハイレグレオタードも腰辺りまで脱げていた。
もちろん、赤鬼の胸も乳首も丸出しになっていた。
109続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
さっきまでのバタバタで自分も訳がわからいくらい忙しかったので、胸を揉まれたり、
乳首を吸われていたような気もするが、はっきりとは覚えていない。
全ての撮影が終わったのは夜10時を過ぎていた。
店長の配慮で明日は昼からの出勤となった。
心も身体もボロボロの状態で家に帰り、死んだように眠った。
次の日は節分、赤鬼も今日で終わり。
自分に自身に今日1日がんばれと気合いを入れて出勤した。
店に行くとさっそく店長から軽いトーンで「早く着替えてね」と。
着替えている途中に部屋に店長が入ってきて、
「理沙ちゃんにお願いがあるだけど聞いてもらえる?」と。
また、とんでもないお願いかと思いながらも断ることができないので、
お願いを聞くことに。
お願いとは店長の友人に保育園の先生がいて、その先生からテレビで
物産店の鬼のニュースを見て、その鬼さんに保育園に来てもらえないかということだった。
最近の子供たちはお面の鬼では納得しないのだという。
私は大人相手より子供の方がいいだろうと思い引き受けることにした。
店長は引き受けてくれると思って返事しといたと、そして午後2時に保育園バスが
迎えに来るからよろしくと言って出て行ってしまった。
上半身裸で赤鬼の着ぐるみで自分の胸を隠すようにして話を聞いていた。
時計を見ると1時30分を少し回っている。
虎柄のブーツを履き、赤鬼の着ぐるみに腕を通し恐い鬼の頭を被り、
虎柄のハイレグレオタードを着て完成。
しかし、このまま出て行くのは恥ずかし過ぎるので、
ロングダウンコートを羽織っていくことにした。
準備が出来てから、しばらくして店長が呼びにきた。
114続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
店を出ると猫バスのようなかわいいバスが停まっていた。
バスの前には小柄で、髪をおさげにしているかわいらしい先生が頭を下げている。
私もそれにつられて頭を下げる。そして、あいさつをしてバスに乗り込む。
この小柄な先生は長山奈美、歳は21で私と同じ。
昨年、短大を卒業して先生として一年生とココまで聞いて、
じっくりと彼女の顔を見てみる。
大人になり綺麗になっていてすぐには気付かなかったが、私が知っている顔。
中学生のときのクラスメイトだった。
久しぶりの再会?ではあるが赤鬼の着ぐるみを着ているので、私とはわからない。
着ぐるみを着ているのも恥ずかしかったのもあり、とりあえず黙っておくことにした。
保育園に到着し、園児たちに見つからないように建物内へ案内される。
園長先生と今回店長に依頼した先生に挨拶をして準備する。
準備といっても簡単な打ち合わせだけであるが。
園児たちのいる部屋に入り少し脅かして先生の合図で豆まきをするので、
それを嫌がりながら部屋を出て行く。
それを2クラスしてほしいということだった。
あと悪がきたちを奈美先生が連れてくるのでお灸をすえてほしいというのもあった。
部屋にはいると泣き出す子供がほとんどだが、中にはビビリながらも
蹴ったり叩いたりしてくる子もいた。
小さいくせになかなか痛い。先生の合図で豆をあてられて撤退する。
中にはハイレグレオタードの中に豆を入れてくる悪がきもいる、
捕まえてやると半べそを掻きながら必死の抵抗をみせる。
115続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
最後にお灸を据える子供たちを3人、奈美先生が連れてきた。
先ほどの悪がきの姿もある。
子供たちは私の方を見るが怖がっているようで、奈美の後ろに隠れてしまう。
子供たちに近づきながら、「もう悪いことはしないかぁ~」と声色を変えていうと
小さな声で「ハイ」と泣きじゃくりながら答えた。
あんまり怖がらせても可哀想なので引き上げた。
帰りもかわいいバスで店に送ってもらう。
車中で奈美から着ぐるみに入っていて暑くないかとか体力がないとできないか
などの質問攻めにあった。
奈美があまりに質問してくるので、着ぐるみを着てみたいのか聞いてみた。
すると、保育園のイベントの時だけでも着ぐるみを着て園児たちを
喜ばせてあげたいということだった。
それならどんなイベントでどんな着ぐるみがいいのか私に言って。
私の彼氏がこの着ぐるみも造ったので、奈美ちゃんのも頼んでみるよ、友達だもの。
