シャチ女

状態
完結
文字数
1,263
投稿数
2
他の形式
Plain Text
RDF
951シャチ女 ◆wQSXY643Ks
私は仕事の関係で水泳のインストラクターもしている杏菜といいます。
ある日、仕事の片付けも終わり、帰ろうとするとプールサイドに大きなシャチのフロートが逆さまの状態で置かれていました。
一緒に片付けをしていた恵の姿も見当たらず、仕方なく片付けようとシャチを持とうとしたが重い。
中身が空気でないのはすぐにわかりました。
それだけでなく、シャチはヒレと尾っぽをバタバタさせて動き出しました。
私はびっくりしてシャチから離れて様子を伺いました。
ビニール製の膨らんだシャチの中には何かがいます。
少しするとシャチは大人しくなりました。
私は静かに近づき、シャチを観察しましたがどこにもファスナーなどなくどうやって入ったのかわかりませんでした。
一緒に片付けをしていた恵に助けを求めるため、館内を探しましたが見当たりません。
シャチのところに戻り、「恵?」と声をかけるとシャチは「んーんー」と声を上げながら、身体を起こすような仕草をします。
「出してあげるから大人しくして」というと、シャチは大人しくなりました。
大人しくなったシャチの腹の部分を見ると切れ目が入っていることに気づきました。
その切れ目に手を突っ込むと、ありました。
シャチが膨らんで隠れていたチャックが。
シャチの空気を抜き、ファスナーを開けると黒いビニールテープを巻かれた物体が出てきました。
その物体は人であることはわかるが、足を曲げられた状態で一つにまとめられ尾っぽへ、腕も折り曲げられヒレにいれられていました。
シャチの圧迫から解き放たれた黒いビニールテープの物体のテープを解いて行きます。
ビニールテープの下にはラップが巻かれており、伸びるビニールテープを剥がすたびにラップも千切れていきました。
ビニールテープをすべて外したときには、引っ張られ伸び千切れたラップが毛のように所々出ているラップの物体が目の前に現れました。
口の所には特に厳重にテープもラップも巻かれていたので、しゃべることができなかったことがわかりました。
953シャチ女 ◆wQSXY643Ks
ラップをすべて外して現れたのは、恵ではなく黒いゼンタイの女。
黒いゼンタイ女は「苦しかった、ありがとう、杏菜。」
声は篭っていたが、その声は恵でした。
ゼンタイの後ろに回り、頭から腰へと伸びるファスナーを下ろす。
中からは当然、恵が出てくると思っていたのですが、出てきたのは真っ白なゴムのスイミングキャップの素材に包まれた女性。
ファスナーなどは全く見当たらない。
その白いゴム人間はのっぺらぼうなのだが、私の顔に顔を近づけ「杏菜、ありがとう。」と。
それを聞いた私は気が遠くなっていきました。
しばらくして、暑さと圧迫感で目が覚めました。
この圧迫感はシャチの中、と焦りましたが手も足も自由に動きます。
そして目の前には恵が覗き込んで、「杏菜、大丈夫?」と。
そうです、今まで夢を見ていたのです。
私は今、仕事でオープン記念をしているスポーツジムのイベントの着ぐるみに入っていたのでした。
途中、疲れて寝てしまい変な夢を見てしまっていたのです。


☆☆☆おしまい☆☆☆

短くてつまらない話で、すみません。