話に夢中になり普通に喋ってしまった。
奈美は「ずっと、聞いたことのあるような声で喋り方もどこかでと思ってたんだけど、
もしかして理沙ちゃん?」
奈美の鋭さに驚いているリアクションで完全にバレてしまった。
正直に打ち明けて連絡先を交換して、着ぐるみについても全面的に
協力することを約束してから、店まで送ってもらい別れた。
なんか久しぶりに話せて良かったなぁと余韻に浸っていたのも束の間。
店にはすでに写真撮影の行列が店の外まで延び始めていた。
休憩する間もなく、店長に引っ張られて店の奥へ。
116続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
昨日の悪夢の再来かと思いながら店長についていく。
今日も昨日に引き続きエロチックなポーズをさせられて写真撮影は続くが、
8時くらいにお客さんは引いてしまった。
9時前には着替えて店を出ることができた。
節分当日はみんな家で過ごすのかなぁと思った。
私も店長からご褒美にもらった2つの恵方巻きを持って崇の待つ家に帰った。
家に帰り2人で恵方巻きにかぶりつき堪能していたが、先に食べ終わった崇が
奥の部屋からダンボールを抱えて戻ってきた。
ダンボールを開けるとビニール袋の中にチョコレートのようなものが入っている。
ビニール袋からそれを取り出すと部屋に甘い香りが広がる。
広げられたものは香りからもわかるようにバレンタイン用の着ぐるみ。
崇は「どう香りつけてみたんだけど」と少し自慢気だったが、今日はようやく
赤鬼の着ぐるみから解放されてホッとしていたところだったので、
すぐに着てみてと言われるのが恐くて答えに戸惑っていた。
着ぐるみを着るのは好きだが今日だけは遠慮したかった。
私の返事が気に入らなかったのだろう、崇はいつもより強い口調で、
「じゃあ、着てみようか」と私に着るように促す。
私は断りきれずに試着することになった。
食べかけの恵方巻きをテーブルに残して、
崇に言われるまま隣の部屋でゼンタイに着替える。
ゼンタイ姿で部屋に戻りバレンタインの着ぐるみを着ていく。
117続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
この着ぐるみにはかわいらしいアニメの女の子の顔、身体になっている。
ただ、色は単色でチョコレート色をしている。
衣裳は桜井さんが作製中ということだった。
オタク受けしそうな感じはするが、今回のターゲットは女性なのになぁと思ったが、
崇の機嫌を損ねると、また着ぐるみのままどこかに放置されかねないので黙っておいた。
崇は私に「赤鬼のときみたいに裸で着る方が気持ちいいか」と聞いてきた。
また着替えがなくて着ぐるみのまま帰らなければならなくなったら困るので、
頭を振って「このままでいいよ」と答えた。
ゼンタイと着ぐるみを着た状態では、崇がどんな表情をしているのかわからなかった。
「チョコレートの香りがしてすごく雰囲気が出ている」と崇に伝えると、
声から満足していることがわかった。
喜んでいる崇に着ぐるみを脱がせてもらい、
ゼンタイのまま携帯を見ると奈美からメールが来ていた。
そこには今日のお礼と園児たちを喜ばせるための着ぐるみについて書かれていた。
すぐに崇に相談に行くと、着ぐるみを着る奈美に直接会って話をすると言い出した。
まあ、勝手に造るとグロテスクなものが出来上がっては、園児たちを喜ばせるどころか
怖がらせてしまいかねないので奈美に会わせることにした。
私がゼンタイを脱いで着替えようと立ち上がろうとする腕を掴まれて抱き寄せられる。
久しぶりに抱いてくれるのかと思ったが、
崇の後ろに準備してあった布団圧縮袋に無理やり入れられてしまった。
118続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
必死に拒もうとしたとき、「友達の着ぐるみをがんばって造るよ」と言われて抵抗できず、
そのまま圧縮されることに。
掃除機で私の入っている空気はどんどん抜かれていく。
恐怖感もあったが、同時にどうなるのかそしてマゾっ気が私をワクワクさせる。
次第に身動きもとれないくらい空気が抜かれて掃除機が止まる。
手も足も身体も袋が纏わりついて動かすことができない。
ゼンタイと袋越しではあるが、崇を見ると圧縮した私の写真を撮っているようだった。
1分も経たないうちに苦しくなり、出して欲しいと懇願するが、
今度はビデオカメラで動画の撮影を始めた。
袋を破って脱出しようと爪を立ててみるが、
ゼンタイを着ているので滑って破ることはできない。
最後の力を振り絞り叫びながら全身を動かすがどうにもならない。
次第に力も抜けて、気が遠くなっていく。
気を失っていたようで、気が付いたときは圧縮袋から半分出された状態だった。
ゼンタイからも顔だけは出してくれていた。
気が付いた私を崇は優しく抱きしめてくれた。
119続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
数日後、桜井さんから完成した衣裳を手渡された。
中身を取り出して見てみる。
衣裳は真っ赤なエナメルでできたヒラヒラのミニスカートのついたワンピースだった。
普通にこれを着ろと言われたら恥ずかしくて絶対に着られないと思った。
渡された衣裳を持って帰り崇に渡す。
崇から「お風呂にはもう入ったか?トイレには行かなくていいか?」などの質問があった。
家でも着ぐるみに長く着ていてということなのかと思い特に気には留めていなかったが、
このあとたいへんなことが私の身の起きることになる。
しばらくすると急に眠気が襲ってきて、そのまま眠ってしまった。
気が付いたとき、小さな穴から光が差し込んでいる。
うっかり寝てしまいもう朝なのかと時計を探そうと手を動かすが動かない。
動かないのは頭も足も動かすことはできなかった。
耳を澄ますと人の声が聞こえる。
その声は知っている声、美優に直樹、それに店長だとわかった。
なぜか家で寝ていたはずの自分が店にいる、どうなっているのか状況が全く飲み込めない。
しかも身体が暑い、このことから今自分は着ぐるみを着ていることはどうにか理解できた。
しかし、身体が動かせないのはどういうことかわからない。
冷静になって考えようと自分を落ち着かせるようとすると、
今まで気付かなかった甘い香りがする。
この甘い香りで自分が崇に眠らされているうちに、
着ぐるみを着せられて店に運ばれたことを理解した。
そのときなにやら紙を破るような音、続いて身体を揺するような感覚がする、
そして眩しい光が射し込み新鮮な空気が入ってきた。
120続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
目の前には驚いたような3人の覗き込む顔があった。
直樹に腕を掴まれて前へ引き上げられると、ようやく身体を自由に動かせるようになった。
やっと身体が自由になり自分の今の状態を確認してみる。
鏡を見るとそこには笑顔のアニメキャラの顔があり、
以前崇が試作品として持って帰ってきたものそのままだった。
衣裳は先日桜井さんに渡されてもって帰ったものだが、
いつ私に着ぐるみと衣裳を着せたのかわからない。
それに自分が梱包されていたのだろう、周りには梱包のゴミが散らばっていた。
訳がわからない私に直樹がこれまでの状況を説明してくれた。
出勤してきたら店の前に大きな包装された箱が置いてあり、宛名は店長になっていた。
それで店の中へ運び込んで、店長が来てから包装を開封すると、
中に箱があり開けてみると、透明のプラスチックの型に入った銀紙に
包まれたチョコレートを連想させるようなものが出てきた。
その銀紙を破っていくと甘い香りとともにアニメキャラのチョコレートが出てきた。
銀紙を破っている途中で、アニメキャラのチョコレートが動き出したのには驚いたが、
中に理沙が入っていると分かり必死にもがいているので引っ張りあげたということだった。
122続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
よくよく思い返してみると急に眠くなったことを思い出した。
そして、普段崇がしないような質問をした理由がわかったような気がした。
崇は私を眠らせたあと、全裸にして、チョコレートのようなアニメキャラの着ぐるみを
着せて、さらに桜井さんの作ってくれた派手な衣裳を着せたようだ。
しかもそれだけではない、ご丁寧に着ぐるみを着た私を銀紙に包み、
箱にまで入れて運ぶというこだわりように、怒りを通り越して呆れてしまった。
もっとも店長はそのこだわりを気にいったようだった。
美優からはかわいいと高評価だった。
そして苦しいなかったのと質問されて我に返り、無性にトイレに行きたくなった。
着ぐるみが一人で脱げないことも考え、早めにトイレに向かう。
トイレに入り派手な衣裳のミニスカートをめくると赤い私のショーツが履かされていた。それを下ろすと前に着ぐるみを着たときにはなかった穴が開いている。
指を入れてみると、自分の恥部を誰かに触られているような感じがする。
間違いなく赤鬼の着ぐるみと同じ作りだとわかった。
トイレを済ませて、ショーツをあげようとして気付いた、
着ぐるみの上から履かされていたので、伸びてしまってもう使えないことに。
トイレから戻ってくると店長が「早速で悪いんだけど、店の前でチョコのPRお願いね」と。
123続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
店の外に行くと直樹と美優の2人で机を置いたり商品を並べたりして準備をしている。
私が行くとあとお願いしますといって店の中へ入っていってしまった。
店の中を見てもお客さんもいない。
そんなに急いで戻らなくてもいいのにと思いながら通りを通る人にPRをするが、
通りもまばらだった。
しばらくすると店の中から台車に乗せられてくる銀色の四角い物体が。
板チョコのような模様が銀紙の上からでもわかった。
中に誰が入っているのだろうチョコレートに厚みがある。
台車で運んできた直樹が、板チョコをポンポンと叩くと、
板チョコは台車から降りようとぎこちなくヒョコヒョコと動き出したが、
次の瞬間前から倒れてしまった。銀紙が擦れる音をさせながら板チョコは立ち上がろうと4つの角を動かしている。
直樹がすぐに起こして無事に立ち上がることができた。
立たせてもバランスが取りにくいようで前後にふら付いている。
私も倒れないように支えると着ぐるみの中から
「理沙ちゃん、ありがとう。がんばるからよろしくね。」と。
その声は桜井さんだった。
直樹が店に入っていき、美優に指を指してなにやら言い合っているのが見えた。
2人が揉めていたのは桜井さんには板チョコの着ぐるみは厳しいからお互いがお互いに入れてと言い合っていたようだった。
124続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
桜井さんは少しして慣れたのか、板チョコの右上の角を振ったり、
お辞儀をしたりしてお客さんに注目してもらえるようにがんばっていた。
そのうち暑くなってきたようで私に寄り添うようにして、
暑いから銀紙外してほしいといってきた。
銀紙を外しても変わらないように思ったが、私は適当に上側を外した。
すると本当に食べかけの板チョコに見えるようになった。
その日は無事に終わったが帰りが問題だった。
着替えは置いてあったが、下着までは準備していなかった。
それでも着ぐるみのままで帰るよりはいいだろうと思い、
着替えて帰ろうと部屋を出ると店長が少し残念そうな顔をしていた。
店長は今回も着ぐるみで帰ってもらい、宣伝効果を期待していたようだ。
そんな店長に挨拶をして駅へ向かう。
駅へついて気付いたことが、財布も定期券もない。
歩いて帰るには家までは遠すぎる。
店に戻り店長にお金を借りようと戻りかけたとき、
ちょうど車で通りかかった崇に声を掛けられた。
崇は今朝、車で梱包した私を運んで、そのまま出かけたようだった。
私は車で帰れると思いホッとした反面、酷い扱いをされたことを思い出し、
フツフツと怒りが込み上げてきた。
車に乗るとすぐに崇に食ってかかったが、
当の崇はわかったわかったといった感じで取り合ってくれなかった。
それより今から行きたいところがあるからと話題を変えられてしまった。
125続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
崇が行きたかったところは撮影スタジオだった。
夜間の撮影があるので、勉強のため紹介されたのだという。
今は特撮もので『巨大昆虫観察3』というシリーズものの第三弾。
昆虫をモチーフにしたマニアックな着ぐるみがあったりするらしい。
崇についてスタジオに入ると、崇は知り合いの佐々木さんに挨拶を
してセットを案内してもらった。
セットは公園のようになっており遊具なども忠実に造られている。
それよりも気になるのはその公園にある7つのグレーの玉。
その玉は私の腰ほどの高さがあるが、大人が入れる大きさではない。
よーいスタートの掛け声とともに撮影が始まると、7つの玉が開いて中から脚がでてきた。
それはまるでダンゴムシのようであった。
そのダンゴムシたちは次々に遊具にぶつかったり乗りかかったりして遊具を破壊していく。
そして遊具を食するような仕草をしばらくして、カットがかかった。
するとスタッフとカメラマンが2人1組でダンゴムシに駆け寄り、
スタッフがダンゴムシの内側に手を突っ込んでファスナーを開くと中から人のような
黒い物体が飛び出てきた。
黒い物体は頭の後ろの方をいじっている。
そしてその黒い物体の皮が剥けて中から女の子が出てきた。
その一連の流れをカメラで撮影している。
出てきた女の子もカメラに向かって何か話している。
それが終わると次へ、そして中からはまた女の子が。
私はロボットか何かが入っていると思っていたので女の子が出てきたときはかなり驚いた。
126続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
最後にダンゴムシから出てきた女の子はかなり苦しかったのか肩で息をして、
ゼンタイから顔をだすこともできないでいた。
なんとか自分でゼンタイを脱いで出てきた女の子もかなりかわいかった。
それもそのはずグラビア志望で小柄な女の子限定で集められたことをあとで聞かされた。
撮影現場を少し見せて頂いたあと、
着ぐるみやセットの造形物が保管されているところへ案内してもらった。
崇は目を輝かせていろいろと見ている。
私には構ってくれそうもないので、入口辺りに立って崇の様子を見ていた。
すると「君は造形物には興味がないの」と佐々木さんが話しかけてきた。
「私はあまりありません」と答え、少し置いて「彼の造った着ぐるみを
着たりはしますが」と付け加えた。
すると佐々木さんから番組に出てみないかと誘われた。
「いいえ、私なんて」と返事をしたが、かわいいから誘われたのではなく
単に着ぐるみに入ってくれる女の子を探していただけなのだったと思った。
その日、崇は満足した様子でスタジオを後にした。
なにか創作のヒントを見つけたようにも見えた。
127続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
昨日は桜井さんが板チョコでがんばっていたが、帰りに声を掛けたとき
か細い声で返事をしていたので恵方巻きのときのように倒れないか心配だった。
出勤して着替えようと部屋に入ると、すでに板チョコはスタンバイしていた。
しかも動きが軽やか、シフト表を見てわかった。中身は高見さんだと。
シフト表が手書きで修正されていたので、桜井さんにとってはかなりきつかったのだろう。
急遽高見さんに代わってもらったようだ。
「あんまりはしゃぎすぎるとバテるよ」と高見さんに声をかけて、私も着替える。
着替え終わると2人で店の前へ向かう。
桜井さんより若く体力もあるからなのか、隣でずっとハイテンションの高見さんを
途中から尊敬の眼差しで見ている自分がいた。
高見さんはその日最後まで元気にがんばってくれた。
その甲斐あってチョコレートの売上も伸びた。
1人で立っているより2人で立っている方ががんばれた。
相方が元気だとこちらも元気になる、そして相乗効果でお客さんも集まってきた。
昨日よりも疲れているはずなのに、今日の方が楽に感じた。
店長からは明日からも高見さんとペアでがんばってと言われた。
桜井さんには悪いが、高見さんとなら明日もがんばれそうな気がした。
その日帰ると崇から、奈美の連絡先を聞かれたが、私から電話をかけて崇に代わった。
崇はどんなものを造ればいいのかを聞いてメモを取っている。
そして、具体的な話をするため明日会うことになったことを告げられた。
ただ、奈美に崇は会ったことがないので、仕事の後私にも一緒に来て欲しいと。
128続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
1日着ぐるみに入り高見さんとがんばったあと、
店でシャワーを浴びてから待ち合わせの場所へと向かう。
待ち合わせの場所にはすでに奈美が来ていたが、崇の姿はない。
奈美と普通に会うのは久しぶりだったので、話が盛り上がった。
そんなとき崇が少し遅れてやって来た。
3人でカフェに入り本題に。
奈美の希望は子供たちに好かれそうなかわいいキャラで、
あまり大きくないものということだった。
すると崇は簡単なデッサンを2つ描いた。
こんな崇を見るのは初めてだったので、少し見直した。
デッサンの1つは手足の短い頭の大きなものと、
もう1つはイモムシのように寝そべる感じのもの。
奈美は2つを見ていて、手足の短い頭の大きい方を選んだ。
イモムシの方は園児たちに集団で乗られると潰されてしまいそうだから却下とのこと。
崇は頷いて次は保育園の名前を聞いた。
保育園にちなんだキャラにしようと考えているようだ。
保育園の名前は白兎保育園、なんの動物にするかはすぐにわかった。
着ぐるみができたらまた連絡するということで、その日は奈美と別れた。
バレンタインデーの前日、崇は奈美から依頼品ができたので明日渡してくるよと。
私はどんなものができたのか見てみたかったが、
1番忙しい日に休む訳にはいかないのでしぶしぶあきらめた。
129続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
季節は進み5月のイベントに崇は鯉の着ぐるみを造って持って帰ってきた。
その日は着せられることなく翌日一緒に店に行き店長に披露引渡しするとのことだった。
崇と一緒に出勤して早速着替える。
崇に言われるまま着ていくが、足の部分は尾ひれになっている。
これでは歩くこともできないので、誰かの助けが絶対に必要になる。
それにこの鯉の着ぐるみは普通の鯉を大きくしただけでなんの面白みもない。
部屋にいる崇と店長を見ると単に私をおもちゃにして楽しんでいるようにしか見えない
そんな笑顔を浮かべていた。
着ぐるみの着替えが終わると崇に抱かれて店内の私専用の展示スペースに運ばれていく。
台に乗せられた着ぐるみの私はまさにまな板の鯉だなぁと思った。
子供連れのお客さんが来たら胸びれで子供の頭を撫でるように店長に言われた。
ゴールデンウィーク初日だったこともあり、直樹と美優もゆるキャラの着ぐるみを
着て気合が入っていた。
しかし、オープン前に突然人が入ってきた。
入ってきたのは客ではなく4人組の強盗だった。
強盗は着ぐるみを着ていない桜井さんと高見さん、店長に刃物を向けて脅し
外からは見えない奥の部屋へと連れて行かれてしまった。
直樹と美優は驚いて、それぞれ仰向けとうつ伏せ状態に転び、
何か叫んでいるが私のところからはよく聞こえなかった。
130続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
しばらくして奥の部屋から恵方巻きの着ぐるみが、続いて新作の鰹の着ぐるみが出てきた。
2つの着ぐるみとも足だけしか出ておらず、視界もないのでフラフラと歩き出したが、
すぐに棚にぶつかり倒れてしまった。
鰹の着ぐるみは女性のスラッとした脚が鰹の尾の辺りから生えていて色っぽく見える。
今はそんなことを思っている場合ではない。
恐怖を振り払い自分が警察に通報しなければと思い、着ぐるみを脱ぐことができないか
がんばってはみるがやはり脱ぐことはできなかった。
そんなとき運悪く、部屋から出てきた強盗の1人に見つかってしまい
奥の部屋へと引きづられていく。
抵抗してみるが、鯉の着ぐるみではバタバタするのが精一杯だった。
鰹も恵方巻きも足だけではうまく立つことができず、床を這いずりまわっている。
奥の部屋へ入ると強盗が金庫から売上金を別の袋に詰めている。
また、別の強盗は恐竜の着ぐるみを着せた店長に首輪をつけて動きを制限し、
他に金を隠していないか大声で聞いている。
私は必死に抵抗した。
それが気に入らなかったのだろう、強盗の1人に近くにあったゴミ袋に入れられた上、
掃除機で空気を抜かれ始めた。
みるみるうちに空気はなくなり動くことができなくなった。
すぐに呼吸もできなくなり気が遠くなっていく。
131続・とある物産店 (理沙すとーりー) ◆1pLg/IIvYk
目が覚めるとイベント会社で自分がダメにしてしまったピッ○ロの着ぐるみを着て
ソファで横になっていた。かなり汗をかいている。
今までの物産店での出来事はなんだったんだろうと思いながらシャワーへ向かう。
シャワーの間に崇が帰ってきていた。
そして崇は俺の初めての作品といってダンボールを差し出してきた。
その中身はピッ○ロの着ぐるみ、それも女性版で私に合わせて造ったのだという。
崇が催促するので裸になり着替える。
デジャヴ?と思いながらも着替えて崇を喜ばせた。

翌日、物産店に行ってみるとアルバイト募集の貼り紙があった。
そして、店内に入っていくと店長があなたアルバイト希望の方?と声を掛けられた。
私は首を振り、店を飛び出した。
自分はみんなのことを覚えているのに、誰も自分のことを覚えていない。
なんとも奇妙な感じのまま、崇との生活を送っていたある日。
あの物産店で強盗事件が起きて、1人の女の子が着ぐるみのまま殺されたことを知った。
その死因は窒息死だった。
私が経験したことはなんだったのか今でも分からないが、
自分の代わりにあの子が殺されてしまったのかと思うと怖くなる。

*****おしまい*****

長らく読んで頂きありがとうございました。

>121  読んでるよ に救われて最後までがんばれました。ありがとうございます。

話からの波及したものも書こうと思いましたが、長くなるので控えさせて頂きます。